米国でフレイトライナーの新型「カスケイディア(第5世代)」大型トラックの受注が開始されて1週間も経っていないが、自動運転システムを開発しているトルク・ロボティクスには早くも納車が始まっている。
どちらもダイムラーの子会社で、2027年を予定しているレベル4自動運転トラックの商用リリースに向けて製品化する段階に入った。自動運転の準備が完了した新型カスケイディアは、全米で最も混雑するというラレド・ダラス間の貨物路線で自動運転モードの試験を行なうことにしている。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Daimler Truck AG・Daimler Truck North America, LLC
フレイトライナーの新型トラックが早くも自動運転車に
ダイムラー・トラック・ノース・アメリカ(DTNA)は2025年4月16日、最新世代の長距離輸送用フラッグシップ大型トラックのをトルク・ロボティクスへ納車開始したと発表した。
フレイトライナーの第5世代型「カスケイディア」トラックは、2024年に発表され2025年4月10日に受注を開始したばかりだが、同16日にはトルクへの納車を開始するという異例の速さだ。通常、トラックの受注から納車までは早くても数カ月はかかる。
もちろんこれはトルクとフレイトライナーがどちらもダイムラーの子会社だから実現したことで、新技術の開発にメーカーの系列という強みを存分に発揮している。
カスケイディアの「レベル4自動運転」対応バージョンは、ブレーキやステアリングなど冗長化した安全機能を備えた上で量産化を目指しており、2027年にも北米市場に投入される予定だ。
ダイムラー・トラックの自動運転技術グループで責任者を務めるジョアンナ・バトラー氏は次のように話している。
「量産のためのハードウェアを備え、自動運転の実現に向けて準備が完了した弊社の最新車両をトルクに提供することは、自動運転トラックの量産化が軌道に乗り、規模を拡大するための重要なマイルストーンになります」。
DTNAはスケーラブルでパワートレーンに依存せず、冗長化された自動運転プラットフォームを業界で初めて開発したといい、SAEレベル4の完全自動運転を実現するため、同社はフレイトライナー「カスケイディア」のプラットフォームに、意図的に冗長性を備えたシステムを設計・構築した。
自動運転トラックは直接人命にかかわるセーフティ・クリティカルなシステムなので、安全な無人運転を実現するためには不可欠なことだ。
そのためのエンジニアリング要件は1500件を超えるそうだが、全て機能に落とし込んだ。新たな電子制御システムなどを搭載した新型カスケイディア自動運転対応バージョンは、こうしたシステムを車両への統合する上で新水準を確立したという。
米国で最も売れたトラックが、最も混雑する路線で自動運転
カスケイディアは北米市場で最も売れている大型トラックで、新世代では安全性・効率性・収益性のベンチマークをさらに更新するという。
2007年の初代モデルと比較して新型で燃費は35%向上した。自動運転に必要なコンピューティング/センサーキットは車両の製造工程で全て取り付けられる。こうした準備作業のおかげで、トルクは納車後すぐに仮想ドライバー(自動運転システム)をシームレスに統合することができる。
これらのトラックは、従来の路線に加えて新たにラレド・ダラス間の路線でも自動運転モードを試験する。主にテキサス州のI-35(州間高速道路35号線)を通るルートだ。このルートは、サンアントニオやオースティンといった大都市を結ぶため貨物輸送量が非常に多く、全米で最も混雑する貨物路線の一つだという。
トルクは先日、ダラス・フォートワース地域で「自動運転ハブ」のリース契約で合意したと発表しており、このハブが試験やパイロット運行、そして商用化に向けた拠点となる。混雑した貨物路線で安全かつ堅牢な自動運転ソリューションをスケールアップすることで、商用化に向けて万全の準備を整えて行くことにしている。
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