ドイツのMANは最新の駆動システム(電気、水素、ディーゼル)を比較する試乗会を開催した。9月に開催されるIAAのプレビューイベントで、大型トラックの「TGX」や同BEVの「eTGX」、さらに同水素エンジンの「hTGX」(プロトタイプ)が用意された。
MANは商用車の脱炭素において電気駆動をメインとしつつ、水素技術でそれを補完するというアプローチを採用している。過渡期においてはディーゼル車の効率向上も重視しており、新設定する駆動系では3.7%の燃費向上を謳っている。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/MAN Truck & Bus
ディーゼル・水素エンジン・電気駆動を比較する試乗会
2024年7月1日、ドイツの大手商用車メーカーでフォルクスワーゲンの商用車部門・トレイトングループに属するMANトラック&バスは、同年9月に開催予定のIAAトランスポーテーション2024(世界最大規模の商用車・運送業界の展示会)に先駆けて、出展車両の一部を先行公開した。
オーストリアのヨーロッパアルプスの真っ只中で開催された試乗会には、道路輸送の脱炭素に向けてディーゼルエンジン、電気駆動、そして水素エンジンの大型トラックが用意され、約200名のジャーナリストが駆動系を直接比較するという、史上初めての機会となった。
MANの電動トラックは最近のアップデートで、バッテリーコンセプト、ホイールベース、キャブ、PTO(ボディ駆動用の動力取り出し装置)、搭載機器などの組み合わせによる車型展開が100万を超えた。
同じ「自動車」というカテゴリーでありながら、トラックは乗用車とは対極的な「多品種少量生産」を代表する商品で、業種、架装(ボディ)ソリューション、輸送用途など、一台ごとに仕様が異なる。
とはいえ、100万という車型展開はたいていのニーズを満たし、バッテリーEV(BEV)トラックでも多くの輸送が可能になる。
またMANはBEVトラックでメガワット(MW = 1000kW)級の急速充電を可能とするMCSへの対応を準備しており、これが利用可能になればトラックドライバーに義務付けられている法定休憩(日本の「430休憩」同様の制度が欧州にもある)中の充電により、1日当たりの航続距離はさらに伸びる。
MCSの利用により1日当たり800kmの運行が可能となるため、典型的な長距離輸送なら、充分に電動化が可能だという。
長距離輸送は大型トラックで最も台数が多い分野であるため、顧客の関心も高く、MANは既に2000台の受注を獲得している(長距離輸送用トラクタが中心の「eTGX」と、それより小さいキャブを採用し集配送用の単車が多い「eTGS」の合計)。中にはフランスからの100台の大型受注も含まれているそうだ。
MANの脱炭素技術のメインは電気駆動
欧州で新車登録されるMANのトラックは、2030年までにすべて電動化される予定だ。
最近、充電インフラの合弁企業であるマイレンスは(ダイムラー、ボルボ、トレイトンの3社合弁で、MANもトレイトングループの一員として参加している)、大規模なトラック用充電施設をベルギーのアントワープ港に設置した。
同社は数年以内に合計で1700の充電器を整備する計画で、BEVトラックの増加が続けば2030年までに追加で5万基が必要となる。MANはサービスネットワークの電動化にも取り組んでいる。
MANの脱炭素戦略について、同社CEOのアレクサンダー・フラスカンプ氏は次のように話している。
「貨物輸送の脱炭素化を実現するには、様々な駆動技術が考えられますが、弊社がメインにしているのは電気駆動です。一部の用途においては水素燃焼エンジンを活用します。燃料電池も同様ですが、こちらはまだ開発段階にあります。
ディーゼルエンジンは、それが完全に置き換えられるまでは重要な役割を担っており、私たちがD30型エンジンの効率と経済性の向上、排出低減を図っているのはそのためです。同機はトレイトングループの共通エンジンプラットフォームに基づくもので、グループ各社の開発部門の協力によって誕生しました。
将来的に、内燃機関と電気駆動を同じラインで製造する予定で、BEVトラックの需要の変化に柔軟に対応します。
いっぽうで駆動系の革新を進めるには充電インフラの拡大が必要で、政治家、およびインフラの管理者と製造メーカーには最優先で取り組んでいただきたいと思っています」。
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