2017年にテスラが「2年以内に長距離輸送用の大型バッテリーEV(BEV)トラックを発売する」と発表した時、懐疑的な見方が大半だった。実際「テスラ・セミ」は限定的な納車は行なったものの、2024年6月現在でも大量生産には至っていない。
いっぽう、商用車で世界最大手の一角であるダイムラー・トラックは、間もなく「メルセデス・ベンツ」ブランドの長距離輸送用のBEV大型トラックを量産化する。「eアクトロス600」のプロトタイプ2台が、ヨーロッパ本土の最北端と最南端を含む欧州ツアーに出発した。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Daimler Truck AG
欧州最北端から最南端まで「eアクトロス600」の試験走行
ダイムラー・トラック傘下のメルセデス・ベンツ・トラックスは2024年6月11日、同社の歴史上で最大規模となる試験走行を開始した。「eアクトロス600欧州試験ツアー2024」と称するこの試験は、量産開始を目前に控えた「eアクトロス600」のプロトタイプで、欧州20か国・1万3000km以上を総重量40トンのフル積載で走行するもの。
長距離輸送用BEV大型トラックのeアクトロス600は、同社における新しいフラッグシップ・トラックとなる。
ツアーの途中で、欧州大陸(ヨーロッパ本土)の最北端と最南端にも立ち寄る。北はノルウェーのノールカップと、南はスペインのタリファだ。ツアーの最初の数kmはメルセデス・ベンツ・トラックスのCEO、カリン・ラドストロム氏がハンドルを握った。
なお、工場のあるヴェルト・アム・ラインや、本社のあるラインフェルデン・エヒターディンゲンからeアクトロス600は自走しており、非公式ながらその旅は既に始まっている。
ラドストロム氏のコメントは次の通りだ。
「eアクトロス600のジャーニーを開始した弊社のエンジニアに感謝したいと思います。変革のための車両技術は既に整っており、今や欧州ではバッテリーEVによる長距離輸送が可能です。政治とエネルギーセクターはトラックメーカーと協力して公共の充電インフラの整備に取り組む必要があります」。
様々なルートで経験を積む
eアクトロス600欧州試験ツアー2024は、様々なルートにおける経験を積むことを目的としている。特に、異なる地形と気候帯がエネルギー消費に与える影響について注視する予定で、こうして得られた知見は興味を持っている顧客とも共有する。
社内で新開発した電動アクスルは効率が高く、600kWhを超えるバッテリー容量(207kWhのバッテリーパック3つで総容量621kWh)と共に、eアクトロス600の1充電当たりの航続距離は、フル積載の4×2トラクタで500kmを達成した。
今回のツアーにおいてバッテリーの充電は公共の充電ステーションのみを使用し、欧州では長距離輸送の電動化が既に可能になったことを証明することも目的の一つだ。
その旅路は、ドイツを出発し、デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド、エストニア、ラトビア、リトアニア、ポーランド、チェコ、オーストリア、スロバキア、ハンガリー、クロアチア、スロベニア、イタリア、モナコ、フランス、スペイン、ポルトガル、ベルギー、オランダ、ルクセンブルクを周遊する。
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