バイクとトラックが変形して合体する。そんな、子供たちの憧れを実現したかのような、今までなかった新しい乗り物がインドに誕生した。内燃エンジンでは不可能だった、全く異なる車両の「合体」もEVなら可能に!?
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Surge Automobiles
世界初(?)のトランスフォームするクルマ
日本ではかつて、三輪トラック(オート三輪)が活躍している時代があった。インドでは今も「オートリキシャ」と呼ばれる三輪自動車が活躍している。脱炭素が求めらる現代では、オートリキシャの電動化も進んでいる。
そんな中、バイク(二輪車)とトラックボディが変形して合体し三輪車になるという、衝撃的な新しい乗り物「変形合体EVオートリキシャ」がインドで誕生した。
車両を製造するのはサージ・オートモービルズという会社で、インドの大手二輪車メーカー、ヒーロー・モーターズが出資するEVベンチャー企業だ。
サージ「S32」は世界初のトランスフォーム自動車だといい、この革新的な車両は、ユーザーの必要に応じて「トランスフォーム」(変形)する。2ウィーラー(2W=二輪)モードと3ウィーラー(3W=三輪)モードの切り替えは、約3分で可能とのこと。
バイクと三輪トラックは車両セグメントが完全に異なるわけだが、「変形合体」しても異なる要求に応え車両として成立することを可能にしているのが、新規開発した「AMSEP」と呼ばれるプラットフォームだ(”AMSEP”は「アドバンスト・モジュラー・スマート・エレクトリック・プラットフォーム」の略だとか)。
二輪側と荷台側の双方に電動のモーターを搭載し、それぞれにバッテリーを備えている。二輪側のモーターは6kW出力、荷台側は最大13kWのようだ。異なる車両形態をコントロールするため、スマート制御ユニット(CU)を複数搭載するが、ユーザーと車両の安全性のため、いっぽうのパワートレーンが有効なときは、他方は無効化される。
なぜ変形する必要が?
3Wモードではバイクは三輪トラックの前輪となり、ボタンをクリックするとロックが解除され、フロントパネルがオープンし、バイクを取り出せるという仕組みだ。変形・合体・分離時に特別なツールは必要ないが、操作は自動ではなく、手動で行なう。
どのような地形でもトランスフォームできるように細心の注意を払って設計したといい、スイッチ/スロットルは、どちらのモードでも運転操作ができるようにアダプティブな制御を実現している。
当然ながら、3Wモード中に分離しないようにシャシーは堅牢な設計となっているほか、運転中にロックが解除されないように電動メカニカル式のロッキングを採用している。
このロッキングを通じて2Wフォームは対となる3Wフォームとペアリングされているため、別の車体とペアになることはできないそうで、複雑な合体機構の安全性を考えると仕方ない所かもしれない。
荷台側のフレームは普通トラックと同様にラダーフレーム(はしご型フレーム)を採用しており、積載量の確保とともに架装性にも配慮している。
2Wモードは純電動のEVスクーター、3WモードはEVオートリキシャとなり、それぞれに応じた運転免許が必要だそうだ。両方にバッテリーとコネクター、チャージャーを備えるため、別々に充電することができる。
そもそも「なぜ二輪と三輪を切り替える必要があるのか?」という疑問に対して、サージはFAQで次のように答えている。
「効率とクリーンエネルギーを追求するためです。サージ『S32』のコンセプトは資産を有効活用することでビジネスをトランスフォームし、お客様の社会生活を豊かにすることです。
世界初のクラスチェンジする車両は、ユーザーの必要に応じて2ウィーラー/3ウィーラーを切り替えることができます。これにより、例えばライドシェアリングとラストマイル配送、そしてパーソナルモビリティなど、ユースケースを簡単にスイッチすることができます」。
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