トラックの死亡事故が激増! 前年比23%増の「極めて厳しい状況」も2024年問題で歯止め効かず

「転落・墜落」事故の死亡者数も増加が続く

トラックの死亡事故が激増! 前年比23%増の「極めて厳しい状況」も2024年問題で歯止め効かず
陸運業における事故の型別死亡災害の発生状況(1~12月期速報値)。「墜落・転落」による死者数増加に歯止めが効かなくなっている

 また、交通事故に続き死亡災害の中で2番目に多く発生しているのが「墜落・転落」だ。前年の令和4年にも急増しているが、令和5年はさらに増え、歯止めがかからなくなっている。

 具体的には次のような事例があり、フォークリフト等の用途外使用や、ヘルメットの着用など正しい作業手順を守らなかったことによる死亡災害が多く見受けられた。

「墜落・転落」による死亡災害
●4トン車の荷台の端部で作業中に後ずさりした際、あおりに接触し後ろ向きのまま地面に転落した。保護帽は着用していなかった
●4トンウイング車からロールボックスパレットを卸す際、荷台後方からロールボックスパレットと共に転落した。保護帽は着用していなかった
●4トントラックの後部において、フォークリフトの爪を50cm程度上げて踏み台として使用しており、荷台から転落した際にフォークの爪に腹部を強打した
●停車中のトレーラの荷台上にて荷受け作業をするため待機していたが、トレーラが前進した際にバランスを崩し転落した
●ダンプ車の荷台上でシートの交換作業を行なっていた際、荷台から車両後方へ墜落した

 なお、転落・墜落の防止に向けて「労働安全衛生規則」が改正されている。昇降設備(ハシゴなど)の設置義務や保護帽(ヘルメット)の着用義務のあるトラックの範囲拡大、トラックを離れる際の措置などの改正は既に施行されているが、2024年2月よりテールゲートリフターで作業する場合の特別教育が義務化された。

死傷災害は減少だが……

トラックの死亡事故が激増! 前年比23%増の「極めて厳しい状況」も2024年問題で歯止め効かず
陸運業における事故の型別死傷災害の推移(1~12月期速報値)。全体としてはわずかに(1.2%)減ったが高止まりしている

 死傷災害は前年より189人(1.2%)減っており、令和2年から続いていた増加がようやく止まった。

 事故の型別では、陸運業において最も多くの死傷災害が発生しているのが「墜落・転落」で、次いで「転倒」、「動作の反動・無理な動作」、「はさまれ・巻き込まれ」となっている。

 上位4つの事故原因のうち、「転倒」以外は前年比で減少したものの、依然として高い水準にある。全体として減少に転じた要因としては、改正労働安全衛生規則の施行等により件数として最も多い墜落・転落が減少したことがあげられるが、荷役作業に関連する災害は継続して多く発生している状況だ。

 令和5年の「交通事故(道路)」死傷災害は758人で前年より46人増えた。先述の通りそのうち96人が亡くなっており、トラックの交通事故が重大な結果をもたらすことが改めて浮き彫りになった。

 以上のように、令和5年の陸運業の労働災害は死傷災害は減少したものの高止まり、死亡災害は激増という厳しい状況となった。

 荷役作業時の事故は荷主側の協力が無いと対策が難しく、労働安全衛生規則の改正等は有効に機能している。いっぽうで懸念されるのが死亡者数急増の要因となっている交通事故の増加だ。

 働き方改革による、いわゆる「物流の2024年問題」でトラックドライバーの労働時間短縮が求められ、物流現場では時間の余裕がなくなっている。さらに大型車の最高速度引き上げが決定され、トラックの安全装備がますます充実する中でも、今後事故が減るだろうと楽観視することはできない。

 働き方改革の本来の趣旨は、トラックドライバーの職場環境を改善し、物流の担い手を確保することだったと思うのだが、現状では本末転倒な結果をもたらしていると言わざるを得ない。死亡災害が急増するなか、より一層の安全運転に努めること以外に、トラックドライバーにできることはあまり多く残されていない。

【画像ギャラリー】令和5年の陸運業の「死亡災害」「死傷災害」発生状況(8枚)画像ギャラリー

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