短距離BEVトラックの実力は?
これらのトラックは、車両スペックの数字の上でも印象的だ。
連結総重量(GTWまたはGCW)は64トン、航続距離は390km、充電は375kWに対応し、出力は450kW(約610hp)となる(数字はいずれも最大値)。馬力という観点では従来の道路用ディーゼルトラックの大半よりかなり高くなっている。
リジッド(単車)とトラクタ(連結車)の両方で提供され、キャブは大型車用のRとSシリーズが利用可能。
航続距離は、当然ながら積載重量や用途、運転のスタイルなどによっても変わるが、都市部での地場輸送の例として、車両総重量(GVW)27トンのダンプシャシー+6バッテリーだと最大350kmとのこと。
1時間の充電により航続距離は270km回復する。これは350kWでの急速充電を行なった場合であり、130kWの充電器で1時間の充電だと、1km当たりの電費が1.3kWhとすると、航続距離は100km回復するという計算になる。
「純粋な長距離輸送を除くと、トラックの運行に必要な要件を満たしたBEVトラックを見つけられないお客様は、ほとんどいません。もちろん、近い将来に電動化されるとは言い切れない用途はまだありますが、これらのトラックと私たちのデジタルサービスがもたらす効率性を見ていただければ、多くの方は驚くに違いありません。
BEVトラックを運行する際に、ディーゼル車のように、『燃料が1割を切ったら満タンにする』という考え方では行き詰ってしまいます。BEVでは必要な航続距離を把握することが重要です。
所属する運送会社の車庫まで残り120kmで充電が必要になった時に、車庫に戻れば安価で効率的な充電ができるのに、それ以上を充電する必要はありません。必要なのは120kmを走れる電力と、ほんの僅かなマージンです」。(同氏)
新しい駆動系と違いを生むバッテリー
シャシー、バッテリー、補器類の最適化は機能性の向上に加えて複雑性を排除する目的もある。併せてスカニアは新型の電動機となる「EM C1-4」ファミリーを導入する(電動モーター、トランスミッション、PTOなどを一体とした駆動系の機構をスカニアは「電動機=electric machine」と呼称している)。
2024年の第4四半期に製造を開始する予定の同機は、その柔軟性と5つ(以上?)の出力レベルにより、このクラスで最大のボリュームゾーンを担うことになるだろう。
いっぽうのバッテリーだが、スウェーデンのリチウムイオン電池メーカー、ノースボルト製のセルを採用し自社工場で製造する。このバッテリーは、トラックを150万km走らせるだけの性能を持ちながら、製造時のCO2の排出量は業界標準の3分の1という「グリーン電池」だ。
スカニアのバッテリーには他にも強みがある。スカニア車は何回充電しても100%まで充電できる(電池寿命への影響はない)ほか、他車では満充電とエンプティ付近では充電速度が変わるため充電時間の予測が困難だが、充電曲線がリニアという特徴から、スカニア車では予測可能だ。
こうした性能を実現するため、バッテリーの温度を常に最適に保つ機能を搭載し、ノースボルトと協力して優れたCレート特性(充放電のスピードに係る性能)と高いバッテリー容量を両立する、大型車専用のバッテリー技術を開発した。
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