パッカーグループが米国で大型燃料電池トラックを発売!! トヨタ製パワートレーンで水素技術を商用化

燃料電池トラックで緊密に連携するトヨタとケンワース

 ケンワースはパワートレーンにトヨタの燃料電池技術を採用し、米国の重量車区分で最も重い「クラス8」のゼロエミッションFCEVトラックとなる「T680 FCEV」を間もなく製造開始する。

 最初の顧客への納車は2024年を予定しており、続く2025年中に量産化を目指している。米国とカナダのケンワースディーラーで既に予約を受け付けている。

 ベース車であるT680は、ケンワースのオン・ハイウェイ系(高速道路を使った長距離輸送用の大型トラクタ)のフラッグシップトラックだ。重さにすると(タンク等の重量は含まず)約60kgの水素を燃料とするT680 FCEVは、道路の状況にもよるがディーゼル車にも引けを取らない450マイル(約725km)の航続距離を誇る。

 ケンワースのゼネラルマネージャーで、パッカーのバイスプレジデントも務めているケビン・ベイニー氏は次のように話している。

 「T680 FCEVは市販のゼロエミッショントラックの中でも最長の航続距離を持つように設計されています。燃料の充填時間も短く、24時間体制での地場輸送や、FCEVによる長距離輸送の可能性も広がります。これにより弊社のゼロエミッショントラックがカバーする範囲は大きく拡大します」。

 ケンワースとトヨタUSAはFCEVの開発で緊密に連携してきた。両社はロサンゼルス港で行なわれた大型FCEVトラックのパイロットプログラムを2022年に成功裏に完了している。

 このプロジェクトでケンワースは10台のT680 FCEVプロトタイプ(「オーシャン」トラック)を実際の環境下でテストし、プログラムの成功を受けて両社の技術者の焦点はT680 FCEVの商用化に移っていた。

 「何年にもわたりトヨタと共同で研究開発を続けており、プロトタイプによる実用試験も行ないました。この商品を市場に投入するのは、ケンワースの(100年を超える)歴史においても記念すべき日となります。現在、お客様に提供しているゼロエミッション輸送ソリューションとしては、クラス6から8のBEVトラックがありますが、本日よりここにT680 FCEVが加わります。弊社が業界をリードしていることを誇らしく思います」。(同氏)

同グループのピータービルトも大型FCEVを展開

パッカーグループが米国で大型燃料電池トラックを発売!! トヨタ製パワートレーンで水素技術を商用化
ケンワースT680 FCEVの構造。エンジンに代わりボンネット内にはトヨタのFCモジュール2基が収められている。水素ボンベはキャブバックに6本あり、58.8kgの水素を貯蔵。ホイールベース間前方に走行用の高圧バッテリー、その後ろに見えるのは制御ユニットや冷却系を収めたボックスと思われる。画像では見えにくいが電動モーターはシャシーの中央にあり、シャフトを介して後2軸を駆動するようだ

 このトラックにはトヨタUSAの310kWデュアルモーターと、第2世代となる新型燃料電池モジュールを搭載する。出力を馬力に換算すると415hp(連続)となり、連結総重量(GCWR)は82000ポンド(約37.2トン)だ。

 プロトタイプである「オーシャン」トラックと比較すると、モーター出力は560hpから415hpへと、若干マイルドになっている。いっぽう、航続距離は300マイルから450マイルへと大幅に強化された。

 気体の水素を貯蔵する高圧タンク(水素ボンベ)はキャブバックに6本搭載し、合計容量は約60kgとプロトタイプから変わっていない。米国のトラックの最高速度は日本よりだいぶ早く、最高時速は70MPH(約113km/h)という設定だ。

 エクステリアとしては、ケンワースのリボン(エンブレム)がブルーになったほか(ディーゼル車は赤基調)、ルーフフェアリングなどの軽量化も行なったそうだ。

 また、ケンワースと同じパッカーグループに属するピータービルトも大型トラックラインナップに燃料電池車を加えることを、同日に発表した。ベース車はピータービルトの「579」となるが、パワートレーンは同じなので車両のスペックなどもケンワース車(T680 FCEV)とほぼ同じとみられる。

 関係者のコメントは次の通りだ。

「ピータービルトはパッカーグループにおける水素燃料電池の知見を活かし、ゼロエミッションソリューションを拡大します。燃料電池はバッテリー電気トラックとともに、商用車の脱炭素のカギとなる技術です。トヨタとのパートナーシップにより最も先進的なパワートレーンを間もなくお届けします」。
(ピータービルトのゼネラルマネージャー兼パッカーのバイスプレジデントのジェイソン・スクーグ氏)

 「水素燃料電池技術は長距離を走るトラックにとっては素晴らしいソリューションです。水素から電気を作りだす燃料電池によって駆動用のバッテリーを充電し車両を動かすことで、バッテリーによる重量増を回避しながら長い航続距離を実現できます。私たちはこの車両が長距離輸送で最適なパフォーマンスを発揮するように設計しました」。
(ピータービルトのチーフエンジニア、スコット・ニューハウス氏)

 「トヨタとケンワースとの協働が(パッカーグループとの提携という)次のステップに進み、ゼロエミッションパワートレーンを多くのお客様に届けられることを嬉しく思っています。トヨタの水素燃料電池技術には実績があり、商用車の脱炭素を支援することでより持続可能な運行を行なうことができます」。
(トヨタUSAの燃料電池ソリューションでゼネラルマネージャーを務めるマット・スティッチ氏)

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