ヨーロッパでは乗用車の内燃機関（エンジン）が禁止されるとみられていたが、ドイツなどの反対で「eフューエルに限る」という条件付きながら容認された。いっぽう、米国では大型トラックの内燃機関を禁止する動きが出て来た。
ゼロエミッション車（ZEV）の購入を事業者に強制する「アドバンスト・クリーン・フリート」（ACF）規制がカリフォルニア州で承認され、2036年以降、ZEV以外の中・大型トラックの販売は禁止されるとのこと。米国トラック協会などは「非現実的」として同規制を批判している。
文／トラックマガジン「フルロード」編集部
写真・表／California Air Resources Board・Toyota Motor North America・Daimler Truck・Navistear International・Kenworth・AB Volvo・NIKOLA
大型ZEVの展開を加速する新規制を承認
2023年4月28日、米国カリフォルニア州のカリフォルニア大気資源局（CARB）は、この分野で世界初となる、中・大型車の段階的ゼロエミッション化に係る規制を承認した。
「アドバンスト・クリーン・フリート」（ACF）と称するこの新規制は、州内を走るトラックを、2045年までにゼロエミッション技術に完全に移行するという、ギャビン・ニューサム知事の目標達成に向けたものだ。
従来の規制（ACT＝アドバンスト・クリーン・トラック）は、メーカーにトラックのゼロエミッション車（ZEV）への移行を「促す」ものだったが、新規制のACFはZEV移行を「強制する」もので、ディーゼルエンジンの禁止も盛り込まれおり、トラック団体などは反対するコメントを発表している。
米国の州の中でも環境政策に積極的なカリフォルニア州は、連邦政府に先駆けて新しい規制を導入することで知られている。ただ、同州の規制が他州に波及する例もあり（ACT規制など）、その影響力は大きい。
CARBはこの規制による大気の質の向上により、喘息発作の低減、緊急治療室の使用削減、呼吸器疾患の減少などを通じて266億ドル（日本円にすると約3.6兆円）に及ぶ医療費を圧縮する効果があると試算している。また、運送会社は運用コストの低減により2050年までの総額で480億ドル（同6.5兆円）を節約できるとした。
カリフォルニア州の道路ではトラックは全車両の6％を占めるに過ぎないが、NOx（有害な窒素酸化物）排出量では35％を、そして道路における温室効果ガスの排出量では約25％を占めている。トラックの通行量が多い物流道路や倉庫の近くにある同州の自治体は、全米で最悪の大気汚染に直面している。
こうした背景からカリフォルニア州は、2021年から2025年までの計画でZEVトラックとインフラに30億ドルを投資している。これは、知事と議会が2021年に合意した90億ドル規模の政策パッケージの一部で、輸送の脱炭素のためにZEV移行を目指す複数年・複数機関による公共投資だ。
CARB議長のライアン・ランドルフ氏は次のように話している。
「私たちは将来のゼロエミッションに向けて動き出すだけの技術を、既に持っています。ACF規制は合理的であり、道路環境の改善とカリフォルニアの市民が望むきれいな空気を確保するための革新的なアプローチです。
同時にこの規制は、トラック製造業者、トラックオーナー、トラック用燃料の供給業者に対して、ゼロエミッション車両の市場と需要が存在することを確約するものです。ZEVトラックによるクリーンな空気への移行のために、柔軟な道筋を描いています」。
また、カリフォルニア州環境保護庁長官のヤナ・ガルシア氏のコメントは次の通り。
「カリフォルニア州は大気汚染や大型トラックに関しては『この分野で初めて』というような規制を積極的に導入しています。住んでいる場所、通っている職場や学校など、地域によって空気の質が不公平であってはなりません。ACF規制はゼロエミッションへの移行を加速するとともに、環境汚染の激しい地域においては、『空気の不平等』とそれによってもたらされる健康問題を解消する歴史的な一歩となるでしょう」。
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