世界各国のトラックをメーカーごとに紹介する「世界のトラック」。今回は同じパッカーグループに属すケンワースとともに米国大型トラック市場で2、3位を占める「ピータービルト」をピックアップ。エアロダイナミクスを追求したキャブ開発のパイオニアというべき同社の歴史や最新ラインナップを多賀まりお氏が徹底解説する!!
文/多賀まりお
写真/ピータービルト
※2020年6月15日発売「フルロード」第37号より
新世代型とクラシックスタイルで用途別のモデルを展開
ピート(PETE)の愛称で知られるピータービルトは、1939年にT・A・ピーターマンによって創立された。現在はケンワースとともにパッカーの一員となっている。
ワシントン州タコマの林業家だったピーターマンが、蒸気トラクタや馬に代わる原木運搬手段としてトラックに着目。当初は軍用車を改造していたが、本格的に車両製作を手掛けるべく経営難に陥っていたオークランドのファジョール・モータースを買収したのが同社の始まりである。
最初の製品である334モデルは全鋼製(木材などを使わない)のキャブやツーデフによる6×4駆動、軽量な車体など先進的なスペックで好評を博したが、品質に拘るピーターマンは年間生産台数の抑制に腐心。名実ともに高品質なブランドとして定着した。
44年にピーターマンが亡くなったあと事業は社員たちの手で継続されたが、工場敷地の権利を保有する婦人がショッピングセンターの建設を希望したことで、1958年に「パシフィック・カー&ファンダリー」に売却された。現在はテキサス州デントンに工場と本拠を置き、クラス5〜8のトラックを生産している。
3桁の数字で呼ばれる同社の車両には省燃費性能を追求した新世代型とクラシックスタイルの2系列があり、それぞれがオンハイウェイ〜特装系などの用途別にモデルを展開する。ケンワースと同様にパワートレーンはパッカー製を標準とし、他社製品がラインナップを補完している。
●579
優れた空力性能と居住性を持つ最新のオンハイウェイ向けフラッグシップ。後方に寝かせたフロントピラーを持つ本格的なエアロモデルは1999年発表の387が最初で、2010年に改良型の587に進化。さらに12年のモデルチェンジで579が登場。21年にはマイナーチェンジでさらなる進化を遂げた
●389
トラディショナルな定番モデル。1967年登場のロングセラー「359」から受け継ぐ「ピータービルトバード(鳥)」のオーナメントを載せたワイドなラジエターグリル側方から伸びるヘッドランプステーのモチーフなど、洗練されたデザインにファンも多い。
●567
2015年に発売された最新のヘヴィデューティ/特装用モデル。579用のワイドキャビンにメトン製のボンネットを組み合わせたキャブは、フロントアクスルのセットフォワード/バックタイプ双方に対応。389と教頭のヘッドランプユニットが垂直式の排気管とともにクラシックな雰囲気だ。
●520
塵芥車、道路清掃車用のローエントリーシャシー。ただしキャブ中央には高いエンジントンネルがあり、ウォークスルーはむずかしい。作業員の乗降性というよりは、ワンマンで作業運転するためのキャブ形態のようだ。通常の左ハンドル仕様のほか、右ハンドル、左+右のデュアルハンドルが選べる。
●365/367
クラス8のヘヴィデューティ特装シャシー。389と共用の平面ガラス式フロントウィンドウを持つアルミ製キャブに、グラスファイバー製のストレートフードを組み合わせたクラシックスタイルを特徴とする。基本的な架装は単車だが、望めば389と同サイズのスリーパーも注文可能だ。
●535/536/537/548
クラス5〜8の中型車シリーズ。ケンワースのT180/T280と同じセグメントで、クラシックキャビンにボンネットを組み合わせたキャブは各モデルとも共通。
●220
同じパッカーグループのDAF(オランダ)からLF用キャブの供給を受ける中型トラック。集配や清掃車などの特装用途を総9呈したモデルで、フレームやシャシーの構成はクラス7の537に比べて軽負荷寄りの内容となっている。
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