ヤマト運輸などを傘下に持つヤマトホールディングスは、2050年の温室効果ガス排出実質ゼロに向け、2030年の削減目標を具体化し発表した。自社グループによる排出量を2020年度比で48%削減する。
具体的には、電気自動車(EV)2万台の導入、太陽光発電設備の導入、クール便のドライアイス使用量ゼロなどの施策に取り組む。
ヤマトグループはこれまでも「エルフEVウォークスルーバン」のモニター運行や、「日野デュトロZ EV」の実証実験を通じてEV開発に協力してきたが、いよいよ脱炭素に向けて本格的なEVトラックの展開が始まった。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部、写真/ヤマトホールディングス・「フルロード」編集部
2030年の削減目標と主要施策を策定
ヤマトホールディングス株式会社は2022年5月10日、2030年の温室効果ガス削減目標と具体的な施策を策定し公表した。主要施策には「EV車両2万台の導入」などが含まれている。
ヤマトグループは2020年1月に発表した中長期的な経営のグランドデザイン「YAMATO NEXT 100」において、「2050年のCO2排出実質ゼロ」などのビジョンを掲げている。
その達成に向けて、各重要課題(マテリアリティ)に対する具体的な行動内容と、2023年までの到達目標を定めた包括的な中期計画「ヤマトグループ サステナブル中期計画2023【環境・社会】」(環境中期計画2023)を、現在推進しているところだ。
環境中期計画2023の初年度となる2021年度は、社長を責任者とした環境マネジメント体制のもと、一部で課題は残ったものの、温室効果ガス排出量や大気汚染物質排出が少ない自動車の導入、再生可能資源や再生材の利用など計画達成に向け着実に進捗した。
いっぽうで、気候変動の問題は、世界経済フォーラム「グローバルリスク報告書」でも最上位のリスクとされ、企業にも適切な対応が望まれている。
責任ある企業として、長期目標達成のためには中期的な温室効果ガス排出量の削減目標と具体的な施策を明確にすべきという考えのもと、この度、2030年の削減目標と主要施策を策定し、発表した。
2030年までに2万台のEVを導入
2030年の温室効果ガス削減目標としては、自社グループによる排出(=Scope1&2)を2020年度比で48%削減するとした。この削減率は日本政府の目標などを踏まえて策定したものだ。
そのための主要施策としては次のような項目を掲げている。
- EV車両20000台の導入
- 太陽光発電設備810件の導入
- 2030年までに(クール宅急便で使っている)ドライアイスの使用量ゼロの運用を構築
- 再生可能エネルギー由来電力の使用率を全体の70%まで向上
今後、市場成長にあわせ環境投資を適切に行なっていくと同時に、EVと太陽光発電に加えて、エネルギー制御・バッテリーマネジメントなどのシステムによるオペレーションと、カートリッジ式バッテリーを融合させた、新たなエコシステムの構築に向けた実証実験も進める。
また、自社に限らずパートナーとも連携した取り組みなど、一層のサステナブル経営の強化に取り組んで行く。
ヤマトグループとEV開発
ヤマト運輸のEVと言えば、日野自動車が開発した超低床ウォークスルーの小型BEV(バッテリー式EV)トラック「日野デュトロZ EV」を用いた集配業務の実証実験が、2021年11月から行なわれている。期間は2022年5月末までの6か月間だ。
実証実験では、温室効果ガス排出量削減効果と共に、集配業務における効率性・作業負荷低減の効果などを確認する。
日野デュトロZ EVは全長×全高×全幅が約4.7m * 1.7m * 2.3m とコンパクトさが際立ったトラックで、ワンステップで乗降できる約40cmの床面地上高や、車両総重量を3.5トン未満として(平成29年3月以降に取得した)普通免許で運転できるというのもポイントとなっている。
なお日野自動車は「日野デュトロZ EV」の発売を2022年夏とアナウンスしている。
クール宅急便に対しては、デンソーと共同開発した小型モバイル冷凍機「D-mobico」(ディー・モビコ)で対応。ドライアイスを使用しない他、モバイルバッテリーで駆動するのでBEVのバッテリーにも負担をかけない特徴がある。
また、ヤマトグループは2020年にはいすゞ自動車と「エルフEVウォークスルーバン」を開発している。こちらの車両総重量は約4.9トンと、日野デュトロZ EVより一回り以上大きい。
車両サイズ的には、「クイックデリバリー」の代替が日野デュトロZ EV、「MPバン」の代替がエルフEVウォークスルーバンとなる。
ヤマト運輸の車両保有台数は約5万台とされるが、集配用の主力となるクイックデリバーとMPバンだけで3万台。今回策定された「EV2万台の導入」が順調に進捗すれば、消費者にも身近な小型車両の大部分が今後数年で電動化することになりそうだ。
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