これが最後の商用車用ディーゼルエンジン!! VW傘下のトレイトンが歴史的決断!

共通エンジンプラットフォームの開発

 とはいえ、間もなく誕生から130年のディーゼルエンジンは、終わりを迎える。

 これは、ほかならぬディーゼルエンジン自身が、19世紀に蒸気機関を終わらせたのと同じことだ。近い将来、排出ガスを出さないパワートレーンが、化石燃料を燃焼するエンジンに終わりを告げるだろう。

 ただし、この変革が一夜にして起こるわけではない。トレイトングループにおいても、ディーゼルエンジンには最後の重要な役割が残されている。

 トレイトングループのコンベンショナル・パワートレーン部門のトップで、アメリカ人エンジニアのマイケル・カニンガム氏は、新しいコモン・ベース・エンジン(CBE)について、次のように話している。

 「グループの大型トラック用エンジンの新たなスタンダードとなる、革新的な新型ディーゼルエンジンは、来るときに備えるための『橋渡し』の役割をするよう設計されています」。

 同氏はまた、CBEの開発は、簡単なことではなかったと振り返っている。

 「新しいCBEは、革新を詰め込んだような製品です。開発作業を始めたのは2012年の(トレイトングループの)スカニアでした。これはフォルクスワーゲンが傘下の商用車ブランドを『トレイトン』に集約するよりかなり前のことでした。

 マンが開発に加わったのは2015年で、その後、開発はグローバルな共同プロジェクトとなり、アメリカのナヴィスター、ブラジルのVWCO(フォルクスワーゲン・カミニョス・オニブス)なども参加することになりました。

 文化も、産業構造も、当局による規制もバラバラで、乗り越えなければならないハードルが多くありました」。

 グローバルに展開するベースエンジンの開発には、トレイトンブランドの全社から多くのエキスパートが参加し、新型13Lエンジンシリーズは燃費の劇的な向上と、全体的な効率改善を果たした。

CBEプラットフォームの実力とロードマップ

 スカニアから、直列6気筒のCBEをベースとする新世代のDC13型エンジン搭載車「スカニア・スーパー」が既に登場しており、2022年2月には新型「460 R」がドイツの車両比較試験「1000プンクト」(1000ポイント)で評価された。

 独立したトラックジャーナリストらによる同試験で、ボルボ及びマンのトラック(マン車のエンジンはCBE世代ではない)と比較され、GCW40トンの定積状態、平均速度84.6km/hの高速走行時の燃料消費量は、100kmあたり27.1L(1L当たり3.69km)を記録した。

 なお、40トン・高速・100kmの同条件での燃料消費量は、ボルボが28.2L、マンは29.8Lであった。燃費の他に操作性やコスト、安全性などを1000点満点で評価する1000プンクトにおいて、スカニア・スーパーは947.3点を記録、スカニア車が4連覇を果たしている。

これが最後のディーゼルエンジン!! トレイトングループが歴史的決断!
1000プンクトで評価されたスカニア「460 R ハイライン」

 ちなみにスカニアのトラックは従来、「アルファベット(キャブシリーズ)+数字(馬力)」というモデル名を採用しているが(フラッグシップのSシリーズを除く)、スカニア・スーパーではSシリーズと同様、アルファベットが後ろになっている。

 トレイトングループで共有する高効率CBEプラットフォームは、(今のところ?)13L級のみで、スカニアの代名詞となっているV8ディーゼルは設定されない。スカニア以外では、ナヴィスターが2023年、マンが2024年、VWCOが2028年の導入予定。

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