日野自動車への提言 もっと人間味のある開かれた企業に
日野を除く大型車メーカーは、これまで3社とも非常に厳しい時代を生き抜いてきた。社内の同僚が一人去り二人去り、いつかは自分の番と悩んでいた人を何人も知っている。
幸いにして日野自動車はこれまでそんな経験もなく、他社からは「親方トヨタでいいよな~」と羨ましがられてきたが、おかしなことにそんな日野が大型四社の中で社風が一番閉鎖的に感じる。
以前、日野のエンジニアと話した際、新型車の開発にあたってユーザーやドライバーと話をする機会はどれくらいあるかを尋ねたところ、「一度もありません。市場の状況は調査会社からデータが入りますし、販売会社を通じてユーザーの要望もわかりますから……」との返事で、非常に驚いたことがある。
そのほうが効率的という判断なのだろうが、クルマづくりは本当にそんなことでいいのだろうか。
日野が閉鎖的と感じるのは、逆に言えば人間味が薄いということである。なんでも効率一辺倒で、そんな組織づくりに血道をあげている印象がある。
今回の不正問題に対しても、外部有識者による特別調査委員会を設置し、原因の追求と組織の在り方や開発プロセスにまで踏み込んだ再発防止策を立てたいとしているが、不正を抑え込む組織づくりだけでいいのだろうか? もっと働いている社員の一人一人の心のうちに響くような対応が必要ではないか。
たとえば、自分たちが誰のためにどんな目的でクルマづくりをしているか、それが見えなければ目標もやりがいもなくルーティンワークで仕事をこなすだけになってしまう。
ノルマや上司や同僚の顔だけで見ているような開発の現場が今回の不正を生んだとは言えないか。
日野はもっと開かれたメーカーになるべきである。その第一弾が開発陣のお詫び行脚でいいのではないか。ユーザーと直に対面し、生の声を聞くことによって、お詫びをする以上に得るものは多いはず。
第一、困り切ったユーザーの顔が思い浮かべば、不正などしようとは思わないのが人情というもの。再発防止は人間味を取り戻すことだ。
今回の不正問題は、日野ひとりにとどまらず、販売会社やサプライヤー、架装メーカー、OEM先などなど、トラック・バス業界に多大な影響を及ぼす大変な事態である。
今や地に墜ちた感のあるかつてのリーディングカンパニーだが、復活の道は長く険しいとしても、必ずや新生・日野としてよみがえるはず。その日を楽しみに待ちたい。
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