かつて2t車/4t車/10t車は小型トラック/中型トラック/大型トラックの代名詞的存在だったが、それも今は昔。特に小型トラックは、新免許制度の創設を機にクラス分けが複雑化。収斂(しゅうれん)先が混沌としている状況だ。
OEM車が数多く存在し、ディーゼル車、ガソリン車、CNG車、LPG車、ハイブリッド、さらに最近はEVも登場。ますますゴチャゴチャしてきた小型トラックは、それだけに見どころが多く興味深いカテゴリーなのかもしれない。
ここではそんな小型トラックの最新動向を俯瞰的に紹介する!
文/多賀まりお&「フルロード」編集部
*2019年9月発売トラックマガジン「フルロード」第34号より
■小型トラックのカテゴリーと新免許制度の関係
日本の小型トラックは軽自動車より大きい登録車で、GVW(車両総重量)8t級の中型トラックより小さい車両のカテゴリーを指す。
最新の免許制度は、普通免許で運転できる車両はGVW3.5t未満まで、準中型免許でがGVW7.5t未満までと定めているが、小型トラックはまさにこの領域にある。
現状では1.5t積みクラスがGVW3.5tをまたいでおり、一部の車種・車型は普通免許でも運転可能。いっぽう、2.0t積みクラスはすべて準中型免許が必要で、GVWを7.5t弱に合わせた車型も展開されている。
なお、かつては積載量1.0t未満から1.0t~1.5t積み、2.0t超積みクラスのそれぞれにメーカー各社が専用モデルを展開し、3輪車やボンネット車型も存在したが、需要の変化とともに合理化が進捗。キャブオーバー型に収斂したうえ、OEM供給車種が増えている。
ちなみに現在もオリジナルモデルを擁するのはいすゞエルフと三菱ふそうキャンター、日野デュトロ/トヨタダイナの3機種のみ。日産はいすゞエルフのOEM車種に切り替えて販売を継続中だ。
■EV化が段階的に進む? 小型トラックのパワートレーン
こうした状況の背景にあるのが厳格化しているディーゼル車排ガス規制だ。
噴射系などの補機はある程度アップデート可能だが、エンジン本体の設計時期の古いものは高い熱負荷に対応できず規制適合と燃費や出力性能を両立させるのがむずかしい。しかも新規開発には多大なコストが必要で、採算のとれる生産企画台数の確保は容易ではない。
また、最新のいわゆるクリーンディーゼルのコスト高は複雑な後処理装置とともに車両価格を押し上げる要因に……。生涯走行距離が短い用途では、いかにディーゼルの燃費が良くても元をとるのはむずかしい。
なお、自然吸気時代は5リッター超も存在した小型トラックのエンジンは、高過給化とともにダウンサイジングが進み、現在は3リッター級が主流。集配・塵芥回収ではEV、ハイブリッド、代替燃料(CNG、LPG)などさまざまな低公害車が展開されている。
トラックのなかでも重量が軽く、航続距離も短い小型車は、搭載するエネルギー量が少なくて済むことからエネルギー密度の小さいバッテリーやCNGでも実用性の確保が容易。いずれはEVに収斂するのだろうが、当面は複数の手法が存続しそうだ。