エンジンがないのになぜ燃える? トレーラ火災事故が起きる3つの原因

原因その2:部品の劣化による「ブレーキの引きずり」

エア漏れを起こしたスプリング・ブレーキ・チャンバーの実物(写真:日本自動車車体工業会)
エア漏れを起こしたスプリング・ブレーキ・チャンバーの実物(写真:日本自動車車体工業会)

 「ブレーキの引きずり」は『ブレーキ部品の劣化』でも発生します。

 特に多発部位とみられるのが、ブレーキシステムを構成する「スプリング・ブレーキ・チャンバー」と呼ばれるユニットの劣化によって、チャンバー内部の圧縮エアが漏出すること。この現象が起きてもブレーキを引きずってしまうのです。

 スプリング・ブレーキ・チャンバーとは、メインブレーキおよび駐車ブレーキを直接作動させる役割をもつ、非常に重要なユニットです。

 駐車ブレーキは、走行時に解除するわけですが、スプリング・ブレーキ・チャンバーの内部では『圧縮エアの力を使って解除状態を維持』しています。ところがスプリング・ブレーキ・チャンバー内部の部品のひとつである「ダイアフラム」が劣化すると、圧縮エアが漏れでて解除が維持できなくなり、駐車ブレーキが掛かってしまうのです。

 スプリング・ブレーキ・チャンバーのダイアフラムは、2年ごとの定期交換部品です。スプリング・ブレーキ・チャンバー自体も、3年ごとの定期交換部品として指定されています。その中の細かいゴム部品やシール部品は1年ごとの交換部品となっています。

 それぞれ交換を怠った場合、また交換した部品の品質が低い場合でも、ブレーキ引きずりを起こす危険性があるといえます。交換部品選びにも注意したいものです。

 また、ブレーキ引きずりが発生しているかどうかの点検は、2人で確認作業が行なえます。1人は数回ブレーキ操作(トラクタからのブレーキペダル操作、トレーラブレーキの操作、駐車ブレーキの操作)を繰り返し、もう1人はアクスル(車軸)に装着されている「スラック・アジャスタ」が左右および前後(複数軸の場合)で同調して動いているかを確認します。

ブレーキ引きずりは、ブレーキ操作する人と、車軸についているスラック・アジャスタを確認する人の2人ひと組の作業で確認できる。スラック・アジャスタは、ブレーキ・チャンバーからブレーキユニットへ直接作動を伝えるためのレバー型部品で、ブレーキペダルを操作すると動くのが見える
ブレーキ引きずりは、ブレーキ操作する人と、車軸についているスラック・アジャスタを確認する人の2人ひと組の作業で確認できる。スラック・アジャスタは、ブレーキ・チャンバーからブレーキユニットへ直接作動を伝えるためのレバー型部品で、ブレーキペダルを操作すると動くのが見える

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