ドイツの自動車部品メーカー、コンチネンタルは日本を含む世界5カ国で「モビリティ調査」を行なっている。
最新の調査によると、世界的なトラックドライバー不足を背景に「トラックの自動運転技術」を肯定的に捉える人が急激に増えているようだ。また、渋滞の解消など社会的にもプラスの効果をもたらすと考える人が多数派となり、中国では「人間のドライバーより安全」と考える人が過半数となるなど、無人トラックへの期待が高まっている。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Continental AG
「トラックの自動運転」好意的に捉える人が多数派に
「自動運転トラック」は世界で広く認知されており、多くの人々はこの技術に対して好意的で、近い将来に実用化されると考えているようだ。
これは、ドイツのタイヤ・自動車部品メーカーのコンチネンタルが、調査会社のインファスに委託して行なった「モビリティ・スタディ2024」によりわかったことで、調査は日本を含む5カ国(ドイツ、フランス、米国、中国、日本)で行なった。
18歳以上の個人を対象に、モビリティのニーズと希望、および自動運転トラックなどの新技術への信頼について調査したもので、完全版は10月に公開される予定(中国は都市と農村の二重経済だが、モビリティ・スタディの対象は都市部のみ)。
このうちドイツでは、47%の人がドライバー不在の無人トラックが間もなく登場すると考えていた。この比率は、米国では60%、中国では92%と非常に高くなった。さらに重要なのは、トラックの自動運転技術がプラスの効果をもたらすと好意的に捉えている人が多数派となったことだ。
日本では働き方改革による「物流の2024年問題」もあり、物流の担い手不足が深刻化しているが、トラックドライバー不足は世界各国に共通する課題。自動運転トラックがその解決策になると考える人は多く、ドイツでは約60%に上った。加えて、およそ半分の人は交通渋滞の解消など別の面でもよい影響があると考えているようだ。
コンチネンタルのオートモーティブグループ取締役、フィリップ・フォン・ヒルシュハイト氏はプレスリリースにおいて次のようにコメントしている。
「回答者の大半が自動運転トラックの利点を認識していることを嬉しく思っています。私たちはこの認識をさらに高めるためのお手伝いをしています」。
ドライバー不足は世界の重要課題
世界の多くの国で運送業界への就業者が減るいっぽう、インターネット通販の普及などにより道路輸送の需要は増加が続いている。このためドイツは2023年に7万人のトラックドライバー不足に陥った。このトレンドは今後も当面の間は続くとされる。
自動運転トラックは運送会社にとって運行コストを減らし、配送時間を短縮する機会をもたらすかもしれない。人間のドライバーと違って、運転時間を記録し法定の休憩を取る必要がなく、運転以外の「利益を生まない時間」を減らすことができるからだ。
また、社会的な利益としては、交通事故の主要因となっているヒューマンエラーを完全に排除できるため、道路の安全性が向上する。環境上の利益としてはパフォーマンスの最適化と渋滞の削減により燃料の消費量が減り、CO2の削減につながる。
しかしながら、人間がハンドルを握らない大型商用車に対しては懐疑的な見方もある。ドイツ、フランス、米国では60~65%が無人トラックの安全性を懸念しており、特に日本ではその比率が70%を超えた。
逆に中国では安全性への懸念は約半数にとどまった。中国は調査対象の5カ国中で「人間の運転するトラックより無人トラックのほうが安全性が高い」と回答者の過半数(62%)が考えている唯一の国であった。
トラックの自動運転技術に対する追い風となっているのが、乗用車での「運転支援システム」の普及だ。中国ではほぼすべての回答者が運転支援システムを不可欠と考えており、コンチネンタルの過去10年の調査でも、ほとんどの国がこうした技術にますます肯定的になっている。
特に米国、中国、日本では「肯定的」が50%を超えた(中国:90%、日本:72%、米国:56%)。また、「10年後に自動運転技術が日常的に使われていると思う」割合も、これらの国は欧州2カ国より大幅に高くなった。とはいえ、欧州でもその比率は増加している。
2020年以降に登録された乗用車を所有する回答者は、古い自動車の所有者より自動運転技術を「有用」とする傾向があることが示されており、最新のシステムに触れる機会が多いほど自動運転に対して前向きであるという相関関係がみられる。
生産財であるトラックにおいて自動運転は「利益を生む」ための技術で、巨大市場に成長する可能性を秘めている。乗用車で普及が進む運転支援システムがそのための基礎となるかもしれない。
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