能登半島地震の緊急物資輸送を検証する! 継承された東日本大震災の尊い「教訓」

能登半島地震の緊急物資輸送を検証する! 継承された東日本大震災の尊い「教訓」

 令和6年能登半島地震。被災した方々の声を聞くたびに未だに胸塞がる思いがするが、そのいっぽうで復旧・復興に向けて力強い動きも見られるようになってきた。

 中でもトラックはライフラインであり、被災地における救援・復旧・復興のシンボルでもある。被災地に向け、想いを一つにしたトラック運送事業者の動きを追った。

文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/全日本トラック協会・フルロード編集部
参考資料/「広報とらっく」1月20日号(号外)

発災の45分後には対策本部を設置

能登半島地震の緊急物資輸送を検証する! 継承された東日本大震災の尊い「教訓」
1次輸送の広域物資拠点となった石川県産業展示館

 発災時、トラック運送事業者の動きは極めて迅速だった。全日本トラック協会(全ト協)は、1月1日16時10分に能登半島地震が発生したことを受けて、その45分後の16時55分に坂本克己会長を本部長とする「令和6年能登半島地震対策本部」を設置。国が行なう「プッシュ型」の緊急物資輸送への対応を開始した。

 全ト協では、指定公共機関である大手運送事業者7社と連携し、緊急物資輸送体制を構築。陸上輸送による緊急物資輸送は、全国から、石川県の広域物資拠点に指定された金沢市の石川県産業展示館までの「1次輸送」、同展示館から市町の物資拠点までの「2次輸送」、さらにそこから各避難所までのラストマイルを担う「3次輸送」を展開した。

 1次輸送(プッシュ型緊急物資輸送)の輸送品目は、水、食料品、生活用品、ブルーシート、段ボールベッド、パーテーション、ジェットヒーター、ガソリン携行缶、土嚢袋、携帯トイレ、仮設トイレ、消毒液、マスクなど。

 物資を供給する事業者が輸送手段を確保できない場合は、国土交通省からの協力要請に応じて、トラックの手配を確実に実施した。

 2次輸送に関しては、自治体からの要請に応じて石川県トラック協会による輸送で対応したほか、自衛隊による輸送も実施。

 1次輸送拠点である石川県産業展示館では、物流の専門家として石川県トラック協会の青年部会副部会長が現場責任者の一人として陣頭指揮にあたった。また、市町の物資拠点での荷捌きや荷物管理の効率化、さらにラストマイルの着実な配送に向け、トラック運送事業者の従業員が派遣されている。

東日本大震災の尊い教訓を活かして

能登半島地震の緊急物資輸送を検証する! 継承された東日本大震災の尊い「教訓」
13年前の東日本大震災で活用された岩手県産業文化センター「アピオ」。「岩手方式」は被災地での緊急支援物資輸送の手本となった

 今回の緊急支援物資の輸送で展開された迅速で的確な体制づくりには、13年前の教訓が活かされている。そう東日本大震災の教訓である。

 東日本大震災では、被災者の元になかなか救援物資が届かず非難する声が多く聞かれた。しかし、充分とは言えないまでも、必要最小限の量や品目は少なくとも翌日の朝から被災地に届き始めていたのである。

 それなのに被災者の元に届くのが大幅に遅れたのは、一つには、被災地があまりにも広域にわたり、避難所や避難した人の数が極めて多かったことが影響しているが、もう一つは、緊急支援物資の荷受け・仕分け・搬出などを行なっていたのが主に県などの自治体の
職員だったことがあげられる。

 圧倒的に人手が足りない上に、慣れない作業の連続、しかも混成部隊のため命令系統もはっきりせず、多くの現場が大混乱に陥っていた。こうした中で、今では「岩手方式」と呼ばれる救援物資の荷受け・仕分け・搬出の一括管理を行ない、目覚ましい成果をあげたのが岩手県トラック協会である。

 当時、岩手県の防災対策本部は岩手県トラック協会に救援物資にまつわる作業の委託を打診した。言ってみれば作業の「丸投げ」という格好だったのだが、これが功を奏した。

 作業の陣頭指揮にあたった岩ト協の佐藤耕造専務理事(当時)は、かつては大手運送会社に長年在籍していた物流のプロフェショナルだ。佐藤氏は、まず緊急支援物資の集積場となっていた倉庫から、新たな集積場として岩手県産業文化センター「アピオ」を指定する。

 コンベンションセンターである「アピオ」は極めて広く、大型トラックを直接乗り入れることができる床の耐荷重を有していたからだ。

 アピオでは24時間体制を敷くと同時に、フォークリフトを8両導入した。パレットやロールボックスも大量に入れて、手積み手降ろしの時間的ロスを省き、省力化・効率化を徹底した。つまり、ウイングボディにフォークリフトでパレット積みという、いわば日本のトラック輸送の理想形を災害物流において実現したわけである。

 岩ト協職員の中には運送事業の現場で働いていた経験者がいたため、彼らが陣頭指揮に立って支援物資の一括管理を行ない、大型トラックから降ろした物資はすぐに仕分けされ、今度は主に中型トラックに載せ替えられて、県内12市町村、1000箇所以上ある市町村の集積場や避難所に送り出された。

 さらに、入ってくる車両をゲートでチェックして荷物の確認をしたり、あるいは震災の混乱に乗じた「火事場泥棒」を防ぐため24時間の警備体制を敷くなど、その仕事ぶりは徹底していた。

 つまり岩手方式とは「餅は餅屋」の物流のプロによる迅速で的確な作業のことである。今回の能登半島地震で1次輸送拠点となった石川県産業展示館は、まさに岩手県の「アピオ」を再現したもので、さらに改良が加えられた輸送拠点と見ることができる。

 全ト協では、「東日本大震災における緊急支援物資輸送活動の記録」や都道府県トラック協会向けの「大規模災害発生時の緊急支援物資輸送対応標準マニュアル」などを作成。かつての災害から得た尊い教訓を受け継ぐことに注力している。

 今回の能登半島地震では、各地で道路やトンネルの崩落などが多数発生し、不可抗力ながら、特にラストマイルの緊急支援物資の輸送が滞った面は否めないが、ライフラインを守るトラックは、いつも被災者に希望を届けるクルマだと思う。

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