今年3月7日にフルモデルチェンジしたいすゞ自動車の小型トラック「エルフ」は、同じ日(日本時間では翌8日)に米国インディアナ州で開催された商用車ショーでも、バッテリーEVモデルが公開されている。この北米向けエルフEVは、EV技術そのものは国内向けと共通だが、かなり違うクルマでもあるのだ。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Isuzu Commercial Truck of America、Daimler Truck、Hino Motors Sales USA、Lion Electric
日本にはないエルフ
現地時間3月7日に公開された北米向けエルフEVは、「NRR EV」と呼ばれるモデルで、北米では「クラス5」と呼ばれる中型トラック相当の車格になる。
北米向けエルフは、そもそも日本よりも車両総重量(GVW)が大きめなのが特徴で、ボトムレンジはクラス4(GVW14001~16000ポンド=約6.3~約7.2トン)の「NPR」となる。NPRは、日本でいうエルフ・ワイドキャブのGVW5トン超車型だが、北米では標準キャブやハイキャブを設定しないので、これがベーシックな車型となる。
北米ではNPRの上に、クラス5(GVW16001~19500ポンド=約7.2~約8.8トン)のGVW17950ポンド(約8.1トン)級「NQR」と、GVW19500ポンド(約8.8トン)級「NRR」が存在する。ともに国内でも、かつては積載量4トン級モデルとして展開していた車型ではあるが、現在はラインナップしていない。
つまり「NRR EV」は、北米向けエルフで最も大きい車型のEVであり、国内向けエルフEVよりも、さらに上の車格のEVトラックということになる。
NRR EVの性能
NRR EVも、国内向けエルフEVと同じ容量20kWhの高電圧バッテリーパック(リチウムイオン電池)を採用しているが、その搭載数バリエーションは「3基」「5基」「7基」「9基」で4種もある。国内向けは現時点で「2基」「3基」「5基」の3種だ。
前述のとおりNRR EVは車両総重量が大きいので、バッテリーパックを3基あるいは5基の場合なら積載量を大きく確保でき、7基あるいは9基だと積載量は制約されるが、その代わり長い航続距離(7基は152~289km、9基は196~378km)を得ることができる。
また、3基仕様は4種のホイールベース、5基仕様は同じく3種から選択できる一方、7基仕様・9基仕様では、ホイールベース4.4m車のみの設定となる。これはバッテリーパックをシャシーフレーム内に3基、フレームの左右に2対(4基)あるいは3対(6基)という搭載レイアウトのため、物理的に必要となる軸距である。
バッテリーパックが増えれば、高電圧ハーネスの配索やマウント構造などがそのぶん複雑になるが、いすゞの開発スタッフによると、バッテリーパックを共通化できるメリットが、なにより大きいとの話だった。
その意味では、EVトラックでも豊富な選択肢を展開する、というコンセプトが、北米市場に適応しつつも国内仕様と同一であることに気づかされるところで、後述する北米の競合車にはないポイントといえる。
なお、米国のCCS1規格・急速充電(直流)を使用した場合は、1~2.5時間で充電が完了できるとしている。普通充電(交流J1772規格)だと、5.5~10時間が必要とされる。
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