大雪によるトラックの立往生を何としても減らしたい! 物流ストップを招くスタックからの緊急脱出用具を国交省が募集中!

冬季道路の考え方を転換させた平成30年の大雪

 東京都心で20cmを超える積雪を観測した2018年(平成30年)の大雪を覚えているだろうか? 1月には首都高・山手トンネル付近で海コントレーラが走行不能に陥り10時間の立往生が発生、2月には福井県の国道8号線でトラックを中心に約1500台が立往生し、通行再開までに3日以上を要した。

 こうした大雪による交通障害への対策を検討するため、国交省は同年2月に学識経験者等からなる「冬期道路交通確保対策検討委員会」を設置した。委員会の提言(大雪時の道路交通確保対策中間とりまとめ)は、冬期道路に対する考え方の転換を求めるものだった。

 従来、道路管理者は「通行止めを回避する」という考え方のもと、自らが管理する道路をできるだけ通行止めにしないことを目標に対応を行なってきた。この取り組みは通常の降雪時には重要だが、集中的な大雪の場合は、ひとたび立往生が発生すると短期間のうちに大規模な車両滞留に発展してしまう。

 また、高速道路/国道など道路管理者間の連携も充分ではなく、高速を通行止めにすると車両が国道に流れ、そこで立往生が発生してしまうという課題もあった。

 平成30年の提言では、こうした考え方を「道路ネットワーク機能への影響の最小化」という考え方に転換し、それぞれの道路管理者が連携して除雪に努めつつ、関係機関に協力を求めながら、道路ネットワーク全体として大規模な車両滞留の抑制と通行止め時間の最小化を図るべきとした。

 ちなみにこのときの提言では、低コストで効果の高い新技術に対しては、国が適切に公募・評価を行なうとともに、それに対応した契約方法や仕様、基準の検討など、民間の技術やノウハウに関しても積極的に活用することが必要となるとしていた。

 この度の「緊急脱出用具」の公募も、2018年の大雪が一つのきっかけになっていると言えそうだ。

令和3年の改定

 しかしその後も大規模な車両滞留が続き、令和2年(2020年)12月の関越道では合計2000台が立往生し、車両の移動と通行止めの解消に2日かかった。翌1月にも北陸道で1600台の立往生が発生し、福井県が災害対策基本法に基づく自衛隊の派遣要請を行なった。

 これらを踏まえて対策委員会は先の中間とりまとめを2021年に改定し、基本的な考え方を「道路ネットワーク機能への影響の最小化」から「人命を最優先に、幹線道路上で大規模な車両滞留を徹底的に回避すること」へ再び転換した。

 背景には道路ネットワーク機能を確保するために通行止めを躊躇した結果、かえって大規模な車両滞留が発生してしまったという反省がある。

 具体的な強化点としては、タイムライン(段階的な行動計画)を作成し躊躇なく通行止めを実施すること、予防的な通行規制により集中除雪を行なうこと、チェーン装着の徹底、気象庁と連携した緊急発表と社会全体での行動変容の呼びかけ、立往生が発生した場合の迅速な対応などがある。

 しかし運送会社にとっては、運航中止や延着に繋がる広域迂回の判断には、荷主企業の理解が不可欠だ。中には大雪でも予定通り荷物を運ぶよう荷主から強い要望を受けるケースもある。そのため国交省と荷主を所管する関係省庁は緊急発表等があった場合に、柔軟な対応をとるように荷主団体に要請している。

 一般消費者としても、大雪時に無理な運行を指示すれば、かえって大規模な混乱を招くことは理解すべきだろう。

 なお、大型車がノーマルタイヤにより雪道で立往生した場合、事業者に指導(監査)を行ない、悪質と判断されれば行政処分の対象となる。併せて整備担当者・運行管理者に対して冬用タイヤの溝の深さが、メーカーの推奨する使用限度よりすり減っていないことの確認が義務付けられている。

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大型車では冬用タイヤの残溝確認が義務化されている。国交省のパンフレットより

 中間とりまとめは、業務として車両を運行する以上、チェーン等の装備は運送会社が責任を持って用意するほか、ドライバーに対しては車内にスコップや飲食料、毛布、砂、軍手、長靴、懐中電灯、スクレーパー等の準備を行なうべきとしている。

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