働き方改革の2024年問題で何が変わる? 時間外労働の上限960時間がトラック業界に及ぼす影響は!?

■現場に即していない「改善基準」

 ドライバーの仕事は、長距離やコンビニ配送を中心に深夜労働が多いのだが、現行制度では「賃金の深夜割増」(深夜の残業の場合、基本時給の1.5倍)がほとんど反映されていない。

 実際には、トラックドライバーの給料は、深夜だろうと昼間だろうとあまり変わらない。これが、2023年の改正後は基本時給の1.75倍(月60時間超の部分)になるという。

 全日本トラック協会の試算例によると、この変更で1人あたり月6300円の時間外手当の増額になるが、本当に上がるかどうかは非常に懐疑的だ。

 そもそもトラックドライバーには残業の概念があまりないからだ。しかし、人がベッドで寝ている時間に、眠い目を擦りながら危険な深夜労働をすることへの敬意や代償があってもよいと思うのだ。

 「改善基準」では「拘束時間1日13時間以下」「430休憩」など、多数の規制をしているものの、深夜労働に関する制限が弱い。24時間を夜昼関係なく扱っており、深夜12時から出勤しろというのもアリ。これでは人間の生理学的に大変厳しいものとなってしまう。

 かつてバブルの頃は、建設業でも徹夜の作業は2人工、3人工といって通常の2倍以上の賃金が支払われ、それなりの補償があった。

 また、昔のあるドライバーは「午前2~6時の間に2時間寝れば、何日でもぶっ続けで働ける」と言っていた。こういうことを続けると危ないが、ある程度真実を突いている。

 つまり、明け方前の午前2~6時は人間が最も眠たい時間帯であり、この時間帯に寝れば身体も楽である。また、この時間帯には重大事故も多い。

 「改善基準」は深夜労働の規制にもう一歩踏み込むべきだと思う。「430休憩」は、連続運転時間4時間以内で30分の休憩を取りなさいというもの(分割可能)。「430」はEUの規制と同等で、米国では「8時間に30分の休憩」がある。

 これについても意見は多いと思うが、一つ指摘しておくと、残業時間の規制が始まると、これまで高速代節約で下道を走っていたトラックが一気に高速に乗るようになるだろう。

 すると、SA・PAの駐車マス不足にさらに拍車がかかることになるだろう。「430」を守らなければ監査でやられ、路肩に駐車すれば道交法違反。「運転手はいったいどうすればいいのか?」と思ってしまう。

■「担当車」と「乗り回し」

 トラックドライバーの給与体系には、約50年前の「映画トラック野郎」の頃の慣例が今も残っている(金額は見る影もなく減ってしまったが……)。つまり、歩合制、出来高払いが今も残る。

 たとえば会社に属していても、基本給は7~8万円程度で、賃金の大部分が歩合給といった具合である。従って、時間外手当や深夜割増、待ち時間の待機料の概念が発生しないのである。どんな条件でも1本(の仕事)は1本だ。

 そこで乗務時間を減らされると、給料の目減りにつながる。また、1人が1台のトラックを担当する「担当車」は不利になるだろう。クルマの稼働率が下がるが、駐車場代などの固定費は変わらないからだ。

 昔は、ドライバーが起きている間はずっとクルマを動かしているスタイルだった(弊害もあったが……)。今後は、担当のトラックが決まっていない「乗り回し」が増えるだろう。

 しかし、これにはドライバーの抵抗感が少なくない。長距離の場合、トラックは生活の場ともなり、キャビンには私物も増えるが、「乗り回し」だとその都度全部積み替えなければならない。クルマの調子も把握できない。飾りつけもできなくなる。

 自家用車とレンタカーぐらいの差がある。やはり、ドライバーの仕事を選ぶぐらいだから、飾りつけもしたいだろう。だが、働き方改革は「担当車」乗りにとっては向かい風だ。

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