トラックドライバーを襲う睡眠時無呼吸症候群=SAS! その実態と対処法に迫る!

治療と検査後のフォロー

 避けなければならないのは、SASであることを隠し、治療を受けずに運転業務を続けることだ。そのためにも、SASを理由に乗務からはずすなど差別的な扱いをしてはならない。

 検査前からSAS対策の目的や方針を周知し、社内で意識共有することが重要だ。また治療費の負担や乗務可否の判断など、SAS取扱い規定を作成することで公平かつスムーズな対応が可能になる。

 治療法としてはCPAP(持続陽圧呼吸療法)、OA(口腔内装置)、手術(口蓋垂軟口蓋咽頭形成術)等がある。

 このうちCPAP(シーパップ)はSASの代表的な治療法で、中等度~重度の患者によく用いられる。睡眠時に鼻マスクを付け、上気道に陽圧をかけることで気道を押し広げ無呼吸を防く。有効性・即効性があり、副作用はほとんどない。

 ただ毎月の受診が必要で、一定期間だけCPAPを着ければSASが治癒するものでもないため、できるだけ毎晩装着することが望ましく、ドライバーには一定の負担が必要となる。

睡眠中の正常な状態の上気道の図。いっぽう睡眠呼吸障害は、舌が喉の奥に沈下し呼吸が止まったり、止まりかけたりする状態となる
睡眠中の正常な状態の上気道の図。いっぽう睡眠呼吸障害は、舌が喉の奥に沈下し呼吸が止まったり、止まりかけたりする状態となる

 SAS診断後は事業者や運行管理者によるフォローも重要だ。治療開始までの勤務スケジュールの変更のほか、社内での理解促進、継続的な治療のチェックも欠かせない。

 残念ながらドライバーの中には治療を中断したり、重度のSASを放置して事故を繰り返す人もいる。治療を受けずに運転業務を続けることは、本人にとっても、事業者・社会にとっても危険な状態だ。管理者にはプロドライバーとしての自覚を促す強い指導力が求められる。

 職業として運転業務に当たるプロドライバーにとって、良質な睡眠は安全を確保するための生命線といえる。いっぽうでSASを理由に不利益を受ければ検査や治療に消極的となるドライバーも出てくる。ドライバーと事業者の双方に一層の理解と努力を期待したい。

先進安全装備「ドライバー異常時対応システム」の普及も……

 最後にもう1つ、車両側で普及し始めた新たな動きもご紹介しよう。SASに起因する重篤な病気の発症など突発的なドライバーの異常に際して、最新の自動運転技術が文字通りストップをかけるというものだ。

 「ドライバー異常時対応システム」(EDSS)と呼ばれるこのシステムは、車両がドライバーの異常を検知し自動で安全に停止するもので、トラックでは昨年5月にいすゞ自動車の新型ギガに初めて採用された(全車にオプション設定)。

 ギガにはフロントピラーに内蔵されたカメラで常時ドライバーの状態を監視し、居眠りやよそ見運転を検知すると警報する「ドライバーステータスモニター」が2019年より装備されている。

 EDSSはこの進化版で、ドライバーが意識を失うなどの異常を検知すると、自動でブレーキ制御を開始し車両を停止させるもの。また、ドライバー自身のスイッチ操作でも機能する。

ドライバーモニターの警告機能に、自動ブレーキの機能を追加したギガのEDSS
ドライバーモニターの警告機能に、自動ブレーキの機能を追加したギガのEDSS
ドライバー自身によって車両を緊急停止させるEDSSスイッチも備わる
ドライバー自身によって車両を緊急停止させるEDSSスイッチも備わる

 ドライバーの異常を検知し自動で車両を停止し、大事故を未然に防ぐ先進安全装備は、昨年6月に発表された三菱ふそうの新型スーパーグレートにも採用された。

 こちらは高度運転運転支援システム「アクティブ・ドライブ・アシスト」のハンズオフ検知機能を使ってドライバーの異常を検知。複数段階の警告を経て、車両を自動制御で車線内に停止させるものだ。

 ただ、こういった先進安全装備は「最後の砦」と考えるべきだろう。何よりも重大事故につながりかねない突発的な病気を発症しないことが大切だ。特に大型車を運転するドライバーには日頃からSASに対処する習慣を持ってほしいと思う。

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