腰痛に悩まされている人は多いと思うが、とりわけトラックドライバーにとっては深刻な職業病になっている。
厚生労働省がまとめた「業務上疾病調」によると、令和2年(2019年)における業務上疾病(休業4日以上)の発生件数は1万5038件で、そのうち腰痛が5616件(非災害性を含む)を占めている。
運輸交通業と貨物取扱業から陸上貨物運送業、つまりトラックドライバーに絞ったデータを見てみると674件となり、これは全産業の12%を占める値だ。
トラックドライバーにとって、まさに腰痛は職業病と言え、他の産業の同じ年齢層と比較すると、40歳代前半までで発生率は4倍から6.6倍にもなるという。
陸上貨物運送事業労働災害防止協会(陸災防)の広報誌「陸運と安全衛生」令和3年9月号を元に、本誌「フルロード」に寄せられたトラックドライバーの声を交え、トラックドライバーの腰痛問題を考えてみた。
文、写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
【画像ギャラリー】突然襲う激痛に思わず「あたたたた!!」 おれの腰はもう死んでいる!? トラックドライバーの腰痛問題を考える
■手積み手降ろしの配送ドライバーはぎっくり腰の常連
まず、本誌に寄せられたトラックドライバーの声からご紹介しよう。はじめに冷凍車でケーキやパンなどの配送業務を行なっている愛嘉さんの話である。
手積み手降ろしの配送の上、長時間運転で座りっぱなしということもあり、腰痛持ちの人は私だけではないはず。ぎっくり腰なんて何回やってしまったことやら……。中には椎間板ヘルニアになってしまう人も……。私も絶対にヘルニアにはならないようにと日々気をつけています。
ただ、「荷物を持つ時に気合いを入れる」以外に特に何かしているわけではないのですが……。私はまだそこまで酷いわけではないと思うのですが、「歳とったら腰にくるよ~」なんてよく言われるので、いつそうなるのかとドキドキしています。
■腰が原因ではない!? 意外な部位と原因からヘルニアを発症!
そのヘルニアを発症してしまったのが由美さんである。
健康だけが取り柄の自分がヘルニアを患うことになるとは……。私は毎日日本全国600~800kmを移動する、俗にいう長距離トラックドライバーなんですが、悪夢は何の前ぶれもなく突然やってきました。
いつものように深夜から早朝にかけて高速道路のサービスエリアで仮眠をとって、さあ、そろそろ起きて走らなきゃと思い、トラックの寝台から起き上がろうとした時です。
「アイタタタ~~~ッ!」
今まで経験したことの無い激痛が、私の首から右側の肩・背中・腰・腕にかけて走ったのです。
もがきながら痛みをこらえ、やっとの思いでなんとか起き上がりました。ヤバイ、これはなんだろう? 痛い。でも荷物降ろしに行かなきゃ。たぶん寝違えただけだろう。しばらくしたら痛みもなくなるだろう……。そんな気持ちで必死に運転しました。
しかし我慢して仕事をするも一向に痛みは治まらず、酷くなるばかり。その上右手が痺れてきて力が入らなくなるという事態。
最悪なのは、動いている時より運転席に座ると痛みが増すこと。それから3日、インフルエンザでも肋骨にヒビが入っても仕事を続け、身体の不調を理由に仕事を休んだことのない私がついにギブアップ(笑)。
会社の部長に「痺れは危険だ。今すぐ病院行け!」と怒られ、総合病院に連れて行かれレントゲンと人生初のMRIでの検査。診断結果はまさかの頚椎間板ヘルニア。ヘルニア!?
しかも腰じゃなくて首? 医師いわく、首のヘルニアが神経を圧迫して痛みや痺れが出ているとのこと。
原因は、長時間運転しているとだんだん前屈みになったり姿勢が悪くなること。それから狭いところで寝返りもうたず、同じ体勢で寝ていること。首に負担がかかったり血行が悪くなったりして発症するらしい。あとは年齢を重ねると発症しやすくなるとのこと。
その後は病院で処方された薬を飲んで1週間ほど自宅療養したものの、薬も効かず痛みも治まらない。病院を変えたり、薬も違うものにしたり、人生初のハリ治療に通ったり……。
悪戦苦闘しながらも最近やっと痛みも治まってきたかなあ……。あとは適度な運動で血行を良くして、自然治癒を待つしかないみたいです。しかしヘルニアは一度なると再発の恐れもあるそう。これからは運転姿勢に気をつけて、健康面もきちんと自己管理しなくては! と思いました。