政府は2026年3月31日、「総合物流施策大綱(2026年度~2030年度)」を閣議決定した。
2024年問題と総称されるトラックドライバー・物流の担い手不足に加えて、国際情勢の緊迫化によって国際物流のリスクが顕在化し、日本の物流現場にはかつてない危機感が漂っている。政府は2030年度までを物流革新の「集中改革期間」に位置づけ、従来にない対策を抜本的かつ計画的に講じることにした。
新・大綱の計画年度は2026年4月より始まっている。
文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
図/国土交通省
政府が「総合物流施策大綱(2026年度~2030年度)」を閣議決定
日本の物流政策の指針となる「総合物流施策大綱(2026年度~2030年度)」が、2026年3月31日に閣議決定された。政府の検討会が提言した次期大綱の案は、3月3日に国土交通省が了承し、公開していた。この案をもとに新大綱が閣議決定され、2026年4月より計画年度が始まっている。
5カ年計画の物流施策大綱も今回で第8次となるが、物流の「2024年問題」や国際情勢の緊迫化などを背景に日本の物流は危機的な状況にある。新大綱のもと、政府は2030年度までを物流革新の「集中改革期間」と位置づけ、輸送力不足解消に向けて従来にない対策を抜本的かつ計画的に講じる。
将来にわたって物流の持続可能性を確保するとともに、経済を成長させ、公共性の高い物流サービスを維持するため、そのポテンシャルを最大限に引き出すことが求められるという。
日本の総人口は2008年をピークに減少局面に入った。特に、生産年齢人口(15歳から64歳)は2025年から2050年にかけて24%減少するいっぽう、高齢者(65歳以上)は6%増加し、少子高齢化が一層深刻化すると見込まれている。
このため日本のあらゆる産業で労働力の減少が懸念されるが、他産業と比べても高齢化が顕著で、今後も若年者の入職の減少が予想されているのが運送業界だ。長時間労働や低賃金といったイメージが定着していることに加えて、時間外労働の上限規制による「2024年問題」に直面しており、物流の担い手不足に拍車がかかっている。
こうした供給制約に加えてカーボンニュートラルに向けた取り組みも求められている。さらには物流分野でデジタル化やAI等のテクノロジーの活用が遅れたことで、日本全体の国際競争力の低下にもつながりかねない。
5カ年計画で政府が策定している「総合物流施策大綱」は、時宜に応じて中長期的な視点から物流の方向性を示すものだが、物流が経済・社会のインフラとしての役割を将来にわたって果たすため、集中改革期間の5年間で持続可能な物流を構築しなければならない。
前大綱の達成状況は?
新たな大綱が示されたわけだが、前大綱の達成状況はどうだったのか? 前大綱では物流の構造改革や生産性向上を図るため、次の3つの観点から取り組みが進められた。
●物流DXや物流標準化の推進によるサプライチェーン全体の徹底した最適化(簡素で滑らかな物流の実現)
●時間外労働の上限規制の適用を見据えた労働力不足対策の加速と物流構造改革の推進(担い手にやさしい物流の実現)
●強靱性と持続可能性を確保した物流ネットワークの構築(強くてしなやかな物流の実現)
何もしなければ2024年度には14%、2030年度には34%の輸送力不足に陥るとされたが、最終計画年度となる2025年まで大きな混乱は起きておらず、前大綱で掲げられた官民の取り組みは一定の成果を上げたというのが検討会の評価である。
ただし、持続可能な物流に向けてはいまだ道半ばであり、目標達成のために更なる取り組みが必要となっている。代表的な指標について定量的に見た目標と実績は次の通りだ。
トラックドライバーの年間平均所得
目標:全産業平均=527万円(令和6年)
実績値(大型): 454万円(令和2年)→492万円(令和6年)
実績値(中小型): 419万円(令和2年)→437万円(令和6年)
トラックドライバーの平均労働時間
目標:全産業平均=2052時間(令和6年)
実績値(大型): 2532時間(令和2年)→2484時間(令和6年)
実績値(中小型): 2482時間(令和2年)→2424時間(令和6年)
トラック運転に占める若年層の割合
目標:全産業の割合=16.8%(令和6年)
実績値:10.3%(令和2年)→10.1%(令和6年)
物流業の労働生産性
目標:平成30年度比で2割程度の向上
実績値:2569円/時(平成30年度)→2623円/時(令和5年度)
(約2%の向上。なお、令和5年度の全産業では4029円/時だった)
トラックの積載効率
目標:50%
実績値:37.7%(令和元年度)→41.3%(令和6年度)
宅配便の再配達率
目標:7.5%程度
実績値:10%程度(令和2年度)→ 9.5%程度(令和7年度)

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