ダイムラー・トラックは新型「eアクトロス400」を発表した。2021年に登場した同社初の量産型BEV大型トラック「eアクトロス300/400」を置き換えるもので、長距離輸送用の「eアクトロス600」と部品を共通化し、メルセデス・ベンツの第2世代BEVラインナップを構成する。
eアクトロス400では、モジュラー式のバッテリーパックを2つとしてディーゼル車並みの積載量を確保したほか(eアクトロス600は3つ)、豊富なホイールベースやアクスル構成を提供し、トラクタ系から単車系までBEVトラックの実用性を高めた。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Daimler Truck AG
ダイムラー、「eアクトロス400」を刷新
ダイムラー・トラック(ドイツ)は2025年9月30日、メルセデス・ベンツのバッテリーEV(BEV)大型トラック「eアクトロス400」の刷新を発表した。
メルセデス・ベンツ・トラックスは2024年末から長距離輸送も可能なBEV大型トラック「eアクトロス600」を量産しており、ディーゼル車の代替を可能としてきたが、新型eアクトロス400及びeアクトロス600により同社の量産型BEV大型トラックは第2世代となる。
2021年に導入された「eアクトロス300/400」は第1世代にあたり、2025年中の生産終了がアナウンスされていた。このたび発表された新型eアクトロス400は、電動アクスル(eアクスル)など技術的にはeアクトロス600をベースとしつつ、新たなアクスル構成、ホイールベース、キャブバリエーションなど車型を大幅に拡充した。
新型車はフランスのモルスハイムで開催されたメディア向け試乗会で初公開され、第2世代BEVの両モデルにより電動ラインナップを拡大し、長距離から地場輸送までゼロ・エミッションが求められる様々な要求に応えて行く。
1基当たり約200kWh容量のバッテリーパック2つの組み合わせをeアクトロス400、同3つをeアクトロス600として提供していくようで、どちらもセミトレーラ連結用のトラクタとしても、ボディへの架装を行なう単車系シャシーとしても活用できる。
キャブは2種類から選べるようになった。一つはディーゼル車で実績のある「Lキャブ」で、キャブ搭載位置の低さによる乗り降りのしやすさや空力性能に優れている。いっぽう、これまでフラッグシップ系(アクトロスLやeアクトロス600)に搭載されてきた大型の「プロキャビン」も提供され、居住空間を最大化する。
さらに、特装車など様々な用途をカバーするためホイールベースやアクスル構成を大幅に拡充する。
メルセデス・ベンツ・トラックスのCEO、アヒム・プヒャート氏は次のようにコメントしている。
「2021年以来、私たちは貨物輸送の新しい形を示しながら実用的なソリューションを提供してきました。eアクトロス600ではBEVによる長距離輸送を実現し、同車は既に欧州15カ国を走っています。
しかしながら、一つ確実に言えることがあります。それは輸送の変革を成功させるには充電インフラの整備がBEVトラックの普及と歩調を合わせなければならないということです。これによりお客様の事業は初めて収益を上げることができるようになります」。
航続距離・積載量・購入価格を左右するバッテリーパック
新モデルはEU30市場と一部の非EU市場で10月から注文可能になる。最初の量産車は2025年中にヴェルト・アム・ライン工場(ドイツ)をラインオフする予定だ。
第2世代BEVはeアクトロス600で導入した技術を特徴とし、例えば自社開発の電動アクスル、長寿命のリン酸鉄リチウム(LFP)バッテリー、800V駆動の電動アーキテクチャ、新型デジタルダッシュボードの「マルチメディア・コックピット・インタラクティブ2」、先進安全装備や包括的アシスタンスシステムなどを搭載している。
第1世代のeアクトロス300/400は年末までに生産を終えることになるが、同社の製品エンジニアリングを担当するライナー・ミュラー=フィンケルダイ氏は次のように話している。
「第2世代eアクトロスは、一貫してモジュラーモデルとして開発を進めてきました。バッテリーや駆動ユニット、アシスタンスシステムなどをモジュールとして組み合わせるもので、これにより基本車型だけで40を超える組み合わせオプションが可能になりました。多様なニーズにこれまで以上にきめ細かく対応し、貨物輸送の脱炭素化を進めることに貢献します」。
特にBEVトラックでは、バッテリーが車両の航続距離・積載量・価格を左右することになり、顧客の要求が複雑だ。バッテリーパックを2つとしたeアクトロス400は、より魅力的な価格での電動モビリティへの参入を可能にするもので、207kWhのバッテリーパック2基により合計414kWhとなる。モデル名の「400」はバッテリー容量に由来する(eアクトロス600も同じ)。
航続距離は用途によっても変わるが、同社の試算によるとeアクトロス400の6×2ドライバン架装の単車であれば最大480kmの航続距離を実現する。
なお、バッテリーパックを3つ搭載する(合計621kWh容量)eアクトロス600は、連結総重量40トンで500kmを超える走行が可能だ。Lキャブのeアクトロス400で同様にセミトレーラをけん引した場合、航続距離は最大330kmとなる。
トラックではバッテリーを減らせば車両重量が軽くなり、積載量を多くとれる。標準的なセミトレーラと組み合わせた場合、eアクトロス400は25トン以上の積載量を達成でき、これはディーゼル車に匹敵する水準だという。
キャブ後方の車両左側にCCS2方式の充電ソケットを標準装備し、400kWでの充電に対応する。オプションで車両右側に充電ソケットを追加することも可能だ。10%~80%充電にかかる時間は、2パックで約46分、3パックで約70分だという。さらに、プロキャビンのeアクトロス600では将来的にMCS(メガワット・チャージング・システム)方式も利用可能になる予定だ。


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