ホイールベースやキャブバリエーションなど車型を大幅に拡充! メルセデス・ベンツの量産型バッテリーEV大型トラック第2世代【後編】

ホイールベースやキャブバリエーションなど車型を大幅に拡充! メルセデス・ベンツの量産型バッテリーEV大型トラック第2世代【後編】

 ダイムラー・トラックは新型「eアクトロス400」を発表し、第2世代となる同社の量産型BEVトラックのラインナップを強化した。

 eアクトロス400では、キャブ、アクスル構成、ホイールベースの展開などを大幅に増やし、これに合わせて2024年末に量産化している長距離輸送用の「eアクトロス600」にも新たなバリエーションを追加する。これにより第2世代BEVでは基本的な組み合わせだけで40車型を超えるという。

 また、拡大するBEVポートフォリオのため同社では製造工程の最適化も進めている。

文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Daimler Truck AG

BEVの可能性を広げる車両展開

ホイールベースやキャブバリエーションなど車型を大幅に拡充! メルセデス・ベンツの量産型バッテリーEV大型トラック第2世代【後編】
eアクトロス400(単車)とeアクトロス600(トラクタ)

 ダイムラー・トラックは2025年9月30日、刷新されたバッテリーEV(BEV)大型トラック「eアクトロス400」を公開した。先に量産化している「eアクトロス600」とともに同社のBEV大型トラックは第2世代に進化し、電動ラインナップを大幅に拡充した。

 第2世代のeアクトロスは、バッテリーパック2つ(約400kWh容量)が「eアクトロス400」、同3つ(約600kWh容量)が「eアクトロス600」という区分になる。

 集配送と長距離輸送など用途が異なればトラックのキャブに求められる要件も異なる。柔軟なキャブバリエーションは、快適性、エルゴノミクス、経済性に合わせたカスタマイズを可能にする。

 新型eアクトロス400の導入に合わせて、ディーゼル車で実績のある「Lキャブ」と、フラッグシップ系トラックに採用されて来た大型キャブ「プロキャビン」の両方が、eアクトロス400/600の両車で利用可能になると発表された。

 コンパクトで乗車位置が170mm低いLキャブは頻繁な乗り降りに適している。キャブの全幅は2.3メートルで「クラシック」と「ストリーム」スペース仕様を用意する。実用的な機能を備えつつ価格を抑えたLキャブは、軽量化にも効果があり価格に敏感な顧客にとって最適なソリューションだ。

 いっぽう、未来的なデザインのプロキャビンは車内で睡眠をとる必要がある長距離輸送のために最大限の快適性を実現したもの。2.5メートル幅のキャブに「ストリーム」「ビッグ」「ギガ」スペースの3つのバリエーションを用意し、エネルギー消費を抑えるため空力も考慮した設計となっている。

 リアビューミラーを代替するカメラシステムの「ミラーカム」は両方のキャブで利用可能な装備で、追い越し、操舵、視界不良、暗闇、コーナリング、狭い場所の通過など、より安全かつストレスなく運転できる。

 後退時の広角モード、後方の物体までの距離の推定、車両周囲の監視などの機能を備えるほか、安全装備とも連携しており、交差点などでディスプレイを通じて視覚的な警告を行なう。

ホイールベースとアクスル構成も拡充

ホイールベースやキャブバリエーションなど車型を大幅に拡充! メルセデス・ベンツの量産型バッテリーEV大型トラック第2世代【後編】
ダイムラーは第2世代のBEV大型トラックで車型の拡充を図っている

 また、BEV大型トラックのアクスル構成/ホイールベース(WB)等のバリエーションについても新型eアクトロス400の導入に合わせて大幅に拡大する。

 例えばeアクトロス400のWB3700mmトラクタ系は従来はなかった車型で、WBが短いため回転半径が小さく、狭いスペースでの操縦が楽になる。ボディ架装を前提とした単車系トラックではWBオプションは特に重要で、4×2では4000mmから6100mm、6×2では4000mmから5800mmのバリアントを用意する。

 車型の拡充はeアクトロス600にも及んでおり、将来的に4×2単車系に4000mm/5500mm/5800mmのWBを提供する。既に提供している4600mmと4900mmに加えて、6×2ではeアクトロス400と同様の4種類を新たに用意する。

 いずれもプロキャビンとLキャブの両方を利用可能としており、基本的な組み合わせだけでも車型展開は40に達するといい、WBの拡大だけを見ても、象徴的な意味合いが強かった「代表車型の電動化」から、BEV大型トラックの実用性を高めるフェーズに入ったといえそうだ。

 車両を電動化する本来の目的はCO2排出量の削減だが、eアクトロスシリーズはディーゼル版のアクトロスと比較して明確なCO2削減の可能性を秘めている。EUの現在の平均的な電力ミックスに基づくと、約40%のCO2削減が可能だという。

 仮に再生可能電力のみを使用した場合、10年間の車両ライフサイクルにおいて80%の削減が可能だ。再生可能エネルギーを使っても100%の削減にならないのは、製造時のCO2排出などのためで、特にバッテリーの製造は多量のCO2を排出する。

 eアクトロス600とプロキャビンの組み合わせで、セミトレーラをけん引する長距離輸送に使用した場合、ライフサイクルでは436トンから871トンのCO2削減になるという試算で、単車による長距離輸送の場合、同じく458トンから939トンの削減になるという。バッテリーパックが2つのeアクトロス400単車なら排出量はさらに22トン少なくなる。これは製造時のCO2排出が23%削減されるからだ。

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