MANのロジスティクス・パートナーであるVEGAは、新車トラックの輸送にMANのBEVトラックと鉄道を組み合わせている。MAN「eTGX」大型BEVトラクタは鉄道ターミナルから半径300kmの「ラストマイル」輸送を担っており、実証フェーズが成功したことで大量導入も予定されている
鉄道とBEVトラックというゼロ排出の輸送モードを組み合わせる「モーダルコンビネーション」は、年間で2700トンのCO2排出量を削減する理想的な組み合わせだという。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/MAN Truck & Bus
新車トラックを鉄道+BEVトラックで輸送
ドイツの大手商用車メーカーで、フォルクスワーゲンの大型商用車部門・トレイトンに所属するMANトラック&バスは、新車トラックの輸送において脱炭素化を着実に推進している。
同社にとって長年の物流パートナーであるVEGAインターナショナルと協力して、革新的なインターモーダル(複数の輸送手段を組み合わせる)コンセプトを採用した。主要区間を鉄道で輸送し、ラストマイルをバッテリーEV(BEV)トラックが担うというコンセプトだ。
もちろん使用するのはMANの大型BEVトラック「eTGX」で、この輸送モードの組み合わせにより、年間で2700トンのCO2を削減するという。
2台のeTGXによる実証フェーズが成功したことを受けて、VEGAはこの輸送コンセプトを段階的に拡大していく予定で、2026年末までにさらに30~40台のeTGXトラックを導入する計画だ。
MANトラック&バスのプロダクション&物流担当執行役員、ミカエル・コブリガー氏は次のように話している。
「VEGAは弊社のアウトバウンド物流において長年にわたり強力かつ革新的なパートナーでした。私たちは製品のカーボンフットプリントをさらに削減するため継続的に取り組んでいます。鉄道などゼロエミッションの輸送手段とBEVトラックを組み合わせることで、環境に配慮したサプライチェーンをスマートに実現できます」。
また、VEGAのCEOを務めるフランツ・ブルム氏は次のように話している。
「2台のeTGXトラックは、毎日異なるルートや荷降ろし場所に向かい、過酷な実運用を通じて貴重な経験を積んでいます。バッテリーによる航続距離と、これらの車両の実用性は素晴らしいものです。私たちはここで得られた知見をもとに、パートナー企業とともに更なる輸送ルートの電動化を進めて行きます」。
サプライチェーンの電動化ではBEVトラックが鍵に?
オスナブリュック近郊のライネ駅は貨物鉄道のターミナルで、VEGAは週に30~40両の新車トラックをここから運んでいる。配送用のeTGXは駅から半径300km以内の距離を純電動で走行しており、排出ガスは出さない。
新車トラックはポーランドのクラクフにあるMANの工場から鉄道で運ばれてきたものだ。鉄道も電化されており、輸送ルートの大部分は電気での輸送となる。
こうしたドイツ北西部への鉄道輸送はMANの「ライオン・エクスプレス」サービスの一部で、ドイツ方面とオーストリア方面の二つの路線で、物流パートナーと共同で鉄道の利用を徐々に拡大している。
プロジェクトを開始したのは2023年6月だといい、VEGAはこれまでに11,000台の新車トラックを輸送し、6000トンのCO2を削減した。ライオン・エクスプレスの2路線を合わせると22,000台のトラックを運んでおり、CO2排出削減量は10,400トンに及ぶ。
EU圏で一般的な大型車のサイズは、全幅2.55メートル、全高4.0メートルとなるが(国によって最大寸法は異なる)、この大きさを列車に載せるのは容易なことではない。VEGAは新車トラックを列車に載せる際の積載コンセプトに関する特許を取得しており、最大4.2メートルの高さのトラックを鉄道で輸送することを可能にしている。
新車輸送のラストマイルにBEVトラックを活用することで、工場から顧客まで物流全体が電動化された。
工場からの出荷(アウトバウンド物流)の電動化は、MANの長期的なサステナビリティ戦略でもある。2030年までに車両配送プロセスからのCO2排出を30%削減する予定で、そのためにラストマイル輸送の電動化、鉄道網の積極的な利用、他の分野(例えばスペアパーツ輸送)との統合などが計画されているという。


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