今年も5月21日~23日までパシフィコ横浜で「人とくるまのテクノロジー展」が開催される。同展示会にはいすゞ自動車とUDトラックスが初めて共同出展するとアナウンスされたが、その目玉として「エルフEVウォークスルーバン」が参考出品されることがわかった。
いすゞは、60年近く前からウォークスルーバンを開発しており、今回の「エルフEVウォークスルーバン」が市販されれば、いすゞのウォークスルーバンとしては5代目となる。「人とくるまのテクノロジー展」の話題とともに、歴代ウォークスルーバンの足跡をご紹介しよう。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/いすゞ自動車・フルロード編集部
いすゞの歴代ウォークスルーバン
商用車の「ウォークスルーバン」は、運転席から荷室への移動が立ったままできるウォークスルー構造を備えたもので、乗降が多い宅配事業の現場では利便性の良さから高いニーズがある。
トヨタ自動車とヤマト運輸が共同開発した「クイックデリバリー」(1984~2016年まで生産)はその代表格で、宅急便などで広く使用され、その姿を見たことがある人も多いと思う。
いっぽう、いすゞのウォークスルーバンは、各車とも販売的にはあまり振るわなかったので馴染みは薄いかもしれないが、実は、いすゞは古くからウォークスルー構造の車両に挑戦してきたメーカーなのである。
いすゞのウォークスルーの始まりは、キャブオーバー型が定着した60年代の後半に登場したセミボンネット型の「エルフハイルーフ」(トップ写真)である。
同車は1968年にフルモデルチェンジした2代目エルフのラインナップに受注生産で展開された。アルミボディの荷室高は1740mmで、大人が立ち上がって移動できることをコンセプトにした2トン積ウォークスルーバンだった。
その4年後の1972年にはエルフから派生したフロント駆動の「エルフマイパック」を発表。FFの特徴を活かし超底床化を実現したことに加え、シャシーはラダーフレームのA型シャシー、「コの字」型のフレーム(横方向のサブフレームを持たない)を持つZ型シャシーの2種類を設定するなど独創的なアイディアが詰まったクルマであった。
超低床を実現したマイパックはウォークスルー型をはじめ、容積型、超低床型、特殊用途型などさまざまなトラックに発展したが、商業的には成功とはいえない結果に終わった。
1982年12月には同年9月に登場したトヨタ・クイックデリバリーに対抗し、ボンネットタイプのウォークスルーバン「ハイパックバン」を発売。同車はいすゞのピックアップトラック「ファスター」のシャシーやSUV「ビッグホーン」(初代)のフロントグリルなどを使って仕立てられた。
荷室高は1790mmと高く、エルフ ハイルーフ以来の本格的なウォークスルーバンとなった。
1996年には、セミボンネットタイプのいすゞエルフ UTが登場。ただ、ウォークスルーはオプションボディという設定で、中途半端な「セミウォークスルー」であった。集配車としては売れず、おしゃれ系の商用車やキャンピングカーなどに活路を求めることになった。
2001年の東京モーターショーでエルフUTの教訓から集配用に特化したウォークスルーバン、「ビギン」を発表。2002年から発売を開始し宅配各社に導入を図るも、販売は伸びず。2004年には生産が終了し、わずか2年の短命モデルとなった。
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