1975年にフィアットの商用車部門として始まったイタリアのイヴェコは今年で創立から半世紀だ。これを記念して2025年6月12から15日にかけてホームタウンのトリノで4日間のセレブレーションが行なわれた。
このイベントでBEV大型トラック「S-eウェイ」の新型となる「S-eウェイ アーティック」が初公開された。電動の大型トラックで提携していた米国のニコラは2月に破産を申請しておりイヴェコへの影響が懸念されたが、新型車も発表されS-eウェイシリーズの拡充は続けられるようだ。
また、小型商用車としてステランティスと共同開発したBEVの「eジョリー」(GVW2.8~3.2トン)と「eスーパージョリー」(同3.5~4.25トン)も併せて公開された。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/IVECO SpA
長距離輸送も可能なBEV大型トラクタ「S-eウェイ アーティック」
昨年の「S-eウェイ」リジッド系のローンチに続いて、イヴェコは最新のバッテリーEV(BEV)大型トラックとなる「S-eウェイ アーティック」を2025年6月12日に公開し、輸送のゼロエミッション化に向けた取り組みをさらに前進させた。
地場輸送から長距離輸送まで可能なBEVトラックだといい、航続距離は最大600kmとなる。なお「アーティック」は連接トラック(アーティキュレーテッド・トラック)を意味し、セミトレーラを連結するけん引用トラクタを指す。
イヴェコの新しいBEV大型トラックは、ディーゼル車の「S-ウェイ」で実績があるシャシーにゼロエミッション技術を組み合わせたもの。最先端のLFPバッテリーによりBEVトラックにおける耐久性と信頼性に新たなベンチマークを確立し、脱炭素の取り組みを加速しながら生産性と運行効率を向上しなければならない運送会社にとって効果的なソリューションになるという。
同社で製品ポートフォリオ管理者を務めるジュリアーノ・ジョバンニーニ氏のコメントは次の通りだ。
「新型S-eウェイ アーティックにより運送会社様のニーズを満たす、実用的なソリューションを提供します。お客様においては脱炭素化のプレッシャーが高まっており、このミッションを成功させるとともにビジネス目標をも達成可能なソリューションが必要とされています。このトラックは、確かな技術と信頼できるサポートを提供することでお客様と共に歩むという当社のコミットメントを反映したものです」。
新型S-eウェイ アーティックは2026年中に納車を開始する予定だ。
FPT製eアクスルと総容量603kWhのLFPバッテリー
S-eウェイ アーティックは長距離輸送の厳しい要件を満たすように設計され、フル充電から最大600kmの走行が可能だ。これにより地場輸送から長距離輸送まで、実用的なディーゼル車の代替手段となる。
その中心にあるのがイヴェコグループのFPTインダストリアルが開発した最新型のeアクスル(電動アクスル)だ。シャフトを介して駆動する従来のドライブラインに特有のエネルギー損失を排除しつつ、連続出力で最大480kW(約650hp)を発揮する。
そのeアクスルを後軸に配した4×2構成のS-eウェイ アーティックは、前・後軸のフルエアサスにより優れた乗り心地とハンドリングを実現するとともに汎用の電動アーキテクチャを備え、ePTO(電動PTO)による冷蔵冷凍トレーラなどにも対応できるそうだ。
駆動系と共に電動化の中心にあるのが最先端のバッテリー技術で、S-eウェイ アーティックには3つのLFPバッテリーパックが搭載される。総エネルギー容量603kWhのうち97%が利用可能なバッテリーにより、欧州のBEV大型トラックとしてクラス最高の航続距離を実現した。
20%から80%までの充電時間は350kWのDC急速充電により60分。最適なバッテリー温度を維持するため温度管理システムを備え、外気温がマイナス30度から45度の幅広い気候条件でパフォーマンスを保証するという。
この新世代LFPバッテリーは12年間で70%の容量を維持するように設計されており、イヴェコでは最大10年/120万kmという業界最高水準の耐久信頼性を保証している。
もちろん既存のセミトレーラを連結でき、旋回半径は従来と同等を確保した。長距離輸送向けに空力を改善するためトレーラの連結を前提にした細長い「エアロキャブ」を導入。外観は従来のS-eウェイシリーズの燃料電池電気自動車(FCEV)「S-eウェイ フューエル・セル」に近い。
3932mmのホイールベースは、大型のバッテリーパックを搭載するためのスペースを確保しつつ、車体の構成と荷重配分の柔軟性を高め、操縦安定性を向上するためのバランスを考慮したものだという。
キャブ内のレイアウトやデザインはディーゼル版と共通で、親しみやすさと使いやすさに配慮した。HMIクラスターは電気駆動専用に追加された装備で、リアルタイムのEVデータが表示され、エネルギー使用量やパフォーマンスなどドライバーが電気駆動を制御するのに役立つ。
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