フォルクスワーゲンの商用車部門、トレイトングループがバッテリー事業を強化している。
MANはバッテリーパックの社内製造を開始し、さらにバッテリーモジュールを内製化するための追加投資を発表した。また、同グループのスカニアもノースボルトの事業を買収し、電動化の中核的な技術となるバッテリー分野での競争力を強化する。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/MAN Truck & Bus・Scania CV AB
MANがバッテリーパックの自社製造を開始
ドイツの大手商用車メーカーでフォルクスワーゲンの商用車部門・トレイトングループに属するMANトラック&バスは2025年4月11日、同社ニュルンベルク工場でのバッテリーパックの自社生産を正式に開始した。
また、バイエルン州首相などを招いた式典で、現在の1億ユーロ(約162億円)の投資に加えて、今後数年間で1.5億ユーロ(同243億円)をバッテリー技術分野に追加投資することが発表された。具体的には、バッテリーパックの製造に加えて、バッテリーモジュールの製造もニュルンベルクで行なうことになるという。
(自動車用バッテリーは、大雑把に言うと「バッテリーセル」から「バッテリーモジュール」を作り、これを組み合わせて「バッテリーパック」を製造している)
全体として約400人の雇用が確保されるとともに、エンジン・鋳造・物流などの分野で働いていた従業員も再訓練によりバッテリー分野に切り替えることができるそうで、同社のCEOを務めるアレクサンダー・フラスカンプ氏は次のよう話している。
「ディーゼルエンジンを発明した企業であるMANにとって、本日は記念すべき日です。私たちは、ニュルンベルクでこれまでに築き上げてきたものを非常に誇りに思っており、環境にやさしい駆動システムのために、ニュルンベルクに1.5億ユーロを追加投資します。
次世代バッテリーへの合計2.5億ユーロに加えて、最先端のディーゼル技術にも力を入れており、内燃エンジンを含めた(ニュルンベルク工場への)総投資額は5億ユーロに達します。これは、ここがイノベーションの中心地であることへのMANの明確なコミットメントです」。
MANのバッテリーパックの生産ラインは、新型のD30型ディーゼルエンジンに続き今年ニュルンベルク工場に開設された2番目の生産ラインだ。
MANは欧州では2030年までにトラック・バスの90%にゼロ・エミッション駆動技術が搭載されると想定するいっぽう、それ以降も依然として高効率エンジンは必要とされると予想している。トラック用としてはD30型を「最後の世代」としているが、船舶用などMANの「外部エンジン事業」ではエンジンプラットフォーム/シリーズを長期的に提供していく予定だ。
ニュルンベルク工場で製造するバッテリーパックには3つのフォームファクターがある。そのうちの一つ(フラット型)はバス向けで、残り2つはトラック向けだ。
MANはBEVトラックとして「eTGL」「eTGS」「eTGX」による総重量12~50トンをラインナップしており、自社製のバッテリーパックはこれらのトラックに搭載されることになる。なお、大型車のeTGSおよびeTGXの製造開始は2025年6月を予定している。年間で5万基のバッテリーパックを製造可能だが、BEVの需要に応じて生産規模を拡大する計画だ。
現在、自動車向けリチウムイオンバッテリーは、正極材にニッケル・マンガン・コバルトを使用するNMCバッテリーと、リン酸鉄を使用するLFPバッテリーの2種類が優勢だが、MANが採用するのは商用車向けに特化して開発したというNMCバッテリーだ。
同社のバッテリーパックの製造面で最も重要なハイライトはモジュラー生産方式だといい、これは同じラインが(ベルトコンベアなどを追加することなく)多様なバリエーションに対応し、新しいバリエーションが追加された場合も容易に適応できることを意味している。
また、他の製品と同様、品質と安全性を最優先するため100%最終検査を行なっている。製造終了時にソフトウェア試験、充放電などの電気試験、リーク試験とデータの確認などを行なう。各バッテリーが23の試験プログラムにかけられ、15年経っても製造工程を追跡できるように約400の試験パラメータを個別に記録するそうだ。
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