プロ同士のランプによるコミュニケーションとは? 【知られざる長距離ドライバーの暗黙のルール】

プロ同士のランプによるコミュニケーションとは? 【知られざる長距離ドライバーの暗黙のルール】

 一口にトラック運送業界といってもその範囲は広く、海コンなら海コン、長距離なら長距離、引越しなら引越しといった具合に、いろいろとその業界独自の決まりやルールがあります。

 今回は長距離ドライバーのひろしさんに、プロ同士のランプによる暗黙のコミュニケーションを教えてもらいました。

 「そんなの必要ない」「そもそも違法では?」なんて声も聞こえてきそうですが、いやいや、あおり運転をはじめとする交通トラブルが多発する今、顔の見えないクルマ同士だからこそ、さりげない意思の疎通って大事なのでは……。

文/長距離ドライバー・ひろしさん、写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
*2024年12月発行「フルロード」第55号より

ウインカーを利用したサインとは?

プロ同士のランプによるコミュニケーションとは? 【知られざる長距離ドライバーの暗黙のルール】
ベテランになれば、その車両がどう動きたいか把握することも……

 運転手間での暗黙のルールというか、教習所では習ってないのに、何故かほとんどの運転手が知っていて多用しているアレ。俗に言う「サンキューハザード」の類の話です。

 高速走行中や合流時、譲ってもらった際のハザードランプは一般の人にも広く知れ渡っているので説明不要ですよね。「道交法では……」という話は置いておいて、サンキューハザードで嫌な気持ちになることはありません。多少強引に割り込まれても、「まーいいか」的な気持ちになります。

 ここではプロが高速道路走行時に「あうんの呼吸」で多用する、ウインカーを利用したサインについて書きましょう。

 追越し車線走行時の右ウインカーは、乗用車では「先に行かせろ」的な意味あいで広まっていると思います。遅いトラックを一般車が右ウインカーあげて煽っている状態をよく見ますが、それとは意味が違います。

 ベテランになってくると、その車両が今どう動きたいのかなんとなくわかりますが、走行車線が詰まっていて、追越し車線に出たそうな車両を見つけたとします。夜ならばライトカットして「前に入っていいよ」とサインを送るのですが、昼間はできないので代わりに右ウインカーを使用して「前に入っていいよ」とサインを送るのです。

 同じテクニックが高速の合流部で走行車線を走っていて追越し車線は車両が詰まっている、さらに左から車両が合流して来るって場合も同じ使い方ができます。

 高速の本線合流までの車線が極端に短い時などにも応用が効きます。追越し車線走行時に「前に入っていいよ」サインを出す場合は右ウインカーでしたけど、合流部の走行車線で前に入れてあげる場合は左ウインカーをあげます。

「あうんの呼吸」で決まった瞬間の気持ちのよさ

プロ同士のランプによるコミュニケーションとは? 【知られざる長距離ドライバーの暗黙のルール】
最近はLEDのリアコンビネーションランプの種類も多様になってきている

 こうして文字に起こして読んでみると複雑に見えますが、僕が「決まったな!」と思った時の話があります。

 新東名下り静岡あたりだったかな? 深夜に走っていて僕は第一走行車線、僕のほぼ真横の第二走行車線にも大型車両、追越し車線は空いていて、インターから高速バスが本線に合流して来るってタイミングでした。その時3台ともほぼ横並び状態です。

 それを察知した隣の大型が追越しにズレ、僕が第一から第二に、バスは本線に合流しました。バスが合流したのを確認して、僕はバスの前の第一走行車線に戻り、追越しに入った大型は追越しから第二、そして第一走行車線へと車線変更して戻って来ました。

 合流して来たバスはマナーとして僕ら大型2台が第一走行車線に戻って来るまで第一走行車線で待機、僕らの車線変更を確認した後に追越し車線に出て、ハザードあげてかっ飛んで行きました。

 サインでのやり取りは、まさにプロ同士の「あうんの呼吸」で、その時は「決まったな!」って感じで気持ちよかったですね

 それでも最近は暗黙のルールを知らない運転手も増えたみたいだし、「本来の意味とは違う」って意味で推奨されないのかも知れません。これも時代の流れなのでしょうか? 

 「街道仁義」などの言葉も、時代の流れと共にいずれは消えていくのでしょうね。

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