世界でも大手の商用車グループの一つであるトレイトン(フォルクスワーゲンの大型商用車部門)は、トラックの自動運転分野で米国のプラスとの包括的パートナーシップを発表した。
スカニア、MAN、インターナショナルなど傘下のブランドが、大規模物流拠点間の幹線輸送(ハブtoハブ輸送)において自動運転トラックの商用化を目指す。時期尚早とも思われた自動運転技術だが、実証段階が過ぎ、本命とされるトラック分野での実用化に向けて開発が加速している。
今回の発表は欧州と北米市場のものとはいえ、「2024年問題」でとりわけドライバー不足が深刻な日本市場も自動運転トラックの激戦区となりそうな予感がある。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/TRATON Group・Scania CV・MAN Truck & Bus・Navistar Inc.
トレイトンとプラスが自動運転トラックで包括提携
フォルクスワーゲングループの商用車部門であるトレイトンは2024年3月12日、自動運転システムを開発している米国のプラス社との包括的開発パートナーシップを発表した。
併せてトレイトン傘下のスカニア、MAN、ナヴィスターが、それぞれプレスリリースを発出しており、プラスとの提携を通じて、各ブランドが自動運転トラックの実用化に向けた取り組みを加速する。
スカニア、MAN、ナヴィスター、およびプラスは共同で「SAEレベル4(L4)」相当の自動運転ソリューション(特定の条件下での完全な自動運転システム)を開発する。それぞれのブランドが、この技術を商用化するための次の段階として最初に焦点を当てるのが「ハブtoハブ輸送」、つまり大規模物流拠点(ハブ)間の幹線輸送だ。
ハブ間の長距離輸送が自動化されると、運行コストの低減や効率化によるCO2の排出削減とともに、道路の安全性も向上するという。
また、日米欧を始め世界中で「ドライバー不足」が課題になっているが、モーダルシフト等の取組にも限界があり、現在のトラック輸送をそのまま無人化できる自動運転技術は、商用車においてこそその真価を発揮する。いわば自動運転技術の本命は乗用車ではなくトラックなのだ。
特に日本では働き方改革による「物流の2024年問題」があり、その緩和策としても期待がかかる。
なお自動運転車の運行に関しては、ドイツでは2021年の法改正で、日本では2023年の道路交通法改正で一定の要件の下、L4相当の自動運行が可能になっている。
商用車で真価を発揮する自動運転
自動運転システムを開発するメーカーも商用車分野に力を入れており、日本では昨年TuSimple社が東名高速道路でのL4自動運転大型トラックの走行試験に国内で初めて成功している。
世界の大手商用車グループでは、ダイムラー・トラックが2019年に自動運転システムのトルク・ロボティクス(米国)を買収しており、グループ内の独立会社となった同社とのパートナーシップの下で自動運転技術の開発を進めている。
ダイムラーは2022年にファーストマイル/ラストマイル輸送を人間のドライバーが担い、ハブ間の長距離輸送を自動運転が担うというコンセプトを発表しており、10年以内(当時)に実用化するとした。
いっぽうボルボとパッカーの両グループはオーロラ・イノベーション(米国)と提携している。オーロラはコンチネンタルと共同で2027年にもトラック自動運転システムを量産化すると発表しているほか、ボルボは米国でウーバー・フレートと提携し自動運転による貨物ネットワークを構築するという。
同じく米国のプラスは、これまでにイヴェコやニコラとの提携を発表していた。ナヴィスター及びトレイトン・グループは2020年にTuSimpleと提携したが、同社の中国企業との関係などが米国で問題になり、2022年に提携を解消、その後TuSimpleは米国市場から撤退した。そしてこの度、トレイトンとプラスが提携という運びである。
これにより世界の商用車大手3グループはいずれも米国の自動運転システムメーカーと提携することになった。
ちなみにトレイトン傘下のブランドではスカニアが日本市場でトラックを販売しているほか、三菱ふそうはダイムラーの子会社で日野は同社と提携交渉中。いすゞ及び傘下のUDトラックスはボルボと提携している。日本ではTuSimpleも事業展開しているため、2024年問題で特にドライバー不足が深刻な日本市場は、自動運転トラックの激戦区となるかもしれない。
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