「青森県産りんごのモーダルシフト」に第26回物流環境大賞！　トラックドライバー不足でモーダルシフトが再注目？

　第26回「物流環境大賞」は日本通運・JAつがる弘前・日本貨物鉄道の「青森県産りんご モーダルシフトの取り組み」に決定した。

　物流の「2024年問題」でトラックドライバー不足が深刻化するなか、鉄道や船舶へのモーダルシフトが改めて注目されている。特に農産物の大規模モーダルシフトは前例が少なく、荷主と物流事業者が一体となった取り組みは、CO2の排出削減と併せて高く評価された。

文／トラックマガジン「フルロード」編集部
画像／NIPPON EXPRESS HOLDINGS・トップ画像／写真AC

2025年の「物流環境大賞」が決定

　一般社団法人 日本物流団体連合会（物流連）はこのほど、第26回目となる「物流環境大賞」の受賞者を決定した。同賞は物流部門における環境保全の推進や環境意識の高揚を図るため、物流の健全な発展に貢献した団体・企業・個人を表彰する制度だ。

　大賞には「青森県産りんご モーダルシフトの取り組み」が選ばれた。これは、日本通運とつがる弘前農業協同組合、日本貨物鉄道などによる取り組みで、青森県から全国に向けて発送されるリンゴを、トラック輸送から鉄道輸送に切り替えた大規模なモーダルシフト案件だ。

　CO2の排出削減量が大きいことに加えて、農産物の大規模モーダルシフトは例が少ないこと、出荷が収穫時期に集中しがちな農産物輸送において出荷の年間平準化に取り組んでいること、荷主と物流事業者が一体となって「2024年問題」に対応していることなどが評価された。

　ブランド力のある青森県産リンゴは全国各地に出荷され、遠距離の輸送比率が高い。そのためトラックより長距離の輸送に適した鉄道輸送を導入することで、CO2排出量を87％削減できた。

　また、鉄道の輸送障害に備えて日本通運のモーダルコンビネーションサービスであるSea＆Rail輸送網を活用し、関西・九州間で船舶を一部利用している。

　物流連によると、今回の物流環境大賞には過去最高（32件）に近い31件の応募があり、モーダルシフトの他にトラックの積載率向上や労働負荷軽減を目指したもの、荷役や配送スケジュールの改善、先進技術を活用した取り組みなど様々な応募があったという。

　大賞のほか、「低炭素物流推進賞」3件、「サステナブル活動賞」3件、「先進技術賞」3件、「日本物流記者会賞」1件、「奨励賞」20件など多数の賞の贈呈が決定している。表彰式は2025年6月30日に東京プリンスホテルにて開催される予定だ。

各賞を受賞した日通の取り組み

　なお、日本通運は大賞以外にも先進技術賞と奨励賞3件を受賞している。各賞を受賞した日本通運の取り組みは次のようなものだ。

NXスーパーエクスプレスカーゴ （先進技術賞）
受賞者：日本通運株式会社、株式会社ジェイアール東日本物流

　JR東日本物流が提供する新幹線を使った荷物輸送サービス「はこビュンQuick」と、日本通運の集配ネットワークを組み合わせた即日配達サービスで、新たな即日輸送の手段として小口貨物分野の環境負荷低減が期待されている。

　JR東日本の新幹線主要駅相互間を対象とし、10kgの荷物を輸送する場合、トラック輸送と比較してCO2排出量を約94％削減できるという。

愛知県～福岡県、広島県、山口県の自動車用塗料の鉄道輸送への転換（ISOタンク利用） （奨励賞）
受賞者：日本通運株式会社、日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社

　自動車用塗料のモーダルシフトに取り組んだもので、貨物駅での一時保管サービスを活用することにより、従来のタンクローリ輸送時には難しかった、納入の急な延期等にも柔軟に対応することが可能となった。2024年問題への対応のため荷主や納入先を含めた関係者間で綿密な調整を行ない実現に至った。CO2排出削減量は71％だ。

NXダイレクトコンソリデーションサービス ～内航船を利用した九州、山口地区発の輸出混載貨物の新サービス～ （奨励賞）
受賞者：日本通運株式会社

　北米や欧州向けの輸出混載貨物を中心に、従来、博多港から神戸港までトラックで転送していた貨物を、東京港までの内航船にモーダルシフトしたもの。環境負荷の低減だけでなく、リードタイムの短縮や海外港での中継回数の減少による輸送品質の向上、さらに30％以上のコスト削減も実現した。CO2排出量は77％削減が可能となった。

NXダイレクトフィーダー ～内航船で輸入貨物を地方港まで海上輸送～ （奨励賞）
受賞者：日本通運株式会社

　従来、陸上ドレージ輸送されていた輸入貨物を対象に、内航コンテナ船によるモーダルシフトを実施したもの。NXグループの国内ネットワークで最終配達先まで一貫輸送が可能。これまで使用後の空バンは京浜港へ返却する必要があったが、この取り組みにより地方港での返却が可能となり、例えば東京港から山形市へドレージ輸送した場合と比較すると、59％のCO2排出量削減となる。