オランダ・アイントホーフェンの自動車メーカー・DAF(ダフ)は、トラックの製造を開始して75年を迎えた。乗用車ではCVT(無段変速機)の実用化などで知られる同社だが、現在は商用車専門。
技術革新の歴史を振り返るとともに、フラッグシップトラックの「XGプラス」にスペシャル・エディションを設定し、75周年を祝っている。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/DAF Trucks NV
トラックを製造して4分の3世紀
あと4年で創立から100年となるオランダのDAFだが、トラックの製造を始めたのは1949年だ。
トラックメーカーとしての75周年(4分の3世紀)に当たる2024年、同社の記念碑的なモデルを紹介し技術革新の歴史を振り返るとともに、フラッグシップの「XGプラス」に75周年のスペシャル・エディションを設定した。
DAFの前身企業であるファンドールネ機械工場はヴィム&フップ・ファン・ドールネ兄弟が1928年に創業した。1930年代にトレーラ(被けん引車)の製造を初め、当時主流だったリベット留めではなく溶接構造とした軽量シャシーが評判を呼び、社名はドールネトレーラ工場(Van Doorne Aanhangwagenfabriek)に、さらにそれを略してDAFとなった。
第二次世界大戦後、欧州復興のためにトラックの需要が急増し、トレーラの製造ラインはトラック用に転換され、1949年にDAF初のトラック「A30」が誕生した。3トン積みの同車は、7本のクロームストライプのグリルが特徴的だった。
続いて5トン車の「A50」、6トン車の「A60」や、1トントラックの「A10」とその派生形のピックアップ「A107」を発売。ダンプや塵芥車用の特装シャシー、軍用車がこれに続き、トラックブランドとしてのDAFはすぐに認知された。
当時のトラックは、一般的にシャシーとエンジン+グリルの状態でラインオフとなり、キャブとボディは架装メーカー(コーチビルダー)が製造していたが、1953年にDAFが独自のキャブを製造するようになり、トラックの製造工程は一変した。
このころディーゼルエンジンも内製化しており、高馬力・高効率化のために初めてエンジンにターボコンプレッサーを追加した。
なお、DAFは1950年代にはベルト駆動の無段変速機(CVT)を開発し、乗用車(DAF 600)に搭載している。量産車へのCVTの搭載は世界初で、DAF乗用車の代名詞となったが、1970年代に乗用車部門が売却され、現在は商用車専門となっている。
各世代の記念碑的モデル
1957年の「DO」は10トンリアアクスルと、特徴的なデザインが注目された。大型トラックによる重量物の国際輸送が一般化しつつあり、第2世代型ではキャブに簡易ベッドを備えていた。これは当時としては目新しい装備だった。
欧州で国境を超える長距離輸送が当たり前になった1960年代には、角ばったキャブで内部のスペースを最大化した「2600」を導入。何週間も自宅を離れ、トラックのキャブ内で寝起きするトラックドライバーの快適性を考えたものだった。
1970年代、F1600~F2200シリーズでキャブを傾けてエンジンへのアクセスを改善するチルトキャブを導入。エンジンの上にキャブを載せるCOE(キャブ・オーバー・エンジン)式トラックの課題を解決し、メカニックはエンジン整備が容易になった。
また、2600は後継の「2800」や「3300」「3600」などでさらに快適性を追及するとともに、高馬力と省燃費という相反する要求から、主要メーカーとして初めてディーゼルエンジンにターボインタークーラーを導入した。
オランダは欧州の中でも大柄な人が多く、1980年代の「95」ではエクストラハイルーフの「スペースキャブ」によりドライバースペースをさらに拡大(その後、「スーパー・スペースキャブ」も導入)。中距離用には「65」「75」「85」が投入された。
95は「95XF」を経て「XF」になり、中距離用は「CF」に統一された。また地場輸送用の「LF」は、傘下のレイランド・トラックス(イギリス)が開発したものだ(DAFはかつてレイランドのグループ会社だったが、ブリティッシュ・レイランドの破綻時にMBOにより独立し、逆にレイランド・トラックスを傘下に収めている)。
環境性能が重視されるようになった2010年には「LFハイブリッド」を初めて市場に投入している。電動の「CFエレクトリック」の導入は2018年で、欧州メーカーとして初の完全電動トラックだった。
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