小型トラックなのに総重量12.5tの3軸車!? なんとびっくりトルコには大型トラックのエルフがあった!【世界を走る日本のトラック】

小型トラックなのに総重量12.5tの3軸車!? なんとびっくりトルコには大型トラックのエルフがあった!【世界を走る日本のトラック】

 日本のトラックは海外でも数多く用いられています。日本とは異なる環境、国情、法規から、いっけん国内で使われているクルマと似ていても、大きく違った「日本車」な場合もあります。「世界を走る日本のトラック」では、そんな日本生まれ、場合によっては日本で生まれてもいない海外向けトラックをご紹介します。
 
 まずはいすゞ自動車とトルコ・アナドール社の合弁会社であるアナドールいすゞが現地生産している同国市場向け「エルフ」です。日本ではエルフは小型トラックの代名詞というのが通り相場ですが、なんとびっくり、こちらでは大型トラックのエルフがあるんです。車両総重量(GVW)12.5tの異色モデル「NPR3D」をご紹介しましょう。

文/緒方五郎 写真/いすゞ自動車、その他

【画像ギャラリー】顔は同じでも中身は別モノ!? トルコ版いすゞエルフのバリエーションをチェック!!(5枚)画像ギャラリー

アナドールいすゞとは

見た目は小トラ、中身は大トラなトルコ版いすゞエルフ「NPR3D」
見た目は小トラ、中身は大トラなトルコ版いすゞエルフ「NPR3D」

 いすゞ自動車は、早くから大手総合商社と連携して、積極的に海外展開を進めてきたトラックメーカーです。海外進出の形態はさまざまですが、トルコの場合、現地の大企業・アナドール社傘下の自動車製造会社であるアナドール・オート・サナイ(AOS)にいすゞと伊藤忠商事が出資、合弁商用車メーカーとして1984年に「アナドール・いすゞ・オートモティブ(AIOS)」を設立したのが始まりです。

 AOSでは、チェコスロバキア(当時)のシュコダがトルコ市場専用に開発した小型ピックアップトラック「シュコダ1203SA」などを生産していましたが、AIOSになってからは、「エルフ(Nシリーズ)」に相当する小型トラック「NPR」の生産へと切り替えられ、いすゞの高品質・高効率な生産技術の導入も進められました。

 ほどなく、いすゞのピックアップトラック(当時は「TF」、現在は「D-MAX」)、中型バス(AIOS独自モデル)などの生産も始まり、Nシリーズの車型バリエーションも追加されていきました。いまでは「フォワード」に相当する中型トラック「トラ」や、大型路線バス・大型連節バス(AIOS独自モデル)に至るまで、ラインアップを拡大しています。

 なお、トルコの自動車法規は現在、欧州Euro規格に準じているため、車両もそれに則って生産されています。

エルフの大型トラック

 トルコの現行型Nシリーズはすべてワイドキャブ・前輪リーフサス固定軸で、GVW3.5t車の「N-ワイド」(NNR)、GVW7.5t車の「NPR」、GVW9.8t車の「NPR10」、そして今回紹介するGVW12.5t車の「NPR3D」があります。最近までハイキャブGVW3.5t車の「NLR」や、ワイドキャブGVW9t車の「NQR90」も展開していましたが、いまは消えています。

 さて、このGVW12.5t車「NPR3D」は、なんと6×2駆動、後輪が大型トラックのように2組ある「エルフ」の3軸車で、世界のエルフ/Nシリーズでもかなり異色の存在です。

 GVW11tを超える車格なので、日本で「NPR3D」を運転するには大型免許が必要ですが、トルコの免許制度でもGVW12t以上のC免許が必要となるので、まさに「エルフ/Nシリーズの大型トラック」といえるでしょう。

 初登場は2002年で、当時は「NQR3D」というモデルでした。コンセプトは、NQRに3軸目を追加して積載量8940kgを確保! さらに積めます稼げます! という単純明快なものでした。

 2010年のフルモデルチェンジ時にいまの「NPR3D」へ改められましたが、これは現行型エルフ/Nシリーズの開発時に車型展開を再構築したためで、フレーム組幅850mmシャシーやGVW12tクラスという車格は変わっていません。

 「NPR3D」のキャブ付シャシーのサイズは、全長7088mm×全幅2040mm×全高2275mm。これは「NPR10」のロングホイールベース車よりも約200mmほど長く、5235mmという荷台長もプラス約200mmとなっています。日本のエルフNPRでいえば、「超ロングボディ」より少し長いサイズ感だといえるでしょう。

 ちなみに、日本仕様とはタイヤサイズなども異なるため、荷台がフルフラットローなのか高床なのかというと「どちらでもない高さ」になるのではと思われます。

 後2軸のうち駆動軸は前側で、後側は非駆動のデッド軸・シングルタイヤとなり、後輪にかかる荷重を分散しています。リーフサスのみでリフトアクスル機能はありません。ただ現地には、2軸4×2トラックを3軸改造するサードパーティー企業も存在しており、「NPR3D」の場合はリフトアクスル改造を行なうことがあるようです。

 エンジンは「4HK1-TCS」型・5.2L直列4気筒ディーゼル・ターボインタークーラー付で、最高出力190hp・最大トルク510Nmを発生。コモンレール高圧燃料噴射装置やクールドEGR、排ガス後処理装置に尿素SCR+DPF、さらにOBD(車載診断装置)も装備しており、最新排ガス規制Euro-6eに適合させています。いっぽうでトランスミッションは6速マニュアルとの組み合わせのみです。

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