主にビデオゲームの開発に用いられる「ゲームエンジン」だが、このたび米エピックゲームズの「UE」を使用してシリコンスタジオが開発し、日野自動車に納品したのは、自動車のデザイン評価を目的とした走行シミュレーターだった。
ゲームエンジンの活用により、比較的簡単に実際の交通ルールや対向車の影響等を考慮した車両挙動をモデル化して実装することができ、自動車産業も期待を寄せている。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/日野自動車・フルロード編集部
画像/シリコンスタジオ株式会社
「UE」利用の走行シミュレーターを開発
エンターテインメント業界を中心に、自動車、映像、建築など、さまざまな業界向けにデジタルコンテンツ関連ビジネスを展開するシリコンスタジオは、2024年2月14日、日野自動車に対し、デザイン評価を目的とした走行シミュレーターを開発、提供したことを発表した。
日野自動車の委託を受けて開発した走行シミュレーターは、米Epic Games社のゲームエンジン「Unreal Engine(アンリアルエンジン)」を使用して開発したのが特徴だ。
「ゲームエンジン」はコンピューターグラフィックスによるアプリケーションやコンテンツ開発において必要なライブラリやツールなどの機能がまとまった統合開発環境のことで、高品質な3Dグラフィックスを比較的簡単に作成できる仕組みが揃っているため、近年はビデオゲームの開発以外にも自動車や建築、製造業など産業分野での活用が進んでいる。
このシミュレーターにより、仮想空間で実際の交通ルールや対向車の影響などを考慮しながら走行する自車のデザイン評価が可能になるという。
走行するクルマや建物、道路標識や信号機、横断歩道や停止線といった道路付属物などは自社開発による3Dモデルのアセットを用いて道路シーンを作成した。その後、第2フェーズとして高速道路のサービスエリアを含むシーンも作成し、日野自動車に納品した。
作成したシーンには、自動走行するための走行ルートパスと車両の挙動モデルを実装した。これにより自車と他車、並びに他車同士が衝突することなく物理シミュレーションによって自動走行する様子を確認することができるようになっている。
車両の挙動モデルは、衝突回避ブレーキの発動距離、停止後のブレーキ解除およびアクセルのタイミングなど、Unreal Engineのロジックを組み合わせている。さらに、車種ごとの特性に合わせて調整を繰り返した。
既存の多機能な交通シミュレーターよりも簡易的でありながら、時間帯による日照条件や天候変化の反映、コントローラーを使ったフリードライビングモードなども実装した。これらはゲーム開発におけるリアルタイム3DCG技術の応用で実現したものだという。
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