今回は残念ながらDC09エンジン搭載車の試乗はできませんでしたが、DC13エンジン搭載車の空積載状態と10tの積載状態の乗り比べができたので、これをリポートさせていただきます。
まず試乗したのは、Rデイキャブノーマルルーフ車で、ウエイトを積んだ車両です。同乗のスカニアスタッフの指示のとおりにシートとステアリングポジションを決めて、スタートする順番を待ちます。
おそらくユーザーの立場として気になるのは、エンジンの能力もそうですが、トランスミッションのシフト能力やクラッチの制御ではないでしょうか。ただ単にアクセルを踏んで加速してブレーキを踏んでといった単調な試乗ではなく、ギアシフトのスムーズさと、極低速時における半クラッチの制御、坂道発進のアシスト能力、リターダ使用時の減速能力を存分に体感することが目的です。
スタートの順番が来て、少しアクセルを踏みます。すると積載状態で、しかも6×2の駆動方式であるにもかかわらず、車体がピッチングを起こすこともなくスムーズに、しかもゆっくりと加速していくではありませんか。メーカーによってはどうしてもピッチングを起こす車体もありますし、積載状態では発進時の半クラッチの制御にまだまだ改善の余地があると思われるものもあります。しかしスカニアにはそれがありません。
私はアクセルペダルを踏み込んでいくのではなく、最初の踏み込み位置から変えておらず、クルマの走りたいように走らせているという感じです。エンジンの回転が上がり、1300rpmで次のギアにシフトアップしますが、ギアシフトはもたつくことなくサクッと変速します。このときのクラッチ制御も見事なもので、実にスムーズな繋がりを感じます。シフト時に、これまた車体がピッチングを起こしていないことがその証拠でしょう。
次のシフトアップにもギクシャクした動きは現れず、エンジンは静かに回転を上げ加速していきます。コーナーが続くワインディング部分に近付きました。スタッフの指示に従い、リターダレバーを手前に引き、フットブレーキを踏まずにリターダのみで減速を行ないます。
リターダは目一杯効かせるのではなくてハーフポジションでの使用ですが、昨今のエンジンリターダやパワータードといったエンジンの構造を利用したものではなく、液体式リターダをプロペラシャフトに装備しているので、かなりの減速力が発揮されます。50㎞/hあたりまで乗っていた速度がリターダのみで一気に30㎞/hまで減速されます。
コーナーをいくつかクリアしていきますが、ローリングも殆ど起きません。載せてあるウエイトはそれなりの高さがあるものですが、スカニアの車体そのものがあまりロールを起こしていません。またRキャブというかなり大きなキャブでありながら、キャブ部分のみがロールを起こすことも無く、安定した足回りであろうかと思います。
連続したコーナーと軽いアップダウンが続き、それから上り坂のある位置でスタッフから停車の指示が出ました。フットブレーキを踏んで停車させ、積載状態での坂道発進です。音がしてブレーキが保持されたと合図が送られます。かなりの傾斜ですが、ブレーキペダルを放しても後退しません。しっかりブレーキが利いています。
そしてゆっくりとアクセルペダルを踏み込むと絶妙なタイミングで半クラッチ制御がなされ、ブレーキが開放されて坂を上り始めます。この時、スタッフの指示にはありませんでしたが、登坂時における極低速の挙動を知りたかったので、わざとアクセルペダルを踏み込まずに加速させてみました。やはりギクシャクすることなく、ピッチングを起こすことも無く、スカニアは次のギアへシフトアップします。
それを確認すると、今度は窓を少し開け、アクセルを強めに踏んでみたのですが、外からはエンジンが苦しそうに回っていような排気音もエンジン音も聞くことはできませんでした。
このまま加速状態を続け、60㎞/hくらいの速度でスタート位置に戻るストレートに入りました。スタッフが停車する位置を教えてくれます。そちらへ誘導しますが、リターダを目一杯利かせる指示がありました。どのくらいの能力があるのかわからずにリターダを利かせたら、まるでフットブレーキをかなり踏み込んでいるような感じで減速をします。リターダレバーを一杯まで引くと排気ブレーキも使い、また積極的なシフトダウンもあわせて行なわれるので、停車寸前までフットブレーキは使うことなく試乗できました。
この後は試乗車を乗り換え、私はRスリーパーキャブハイルーフの空積載車に試乗しました。同じコースを同じように回りますが、スカニアの挙動に目立った変化はありませんでした。一番大きなキャブを載せているにもかかわらず、キャブのみがピッチングやローリングを起こすことは無く、終始安定した試乗でした。空積載時と10t積載時で変化が感じられないというのはとても凄いことで、それだけスカニアのトラックの能力が優れていることの証拠だと思います。
(写真提供 多賀まりお氏)
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