【緊急提言】スタッドレスの履き替えで多発!! 相次ぐ大型車の脱輪事故を防げ! 

そもそも軸力とはなにか?

 ナットがボルトにネジ込まれ、車輪でいうならホイールに着座してから規定のトルクで締めて行くと、ナットは対象物に着座しているためそれ以上前には進めず、締め付ける力でボルトが僅かに伸びます。伸ばされたボルトはバネのように縮もうとします。簡単にいえばこの力が軸力です。
 
 軸力は測るのがいろいろ大変なので、軸力の目安として「規定トルク」があり、規定トルクを予めセットしてそれ以上の力を逃がす「トルクレンチ」や、同じく規定トルクに達すると締め付けを止める「トルクセッター」があります。

 ただトルク管理ツールで締め付ければ万事OKというワケではございません。トルクと軸力はイコールではないので、規定トルクで締めても軸力が不充分ですとナットは緩んでしまいます。

 軸力確保の邪魔をする原因として多いのは、ボルトナットの錆び、ネジ部の損傷です。その他はハブとホイールの合わせ、リアならばホイール同士の合わせ面のゴミ、錆びの噛み込み、ハブ当たり面の使用限度を超えた摩耗等です。

ハブの錆びが酷い状態の一例。このままで装着作業した場合、ハブとホイールの間に錆びやゴミが噛んだり、ネジもスムーズに回らず軸力の確保は厳しい
ハブの錆びが酷い状態の一例。このままで装着作業した場合、ハブとホイールの間に錆びやゴミが噛んだり、ネジもスムーズに回らず軸力の確保は厳しい

 新車トラックに新品パーツならば、錆びやゴミも付着しておらず、当たり面の摩耗も無いため密着しております。ところが、使用過程で錆びが発生したり、ホイールの塗幕が剥がれたり、ハブの当たり面の摩耗が進行していきます。

 本来密着しなければならない所に異物等による隙間ができると、結果、軸力の低下を招いてしまいます。タイヤ交換時はトルク管理だけではなく、こういったリスクを減らす作業も肝要でございます。

「初期馴染み」には「増し締め」を

 しかしトルク管理と軸力確保の作業を実施しただけで安泰というワケではございません。まだ軸力低下、ナットの緩みのリスクは隠れております。それは「初期馴染み」です。

 初期馴染みとは、走行によりナット座面、ホイール当たり面、ハブ当たり面の表面がミクロ単位で削られ馴染むことです。当然、その分隙間ができるので軸力は低下し、ナットが緩む可能性が出てきます。

 これを抑制するのが「増し締め」なんですね。通常、作業終了後50〜100kmくらいで増し締めをします。作業的には交換時と同じトルク値で締め付けること。それだけです。

 また、「すげぇ強く締めれば緩まないんじゃね?」ってなりますが、これはこれで問題です。軸力はネジが「僅かに」伸びてそこから縮もうとする力。強く締めるとボルトが伸びすぎて縮まらず、軸力が確保できません。

 伸びすぎたパンツのゴムが使い物にならないのと同じです!

 日常点検では運行前にナットの緩みの点検をするわけですが、以前ですと点検ハンマーでナットを締まる方向へ叩いての打診点検でした。

 今は締め付け作業終了後、ボルトナットにマーキングをしなさいという国交省からの指示がございます。マーキングをすれば目視で緩みを確認できるようになっておりますので、乗り込む前に車両を一周しがてらナットのマーキングを見て下さいね。

 それに加え現在は「連結式ナット回転指示インジケーター」があります。

 インジケーターの種類としましては隣り合うナットを連結して連結部分が変形するもの、ナット単体に取り付け角度が見た目にわかるもの、ナット単体に着け、緩んだ場合はそれ以上緩まないようにストッパーの役目をするモノなどがあります。

 いずれにせよ今まで確認し辛かったナットの緩みを可視化したって感じでしょうか。

ナット回転指示インジケーター装着状態。ボルトナットのマーキングと併用。完全に緩んだとしてもナット同士が繋がっているためボルトからナットが抜ける事は無いと考えられます
ナット回転指示インジケーター装着状態。ボルトナットのマーキングと併用。完全に緩んだとしてもナット同士が繋がっているためボルトからナットが抜ける事は無いと考えられます
これは故意にナットを緩めインジケーターの変形具合を見たもの。繋がっている部分が歪になってますよね?
これは故意にナットを緩めインジケーターの変形具合を見たもの。繋がっている部分が歪になってますよね?

 タイヤ交換後50〜100kmでの増し締めと、マーキングやインジケーターでボルトナットの緩みを発見した場合は、必ず締め直しをお願い致します。また出先などで車載工具等で締め直しを行なった場合は、速やかにトルク管理ツールを使った規定トルクでの締め直しをお願いします。

 クルマやトラックに限らず、メンテナンスで外したり、交換作業が必要なものはたいていボルトナットで締結します。「外せるモノは外れる」という認識の下、作業び点検をしていきましょう!

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