しわ寄せはどこに来るのか
僕が現役でトラック運転手をやっていた時代にこんな話を聞いたことがある。
大手ビール会社の配送を専属にやっている運送会社に、下請けで行ったときのことである。そこの場合、一日で三回戦(積み込んで配達して帰ってくるのを三回やる)が普通だった。ある日、その運送会社の幹部が荷主であるビール会社に運賃の交渉に行った。この場合だと、運賃はたぶん配達数量×走行距離(あくまでも推測)で決まっているだろうから、そのうちのどれかの単価を上げてほしいという交渉だったと思われる。
ところがビール会社のほうでは運賃値上げに難色を示し、その代わりに運送会社にある提案をした。つまり運送効率を上げる方法を考えて、従来より配達がスムーズになるように工夫し、それによってトータルで利益が増えるようにしたらどうかというのである。
ビール会社ではボディメーカーと協力して、現在ビールなどの配送によく使われている垂直スライド式のアルミアオリを開発した。これにより倉庫脇にピッタリ車を着けることができるようになった。同時にアオリを高くすることが可能になったのでロープをかける手間が省けて、配送効率が上がり、運賃を上げるのと同じ効果があったというのである。
これは運送会社の配車係の人に聞いた話なので、どこまでが本当なのかどうかはわからない。しかしこれが事実ならば、トラック運送業界の一面を端的に物語っているように思う。
つまり運賃を上げてほしいという要求が、いつの間にか本質からはずれ、しかし形としてはひとつのところに納まるという図式である。荷主であるビール会社は運賃を上げることなく、システム化を代案として持ち出す。もちろん、配送効率が上がることは、ビール会社にとっても好都合である。 (山高一浩)