最近ではいすゞ新型ギガに「タイヤ脱落予兆検知システム」なる安全装備が標準装着されるなど、業界あげての対策が講じられているが、トラックの脱輪事故件数は依然高止まりのまま。特にタイヤ履き替え時期は事故件数が増える傾向にあります。
そこでタイヤサービスマンのハマダさんに現場発信の事故防止の対策を聞いてみました。
文・イラスト/タイヤサービスマン・ハマダユキオさん
写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
*2025年12月発行「フルロード」第59号より
タイヤ脱輪事故の発生件数は高止まり傾向
年末はあらゆる業種が繁忙期だと思いますが、タイヤ屋も同じでして、スタッドレスへの履き替えが集中する時期でもあります。タイヤの出荷本数、作業料などの数字は当然上がりますが、上がってほしくない数字も上がってきます。それが「脱輪事故件数」です。
国土交通省が公表している脱輪事故件数は2011年度は11件でしたが、2017年度は67件、2020年度は131件、2021年度は123件、2022年度は140件、2023年度は過去最多の142件と増加傾向にあります。そして2024年度も減少せずに142件の脱輪事故が発生しております。
脱輪事故は作業実施後1〜2カ月後の左後輪が多く、やはり履き替えが多いこの時期に集中しています。
国土交通省の見解によると主な原因は不適切なタイヤ脱着作業が最も多く、「タイヤの交換時、ホイールナットの締め付けや清掃、潤滑剤の塗布などの作業が不十分であること。
そして日常点検の不備もあげられ、運転手や整備担当者がホイールナットの緩みや劣化部品の使用に気づかない、あるいは点検を怠るケース」と発表しています。
なぜ脱輪事故は増えたのか?
なぜ、2011年度の11件から10倍以上に増加しているのか? これは集計方法が変わったとか計算ミスとかではなく、本当に増加している数字なんです。
ちょうどその頃、大型車はJIS8穴からISOの10穴に変わり始めた頃です。多くのメディアも伝えていることですが、車輪の締結方法が変わったことが脱輪事故の増加の原因の一つではないかと思われております。
しかしなぜISOになったからといって脱輪事故が増えたのでしょうか? これも理由はいくつか考えられますが、専門家がまず指摘するのが日本の道路事情です。
それは左側通行と路面の排水のための道路の傾斜です。直進時・旋回時ともに左リアタイヤに負荷が集中しやすくなっているのですね。
道路の排水構造は国によって異なりますが、日本では道路の中央が盛り上がっており、路側帯(両サイド)に向かって低くなっているため、左側通行では常に左輪に負荷がかかりやすくなります。
また、左折時の旋回半径が小さくなるため、左後輪に強い横方向の力がかかります。これが左後輪のナットに緩む方向の力を加える原因となります。
ISOは車両の左右に関係なく全て右ねじ(一部の旧ISOで左ねじも存在します)です。JIS規格では車両左側は「左ねじ」で、車輪の回転の慣性によりナットが閉まる方向へ力がかかる構造ですので、右ねじに比べれば緩みにくくなっています。
左リアの脱輪事故が多いのは、こうした構造と過重負荷が原因の1つとされています。もちろん、適切に管理されていればISO方式でも脱輪は起こらないのですが、国土交通省の見解のとおり不適切な作業や部品の劣化、点検を怠るケースが多くあります。

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