過積載は過去の問題ではない
運賃の値上げという問題は、運送業界全体が抱える問題である。物流業界全体が抱える問題を、運送業はその実際の現場でクッション役となって支えているといっていいと思う。運送業は基本的にサービス業であり、荷主からの発注があって、初めて仕事が成立する。そういった意味では、荷主の要求に対して非常に弱い立場にあるといえるだろう。
それでも、緑ナンバーの運転手および運送会社なら、運送組合などを通して、賃金、運賃の交渉をする余地がある。しかし個人営業の白ナンバーの運転手が多いダンプカーの業界では、連帯して運賃交渉をすることは難しく、かえって個々の運転手が運賃をダンピングし合って、仕事を取り合うといった場合のほうが多い。残土の運賃が上がらない最大の理由は、ここにあるといえるだろう。
もうひとつは、運送費というものが生活経済と密接に関係しているという点である。運送費の値上げは、そのまま物価などに直接影響を与える重要な要素になる。特に残土の運搬は、土木・建設にはなくてはならないだけに、その値上げは直接、建設費に跳ね返ってくる。バブルが崩壊する以前の空前の建設ブームを陰で支えた中に、低賃金で残土の運搬を引き受けていたダンプカー運転手も当然含まれるのではないかと思う。
運送費の上昇が社会全体に与える影響が大きければ大きいほど、その上昇に関しては社会的な反発があり、また荷主のほうでも、固定経費である運送費はできるだけ低く抑えたいと考えるのが当然である。こうした諸状況の中で、運転手ならびに運送会社は経費確保のために過積載をせざるを得ない状況にあった、といえないだろうか。そのために毎日ビクビクしながら危険を承知で走っている運転手がいるということを、もっと知ってもらいたいと思う。
ダンプカーの過積載の問題に限っても、関係各省だけでも国土交通省、経済産業省、警察庁などが複雑に絡み合った問題だと思う。この解決のためには、問題が起こったときの一時しのぎだけではなく、長期的展望に立った抜本的対策が必要である。過積載問題は決して過去の問題ではない、運送業界は、自分たちだけではどうしようも出来ない問題をまだまだ抱えており、その1つの象徴が過積載の問題だったのだ。そのためにも、現在の運送業界の実態について、より多くの人に知ってもらい、理解を深めてもらう努力が必要なのではないかと思うのである。 (山高一浩)