海コンシャーシとの「あうん」の呼吸 テナーの職人技に脱帽!
昨日は、横浜・南本牧ターミナルで行なわれた「荷役機器体験会」なる催しに行って来ました。6月28日のブログでもお伝えしましたが、これは、横浜の南本牧ターミナルを利用する海コンドライバーを対象に、テナーやトップリフターの運転室および運転操作を実際に見学してもらい、トレーラやコンテナがどのように見えるのか、荷役機器オペレーターの視点を体験してもらおうというもの。南本牧ターミナル安全衛生委員会事務局が企画したもので、「フルロード」も取材が許され、キャップも貴重な体験をしてきました。
今回の「荷役機器体験会」に参加した皆さん。荷役オペレーターが所属する藤木企業やコンテナ貨物取扱業務を一括して引き受けている三菱倉庫の協力の下、体験会はとても和やかな雰囲気で行なわれた。ちなみに参加者の中には、このブログでもお馴染みの「帰ってきた海コン運ちゃん」ことヒロさんをはじめ、「創刊当初からフルロードを愛読しています。キャップにお会いできて光栄です」なんて声をかけてくれたドライバーさんもいて、キャップ感激!です
日本最大級のコンテナターミナル「横浜南本牧MC-1・2ターミナル」は、ターミナル面積40.4万平方キロメートル、岸壁延長700メートル、6基のスーパーガントリークレーンを有し、コンテナ蔵置能力は2万1300TEUに達します。ちなみにTEUとは、twenty-foot equivalent unitのこと。20フィートコンテナ1個分を表わす単位で、つまり40フィートコンテナは2TEUということになります。
南本牧ターミナル。沖合ではMC-3の工事も急ピッチで進められており、日本でも有数の国際コンテナターミナルとなる予定
キャップの場合、付け焼刃であることは否めないんですが、もう少しコンテナヤードの勉強を続けますと、コンテナをコンテナ船から降ろして搬出するには、大まかにいって3つの方法があります。
まず「ストラドルキャリア方式」ですが、ガントリークレーン(いわゆるキリンさんですね)で、船から岸壁の上に直接降ろされたコンテナを、ストラドルキャリアというコンテナを運ぶ機械でコンテナヤードに運び、2~3段に積んで保管。コンテナヤードから外へ持ち出すときも、ストラドルキャリアで海コンシャーシの上に載せ、海コントレーラで運んでいきます。
ふたつ目は、シャーシ方式と呼ばれるもので、コンテナはガントリークレーンで船からシャーシの上に降ろされます。そのコンテナの載ったシャーシをコンテナヤードに運び、シャーシに載せたままで保管。いわゆるオンシャ状態なので、コンテナヤードから外へ搬出するときは、トラクタヘッドをシャーシに連結すればすぐ運べるようになっています。
コンテナヤードの構内専用のトラクタ&トレーラ。20フィート(2個積み可)、40フィート、45フィートコンテナにも対応する
3つ目がトランスファークレーン方式(トランステナー方式)と呼ばれるもので、コンテナは、ガントリークレーンで船から構内用のシャーシの上に降ろされ、トラクタでコンテナヤードに運びます。コンテナヤードでは、トランスファークレーンという大きなクレーンで、構内用シャーシからコンテナを持ち上げ、3~4段と高く積んで、保管します。コンテナヤードから外へ持ち出すときは、トランスファークレーンでコンテナを海コンシャーシの上に載せ運んでいきます。
このうち南本牧ターミナルでは、主にトランスファークレーン方式(トランステナー方式)が採用されているようで、このトランスファークレーンのキャビンに搭乗し、運転の様子を間近で見られることが、今回の体験会の目玉になっています。ただ、現場では長ったらしいトランスファークレーンともトランステナーとも呼ばず、単に「テナー」と称していますので、以下テナーで通させていただきます。
左が今回体験したコンテナ4段積みに対応したテナー。右は、ひと回り大きい5段積み対応の中国製のハイブリッドのテナー
今回体験したテナーは、コンテナ4段積みに対応したもので、コックピットまでの高さは約12メートル。エンジンを搭載し、タイヤを履いた自走式の門型クレーンで、定格荷重は40.6トンです。その隣のレーンには、何と中国製のハイブリッドのテナーもあり、こちらはコンテナ5段積みに対応したものとか。
さて、いよいよテナーのキャビンへ。もちろんエレベーターなんてシャレたものはなく、外付けの階段をトコトコ上っていきます。上にのぼるにつれ、景色が開け、南本牧ターミナルの全容が見えてきますが、それと同時に脚が多少ガタガタいうのは否めません。かなり高いです。
近くで見るとデカいです
上ってみると高いです
キャビンは、運転席が真ん中にあり、その足元から前の床がガラス張りになっているのが大きな特徴です。運転席はテナーの進行方向ではなく、跨いだコンテナの長手方向と相対するように位置しています。そのためテナー自体の動きは、オペレーターにとっては横走りとなるわけで、まずはテナーを横に走らせ、目指すコンテナ列(便宜上ヨコ列とします)の上に持って来なければなりません。
ザ・コックピット。足元から先はガラス張りです
下から見上げると、こんな感じ
人も乗用車も小さく見えます
ただ、テナーをまっすぐ横走りさせたつもりでも(おかしな表現ですが、意を汲んで下さいね)、タイヤ走行なので微妙にテナーが軌道からズレてしまうことがよくあるそうです。そうすると目指すコンテナをうまくキャッチできなくなることが多いので、もう一度、元の位置に横走りし、微妙に軌道を修正しつつ、テナーを目指すヨコ列の位置に持ってくるんだそうです。自動車のように自在に操舵できるわけではないので、場合によっては、この切り返しを何回も行なわなければならず、下で待つ海コンシャーシのドライバーは「何をやっているんだろう?」と思うと思うけど、「そういう事情があることをどうか察して下さい」とのこと。
まっすぐ走らせたつもりでも、徐々に軌道をそれてしまうことも……。ちなみにテナーの走行する路面は鉄筋コンクリート製にして耐荷重を増しているそうです。レール式のトランスファークレーンもあるそうですが、こちらの方が機動性が高いようです
目指すヨコ列の位置についたら、いよいよ今度は、運転席の前方向にあるタテ列の中から、クレーン部分と一緒にキャビンを前後に動かし、目標のコンテナをキャッチしなければなりません。オペレーターは前屈みの姿勢で下を見ながらクレーンを操作します。言ってみれば巨大なUFOキャッチャーみたいなものですが、こちらは一つ間違えば大事故につながるだけに、極めて集中力が要求され、オペレーターさんは真剣な表情でクレーンを操作しています。ちなみにオペレーターは2時間毎に休憩を取る決まりだそうです。
クレーンと共にキャビンも前後に移動するんですね
目指すコンテナに狙いを定めて……
クレーンを下ろしていきます。ずっと身を屈んで下を向いての作業なので、「気持ち悪くなりませんか?」と聞いたら、「ええ、最初のうちは気持ち悪くなったこともありましたが、今はもう慣れましたよ」とのこと
コンテナをどうキャッチしているか、写真では黄色い爪のようなものでコンテナの四隅を挟んでキャッチしているように見えますが、違いますよ、そんなんじゃガッチリ掴めませんよ~。実は、海コンシャーシとは上下が逆になりますが、クレーン側の四隅にツイストロックがついており、それがコンテナの上部の穴に嵌合して90度ツイストしてロックしているんですね。
四隅の黄色い爪で掴んでいるように見えますが……
実は、コイツがキモなんです
こんなのが、右の写真のように嵌って、ツイストロックしているんですね
目指すコンテナをキャッチしたら、今度はそのコンテナを海コンシャーシに載せるわけですが、これが一番むずかしいそうです。今回の体験会では、シャーシに載せるところまでは実演しませんでしたが、風があると特に空バンはあおられるし、実入りのコンテナでも、片荷の場合はクレーンを操作していても分かるそうで、結構注意して操作するんだとか。そして、海コンシャーシに載せるほんの手前で寸止めし、海コンドライバーとのあうんの呼吸で、シャーシにオン! それは、テナーのオペレーターと海コンドライバーが信頼関係によって結ばれる瞬間なんですね。
今回の体験会に参加した海コンドライバーは、当然のことながら、実際にテナーのキャビンに搭乗し運転操作を見るのは初めてという人ばかりでしたが、口々に「テナーのキャビンからは、想像していた以上に海コンシャーシが見えていないことが分かった。テナーのオペレーターさんの職人技に脱帽です」といった声が聞かれました。コンテナヤードでの事故を防ぎ、円滑に作業をするためにも、今回の「荷役機器体験会」は非常に有意義だったと思います。なんかシメの言葉みたいになっちゃいましたが、トップリフターの同乗体験もなかなか興味深かったので、次回はその体験をレポートします。
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