開発主査に聞く新型日野デュトロの概要 (3)

開発主査に聞く新型日野デュトロの概要 (3)

1.5倍の燃費向上に挑戦 新世代ハイブリッドの開発の狙い

まずは、ちょっと宣伝になりますが、日野自動車は1991年、世界で初めて商用車のハイブリッドのバスを出しております。これはHIMRというシステムですが、当初は低迷を続けていたんですが、2003年にデュトロのハイブリッドを出しますと、これで一気に立ち上がりまして、現在ではバリエーションとしては4ライン、小型のデュトロ、中型のレンジャー、路線バスのブルーリボン、それからセレガ観光バスということで、トータルで累計生産台数で1万1000台という実績になっております。さらにドカーンと台数を伸ばそうということで、小型トラック用に新しいハイブリッドを開発しようというのが開発の経緯になります。

新しいハイブリッドの開発に際しては、まずはコンセプトというところから始めなきゃならないということで、2006年くらいからお客様に厳しいご意見を伺いに行ってまいりました。すると「とにかく燃費を良くしてくれ」「絶対値を良くしてくれ」「バラつきがデカい。安定して燃費を向上してくれ」という声が多かった。トラックというのは荷物の量によって状況が変わりますので、安定した燃費を出すのはむずかしいのですが、そういう要望が多かった。また私どものハイブリッドは、マニュアルがメインでしたが、今後はAT免許等の絡みもあり、イージードライブ化してほしいという意見もありました。そこで今回はこの2つ、圧倒的に燃費が良くて、イージードライブが可能なハイブリッドということを開発コンセプトにしております。

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これを具現化する方法というか目指す具体的な目標ですが、燃費1.5倍…。これは別に白井社長が言ったからではありません。本当はきちんとした根拠がありまして、一般的なディーゼル車に比べて、これまでのハイブリッド車は燃費のバラツキが大きかったんですね。このバラツキの要因の一つが、いわゆるパラレルハイブリッドですから、回生したエネルギーを使うタイプではクラッチを踏んでしまうと回生が取れないということがあり、ここでバラツキが出てしまう。よって現行のハイブリッドは結構バラツキが大きかったということがありました。
また、中には一般ディーゼルより悪いじゃないかというご意見もありました。そうしますと、これは圧倒的に燃費を良くしなきゃいかんということと、バラツキを抑えなきゃいけないということで、シミュレーションをしつくして、出てきた数値が1.5倍です。それだけ向上させないとダメだと心を決めて1.5倍にしたということでございます。
またお客様のご負担という形で、燃費1.5倍の向上率をもとに価格アップ分を4年から5年で回収するということも目標としてやっているというところです。

現行のハイブリッドでは、エンジン直結モーターになってまして、その後にクラッチがある。これを間にクラッチを入れてエンジンとモーターを切り離すということをしました。これをすることによってエネルギー回生量が一気に増えるということが目的です。それから後ろにモーターがあるとマニュアルミッションでは成立しないので、メカオートトランスミッション(機械式AT)にした。イージードライブ化ということが要望としてありましたが、トルコンATにすると燃費が悪くなってしまうということでメカオートにしたというとことです。さらにはハイブリッドに関する部位を全部見直しました。まずユニットですが、モーター・インバーターに最新技術を投入しております。特にインバーターにつきましてはトヨタさんの協力も得て両面冷却というインバーターを採用しております。また、バッテリーはニッケル水素を継続している。これは信頼性、容量、コスト等、いろいろ考えた末、やはりニッケル水素の方が上だなとという結論に至りました。さらにトヨタさんの協力を得まして、レクサスLS600hで採用しているバッテリーとまったく同じものを採用しています。ということで信頼性は世界最高です。
それから日野の得意な分野ですけど、20年以上内製制御をやっていたということもあって、やっと究極のものができました。名前はHV適応制御ということですが、実は学習制御です。学習制御と、さらにエンジンの好燃費も考慮した制御をするということで、HV適応制御というものを今回採用しています。また私の念願でございましたアトキンソンサイクルのHV専用エンジンを採用しています。  (つづく)【お話 日野自動車製品開発部ハイブリッド担当 山口公一チーフエンジニア】

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