国土交通省などが行なうレベル4自動運転トラックの実証実験が2025年3月3日、静岡県の新東名高速道路で始まった。レベル4とは、一定条件下で無人自動運転を行なうもの。昨年12月の実証実験では自動発着をテストしたが、今回は優先レーンやインフラ支援を実験する。3日に行なわれた報道向けの現場公開をレポートした。
自動運転トラックの安全・円滑な走行を支援する優先レーン
今回の実証実験は、国土交通省や中日本高速道路が関係省庁と連携して行なう。深夜時間帯に自動運転車用の優先レーンを設定し、車両と道路を連携させたレベル4自動運転トラックの実現に向けた実験を行なう。
区間は新東名高速道路の駿河湾沼津SA〜浜松SAまでの約100kmで、平日夜間22時〜5時に第1通行帯を「自動運転車優先レーン」に設定し、自動運転トラックが安全・円滑に走行できるかを確認する。
実験は2025年3月3日に開始され、終了時期は未定。なお、土日祝、年末年始、GW、お盆などの混雑時期は、自動運転車優先レーンを設定しないという。
実験中は、道路上にある電光掲示板に「左車線自動運転実験中」と表示。自動運転トラックは「優先車両」の扱いとなり、大型貨物車の通行区分指定の規制は解除される。自動運転トラックに接近した場合は、走行の妨げにならないよう注意が必要だ。
自動運転トラックは、大型4社も参加する経産省・国交省の委託事業プロジェクト「RoAD to the L4」、および自動運転トラックの研究開発を行なうT2のものを使う。台数はRoad to the L4が5台、T2が2台となっている。
実験車両は、車両前後に標章が貼られ、側面に「自動運転実証実験中」のステッカーが貼られるのが目印。走行中はターコイズブルーのLEDランプが点灯するので、夜間なら簡単に識別できるだろう。
合流や車線変更をサポートする「路車間通信」技術
また今回の実証実験では、「合流支援情報提供システム」や「先読み情報提供システム」など、インフラ支援装置と車両を連携させた路車協調制御の実験も行なう。
大型トラックは、普通乗用車に比べてサイズ、重量ともに大きく、急発進や急操舵が困難。また、荷物を運ぶうえでは、途中で止まってばかりいては使い物にならない。そこでインフラ支援を活用し、確実に荷物を目的地まで届けられる体制を整える。
合流支援情報提供システムは、道路上に設置した路側機(LiDERセンサーなど)で本線を走行するクルマの速度と位置を検知し、路車間通信で連続的に送信。この情報をもとに、合流時にどのクルマがどの位置に来るかを車両自ら予測し、加減速を行なって合流するというもの。
途中の遠州森町PA、浜松浜北ICでは、加速車線から本線に合流してくる一般車への対応も、路車間通信を用いて行なう。
一方、先読み情報提供システムは、全国約1600カ所に設置されているITSスポットから得られる工事規制、落下物、交通事故などの情報を路車間通信などで車両に送信。進路上になにか障害物がある場合は前もって車線変更を行なう。
RoAD to the L4が駿河湾沼津SA〜浜松SA間の交通流の2倍を想定して実施したシミュレーションでは、自動運転トラックが確実に車線変更を行なうためには2キロが必要とされ、交通環境の変化に対応するためのマージンをとると、3キロ以上手前で情報を得る必要があるという。
これに対し、車両側のセンサーで確認できる範囲は200〜250メートル。しかも障害物がカーブやアップダウンの先にあると見えなくなる。万一車線変更できず停まってしまうと、交通の流れのなかで再発進するのは不可能に近く、インフラ支援は極めて重要となる。
なおRoAD to the L4では、2025年度後半に横浜から大阪までをインフラ支援を受けながら走行することを計画している。政府もレベル4自動運転トラックの2025年度以降の実用化を目指し、新東名の実験終了後に東北自動車道でも同様の実験を行なう予定としている。
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