メルセデス・ベンツの商用車工場では、自律型ロボット犬が働いている。状態監視・異常検知が任務で、エネルギーコストの削減やシステム障害の防止を担っているという。
また、物流自動化の第一歩としてドローンが導入されており、従業員はルーティーンワークから解放された。いずれのシステムにもAIが組み込まれ、整備や物流など、工場の日常業務の一部を代替している。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Mercedes-Benz
MBデュッセルドルフ工場に「ロボット犬」
メルセデス・ベンツのデュッセルドルフ工場ではロボット犬「アリス」が働いている。工場で使う圧縮空気の漏れの検知などに活躍しているそうで、異常の早期発見により工場のエネルギー消費を大幅に削減できるという。
小型商用車(バン)を製造するデュッセルドルフ工場では、製造現場のデジタル化を推進している。アリスなどの自律型ロボットは、予防整備や物流に活用され、従業員の業務を可能な限りサポートし効率化することを目指している。
また、工場の敷地内にある空コンテナを数えるのに自律型ドローンが導入され、時間のかかる従業員のルーティーンを軽減している。どちらの自律型ロボットも、より上位のクラウドアプリに統合されており、相互に連携が可能だ。
デュッセルドルフ工場はメルセデス・ベンツのバンおよび商用車の生産拠点で、約32.5万平方メートルの生産エリアに5500人の従業員が勤務している。「スプリンター」及び「eスプリンター」のパネルバンを製造するこの工場には、長い伝統と最新技術が同居しており、地域で最大規模の雇用を生み出すとともに、自動車の生産技術におけるパイオニアとなっている。
将来的には別の工場間でもロボット同士のインタラクションを可能にする予定で、メルセデス・ベンツ・バンズはこうした取り組みを通じてデジタル化による製造業の変革を進めている。
デジタル化を通じて日常業務を自動化
アリスは既にデュッセルドルフ工場の幅広い業務を担っている。その一部には人工知能(AI)を活用しており、たとえば特定の機械やアナログ計器の定期点検を自動で実施し、アリスが記録したデータをもとに評価を行なっている。
また、音響・画像モジュールを搭載しており、異音の発生場所などを特定することも可能だ。こうした異常は、システム障害が差し迫っている可能性を示すもので、大規模な工場では大きな損失に繋がりかねない。
自律型ロボットの導入を通じて担当者は空気漏れや潜在的な欠陥に対して迅速に対応することが可能になり、大きな損害が発生する前に修理することができるようになった。
同社によると空気漏れによるエネルギー損失を60%減らすことができれば、年間で6桁ユーロ(数千万円)のコスト削減につながるという。また、こうしたロボットを活用して非生産期間中に修理を計画することで、急なシステム障害を未然に防ぐことができる。
アリスに搭載するテクノロジーは、正確で効率的な作業を行なうだけでなく様々なタスクや要件に柔軟に対応することを目指している。ロボット犬は階段を上るなど施設内を完全に自律して移動する高い能力があり、これにより緊急時の避難経路の確認や工場のデジタルツインの作成など、ほかの用途に活用される可能性もある。
デュッセルドルフ工場では工場内の空コンテナのカウントは専用ドローンにより効率的かつ正確に行なわれるようになった。この技術もAIをトレーニングすることで実現しており、AIがコンテナを認識し、寸法、輪郭、形状に基づいて数量をカウントする。
工場物流の自動化と効率向上に向けた大きな一歩だといい、従業員はルーティーンワークから解放されて重要な業務に集中することができるようになったそうだ。
【画像ギャラリー】MBのデュッセルドルフ工場で働く自律型ロボット(6枚)画像ギャラリー
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