川崎重工はフィジカルAI開発を行なう米国のユニコーン企業、Dexterity社と提携しトラックへの荷積みを自動化するヒューマノイドロボット「Mech」を共同開発した。
運行中の荷崩れを防ぐためAIが荷物の大きさや重量配分などを考慮しながら2本の腕で荷物を積み込んで行く、世界初の物流用AIバンニングヒューマノイドロボットだ。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/川崎重工業株式会社・Dexterity, Inc
世界初! 2本腕の物流用ヒューマノイドロボット
川崎重工は2025年5月8日、AIロボティクスソフトウェアの開発等を行なう米国のユニコーン企業Dexterity, Inc(以下、「デクステリティ」)と戦略的提携を結び、トラックへの自動荷積みを行なう同社のAIバンニングロボット「Mech」(以下、「メック」)を共同開発したと発表した。
共同開発において、川崎重工はメック向けのロボットアームの開発を担当した。
フィジカルAI企業であるデクステリティはこれまでも物流用のロボットを開発しているが、メックは産業用の「スーパーヒューマノイドロボット」だという。機能や見た目など人間を模倣したロボットをヒューマノイドと呼び、川崎重工が開発した2本の腕を用いてメックは人間のようにトラックへの荷積みを行なう。
物流施設でのトラックへの荷積み(バンニング)をAIによって自動化するヒューマノイドロボットは世界で始めてだといい、物流施設内を自走することも可能だ。
物流分野では、Eコマース市場の拡大に伴って流通する物量が増加するいっぽう、「物流の2024年問題」に代表されるようにその担い手は慢性的に不足している。労働力不足は日本に限らず世界的な課題で、各国で作業の自動化へのニーズが高まっている。
メックの導入により、荷積み作業に従事するトラックドライバーや作業者の負担軽減、物流施設の省人化が期待でき、すでに国際的な物流企業の施設で、現場導入に向けた実証実験が行われているそうだ。
メックは「スーパーヒューマノイド」?
今回、川崎重工が開発したロボットアームは、トラックの狭い荷室内でも最大限の動作範囲と動作の自由度を確保するために、一般的な産業用ロボットアームの軸数である6軸よりも多い8軸として新たに開発した。
加えて、メックのコンパクト化・低コスト化に貢献するため、トラックへの荷積み作業に必要な強度を維持しながら軽量・スリム化している。
ロボットアーム1台あたりの最大可搬質量は30kgで、デクステリティが保有する高度なAI技術と組み合わせることで、これまでロボットによる自動荷積みでは難しかった、荷物の大きさや重さを考慮した適切な位置への効率的な荷積みを実現した。
これにより、荷物の大きさを認識し、大きさの異なる荷物を組み合わせて荷室の隅にまで効率良く積載することや、配送中の荷崩れを防ぐために荷物ごとの重量を踏まえて、荷重を分散させた積み込みが可能となった。
川崎重工は今後もデクステリティとの戦略的提携およびロボットアームの提供を通じて、国内外での物流分野における課題解決に貢献していくことにしている。
ところで、既に様々な物流・産業用ロボットを展開しているデクステリティが、なぜ新たに物流用ロボットを開発したのか? 同社はFAQで次のように答えている。
「人とロボットがともに働く職場でOSHA(米国の労働安全衛生基準)を満たしながら物流分野で働く人々をサポートするために、より優れたロボットシステムの必要性を痛感しました。メックがその答えです」。
また、メックを「スーパーヒューマノイド」としている事に関しては次のように答えている(ちなみに社名となっている「Dexterity」は「器用さ」という意味)。
「人間は並外れた器用さをもち、その器用さを様々な用途で発揮することができます。人間は本質的に超人的なのだと私たちは信じています。それに比べると、人間を模倣したヒューマノイドロボットにできることは限られています。ただ、荷物の積み込みなど特定のドメインに限れば、ロボットにも超人的な働きができます。メックは物流のためのスーパーヒューマノイドです」。
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