長距離トラックは出発地と目的地で気候帯が変わることも多く、国内だと九州のトラックが北海道の冬に備えていたりします。
砂漠からツンドラまで対応が必要な北米の長距離トラックは、実験室よりはるかに厳しい現実の環境で試験を行なっているようです。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/AB Volvo
アラスカの北極圏で試験を行なったボルボの新型VNL
ボルボトラックスノースアメリカ(北米ボルボ)は、2025年7月17日、昨年全面刷新を発表した新型ボルボVNLの寒冷地試験の様子を公開した。
米国のアラスカ州フェアバンクスは冬の気温が摂氏マイナス40度まで下がることも珍しくない厳しい気候で、大陸横断を求められることもある長距離トラックにとって、世界で最も過酷な環境である。
ボルボは北米向けの長距離輸送用フラッグシップトラックがどのような条件下でもその性能と信頼性、そして快適性を発揮することを保証するため、この極限の環境で試験を実施したという。
北米ボルボの社長、ピーター・ボーホーブ氏は次のように話している。
「トラックを運行する環境として、アラスカは世界で最も過酷な場所の一つです。だからこそ私たちはここにいます。こうした極限環境で試験を行なうことで、お客様が予期しえない状況に直面した場合でも、ボルボなら大丈夫だと信頼していただけるように努めています」。
現地プロドライバーからのフィードバックも
北米ボルボの寒冷地試験チームは毎年冬になるとコロラド州からアラスカ州まで3000マイル(約4830km)を移動し、実験室よりはるかに厳しい現実の環境で試験を実施する。
新型VNLの試験も数か月に及び、様々な運転シナリオと気象条件の下でパフォーマンスと快適性を検証した。高速道路から市街地でのストップ&ゴーまでそれぞれのシナリオは実際の運用をシミュレートするように設計されている。
この試験では、アラスカの厳しい環境で数十年に渡りトラックを運転してきたプロドライバーがボルボの試験チームに詳細なフィードバックを提供する。
こうした洞察とリアルタイムのデータを組み合わせることで、エンジニアはパワートレーンの応答性からキャブ内の快適性までトラックのあらゆる側面を調整することができる。
なかでも重要なのが「コールド・ソーク」と呼ばれる試験だ。これはエンジンを切ったトラックを屋外に放置し、すべての部品が氷点下に冷え切るまで放置する試験のことだ。この極限状態で12時間放置したあとトラックを始動し、ドライバーの普段の運行と同様に作動することが求められる。
ボーホーブ氏は寒冷地試験の意義を次のように話している。
「新型VNLは全てを変えるために設計されています。これは試験や改良のための私たちのアプローチも新しくなることを意味しています。
実験室では不可能な洞察を得るため、実際の条件下で厳しい試験を行なっています。アラスカで得た知見は、革新的なだけでなく、お客様が信頼できる現実の環境で実証されたトラックを提供することに役立ちます」。
新型VNLは北米に特有の5つのバイオーム(都市、砂漠、草原、沿岸部の森林、北極圏のツンドラ)からインスピレーションを得ており、それに合わせて設計された。こうした試験を通過することで、新型ボルボVNLは北米大陸の様々な気候帯に耐え、3000マイルに及ぶ大陸横断が可能になっている。
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