連続35回の完走とさらなる高みへ!! ダカールラリー2026に挑戦する日野チームスガワラの戦いがいよいよ始まる

連続35回の完走とさらなる高みへ!! ダカールラリー2026に挑戦する日野チームスガワラの戦いがいよいよ始まる

 ダカールラリー・トラック部門(T5クラス)に参戦を続ける日野自動車「日野チームスガワラ」は12月19日、日野工場にレース活動を支えるスポンサーや関係者を招き、壮行会を開催した。

 2026年1月3日の開幕が目前に迫った「ダカールラリー2026」。日野チームは今大会でどのような活躍を見せてくれるのか。あらためてダカールラリーの概要と、日野チームの参戦体制をおさらいしていく。

文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真・図/フルロード編集部、日野自動車、ASO

ダカールラリーとは?

1月3日〜17日にかけサウジアラビアで開催されるダカールラリー2026のルート。ループコースが多く、サポートチームの移動が少なくてすむのが特徴だ
1月3日〜17日にかけサウジアラビアで開催されるダカールラリー2026のルート。ループコースが多く、サポートチームの移動が少なくてすむのが特徴だ

 当初「パリ・ダカールラリー」と呼ばれていたダカールラリーは、フランス人冒険家ティエリー・サビーヌの「乗り物は何でもいいから、パリからダカールまで競争しよう」という呼びかけにより、1979年にスタートした。

 フランス・パリを出発し、アフリカのセネガル(当時フランス系植民地)の首都ダカールを目指した通称「パリダカ」は大きな人気を博し、クロスカントリーラリーという新たなモータースポーツジャンルを確立するに至った。

 しかし、テロ予告などの影響により、2009年から開催地を南米大陸へ移行。その後、経済状況の変化などから大会を招致する国や地域が減少したことで、2020年以降は中東・サウジアラビアでの1カ国開催が続いている。

 2019年大会のペルー1カ国開催以降、国境を越えるという本来の「クロスカントリーラリー」の形ではなくなったものの、「世界一過酷なラリー」の異名にふさわしく難易度は年々上昇。マシンの性能が大きく向上した2025年大会においても、トラック部門は出走44台中、完走は18台(完走率40%)にとどまり、半数以上がリタイアする厳しい戦いとなった。

日野自動車としての歩み

北米モデルHINO600シリーズを模した2026年の参戦車。キャブはキャブオーバーの日野レンジャーがベースである。エンジンはミッドシップに近い形で搭載する
北米モデルHINO600シリーズを模した2026年の参戦車。キャブはキャブオーバーの日野レンジャーがベースである。エンジンはミッドシップに近い形で搭載する

 日野自動車は1991年、日本の商用車メーカーとして初めてパリ・ダカールラリーに参戦。以降も継続して参戦を続け、1997年にはトラック部門総合で史上初となる1・2・3位独占という快挙を成し遂げている。

 一方で近年は、レースの高速化にともない13リッター超の大排気量エンジンを搭載するライバルチームが台頭。8.9リッターのA09C型エンジンで挑み続ける日野チームにとって厳しい戦いが続いている。

 さらに、日野自動車の認証不正問題の影響によりチーム体制の縮小を余儀なくされ、現在は参戦車1台、サポートトラック1台という体制に。データ収集や予備パーツ、現地サポートなど、さまざまな面で不利な状況に置かれている。

 そうした中で迎えた2025年大会は、度重なるトランスファートラブルによりリタイアの危機に直面。少数チームの総合力が問われる大会となったが、乗員、メカニック、サポートメンバーがそれぞれ機転を利かせて対応。いつ止まってもおかしくない状況の中、総合13位で完走を果たした。

 これにより、日野自動車としてのダカールラリー連続完走記録は34回に伸長することに成功している。

2026年大会の参戦体制と前哨戦ジェッダラリー

 2026年大会のチーム体制は、総監督に小木曽聡、乗員はドライバーの菅原照仁、乗員メカニック兼ナビゲーターの望月裕司、ナビゲーターの染宮弘和と、前年から変更はない。

 一方、メカニック陣は、メカニックアドバイザーの鈴木誠一、メカニックリーダーの良川幸司に加え、販売会社メカニックとして田澤正和(西東北日野自動車)、今川博貴(南関東日野自動車)、菊池拓実(広島日野自動車)の3名が新たに加わった。

 販売会社メカニックは、全国の1級整備士資格保有者の中から採用試験によって選抜。5月頃に行われた試験後にチームへ合流し、約半年間にわたり、通常の大型車整備とは異なるラリー特有の整備トレーニングを積んできた。

 またサポートメンバーとしては、門馬孝之、蒔田亮子、安藤瑠美、近内舜が帯同。蒔田亮子は、日野自動車の女性社員として初のサポートカードライバーとなり、現地でレンタルするトヨタ・ランドクルーザーを運転する予定だ。

壮行会に参加したチームメンバー。手前右から鈴木誠一、菊池拓実、田澤正和、今川博貴、良川幸司。奥右から蒔田亮子、望月裕司、菅原照仁、染宮弘和、門馬孝之
壮行会に参加したチームメンバー。手前右から鈴木誠一、菊池拓実、田澤正和、今川博貴、良川幸司。奥右から蒔田亮子、望月裕司、菅原照仁、染宮弘和、門馬孝之

 一方、2026年の参戦車両「HINO600シリーズ」には、2025年大会で露呈した課題を踏まえ、信頼性向上と競争力アップを目的とした改良が施されている。

 まず、相次いだトランスファートラブルへの対策として、センターデフロックを制御するエア回路を独立化し高圧化。作動の確実性を高めた。

 さらに、アクスルの前後方向の動きを抑えるトルクロッドを強化するとともに、プロペラシャフトの伸縮スライド量を拡大。悪路走行時の耐久性を向上させている(2025年大会では、衝撃でトルクロッドが外れたことで逆入力がプロペラシャフトを介して伝わり、トランスファーを損傷するトラブルが発生していた)。

 エンジンについては、ターボチャージャーのウェイストゲート周辺の排気流路を見直すことで、最高出力を2025年大会の816PSから828PSへ向上。これにともない中低速域のトルク特性も改善させている。

 さらにサスペンションはセッティングを大幅に変更。悪路での路面追従性を高めるため、バネレートを思い切って下げ、苛酷化が進むダカールラリーのコースに最適化。さらなる競争力向上を図った。

今回見直したターボの排気管周り。最大出力が向上したがA09C型エンジンには手を加えていない
今回見直したターボの排気管周り。最大出力が向上したがA09C型エンジンには手を加えていない
サスペンションのセッティングを大きく見直した参戦車の足回り(リア側)。リーフスプリング+コイルスプリング2本の基本構成は変わらない
サスペンションのセッティングを大きく見直した参戦車の足回り(リア側)。リーフスプリング+コイルスプリング2本の基本構成は変わらない

 このサスペンション改良について、壮行会の場で菅原照仁は「ジェッダラリーで走ってみて、悪路でもしっかり踏んでいける非常にいいサスペンションとなっている」と確かな手応えを語っている。

 12月4日〜6日にかけてサウジアラビアで開催された、ダカールラリーの前哨戦「ジェッダラリー(正式名:ジェッダ・バハ)」に最終調整を兼ねて参戦した日野チームは、車両トラブルに見舞われながらも四輪部門(トラックは日野の1台のみ出走)で9位となり好発進。ダカールラリー2026での上位入賞にも期待が高まる。

【画像ギャラリー】日野チームスガワラのダカールラリー2026参戦体制(9枚)画像ギャラリー

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