フランスで高速道路の設計・建設・運営を行なっているヴァンシ・オートルートは、高速道路を走行中の大型車に無線で充電する世界初の技術の実現に向けて、同国の高速道路A10号線の一部区間に誘導コイルの設置を始めた。
現状では大型トラックやバスなど、受信コイルを備えた車両4台による小規模な実験だが、大量のバッテリーを搭載しなければ電動化が難しい大型トラックの脱炭素化に役立つかもしれない。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Vinci Autoroutes
世界初の「高速道路でのダイナミックIC」
フランスでオートルート(高速道路)の設計などを行なっているヴァンシ・オートルートは、高速道路を運転中の車両に無線充電するプロジェクトが新たな節目を迎えたと発表した。
同国の高速道路A10号線において、実際に高速道路の舗装の下に誘導コイルを埋め込む工事が1月下旬に開始され、プロトタイプ車両による最初の試験走行が間もなく始まる予定だ。
今回のプロジェクトのように誘導コイル(インダクション・コイル)による電磁誘導を利用して無線で充電する技術は”IC”(インダクティブ・チャージング=誘導充電)と呼ばれている。
車両用のICは地面に埋め込んだコイルに電気を流し、受信コイル(車両側)に誘導電流を発生させるという仕組みだ。無線充電は、駐車場などにIC充電器を設置し停車しているEVに充電するほか、走行中に充電する「ダイナミックIC」も理論上は可能で、車両の電動化に伴って世界中で開発が進められている。
特に長距離輸送用の大型トラックを電動化するには大量のバッテリーを搭載する必要があり、車両価格の高騰や積載量の減少につながるため、バッテリーへの依存を減らせるダイナミックICは大型車の電動化を推進する上で鍵となる技術の一つとされる。
ドイツ、イタリア、スウェーデン、イスラエルなどでダイナミックICの実証が進められているが、ヴァンシ・オートルートによると実際に供用中の高速道路の舗装の下に誘導コイルを設置するのは世界で初めてだといい、A10高速でのダイナミックIC実証プロジェクトは最終段階に入ったそうだ。
実験は同国エソンヌ県の1.5km区間で実施され、高速道路の「右車線」(通常は大型貨物車などが通る車線)を利用する。2025年4月まで設置工事が続き、その後、プロトタイプ車両がこの区間を走行できるようになる。実験に使用する4台の車両は、大型トラック、バス、バン、乗用車だ。
フランスでは商品の約9割をトラックが運んでおり、温室効果ガス排出量の3分の1を占めるという。ダイナミックICが実用化されれば大型トラックによる排出量削減のほか、リチウムやコバルトなどバッテリーに使われる資源の節約と、バッテリー製造に関連するCO2排出量を抑えることができる。
バッテリーの重さと(価格の)高さはトラックを電動化する際の障害となっており、無線充電技術がこれを解消するかもしれない。
【画像ギャラリー】走行中の充電を実現するべく高速道路に埋め込まれる誘導コイル(3枚)画像ギャラリー
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