ありそうでなかった「ソーラートラック」が欧州で型式認証!! これは日本にも導入して欲しい!

ありそうでなかった「ソーラートラック」が欧州で型式認証!! これは日本にも導入して欲しい!

 ルーフに太陽電池を搭載する「ソーラートラック」が欧州の型式認証を取得する見込みとなった。

 電気自動車(EV)の弱点とされるバッテリーによる重量増を、ソーラーパネルと徹底的な軽量化で補った小型トラックは意外と実用的で、コストも現実的。ありそうでなかったトラックが、新しい市場を開拓するかもしれない。

文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/Clean Motion AB

太陽光で走る「ソーラートラック」に高い潜在需要

ありそうでなかった「ソーラートラック」が欧州で型式認証!! これは日本にも導入して欲しい!
クリーンモーションの「EVIG」ソーラートラック

 車体に組み込んだ太陽電池(ソーラーパネル)で発電し走行する電気自動車(ソーラーカー)は、試作車や改造車では珍しくないが、メーカーが型式認証を取得した完成車はほとんどない。

 北欧スウェーデンの電動モビリティ企業であるクリーンモーションは2024年5月30日、同社が製造するソーラーパワーのトラック「EVIG」がEUの型式認証を取得し、これまでになかった新しいタイプの商用車がEU域内で登録・販売可能になる見込みであることを発表した(試験は全て通過しているが、当局の手続きに4週間ほどかかるという)。

 EVIGは都市部のラストマイル輸送に特化したソーラートラックで、小型商用車市場を根本から変革する新機軸となるかもしれない。

 というのも、欧州で商用の小型電気自動車(EV)の需要が拡大し続けているからだ。EUは2022年に「2030年までに環境中立でスマートな100都市を目指すEUミッション」(The European Mission on 100 Climate-Neutral and Smart Cities by 2030)を発表しており、域内27か国から選抜した主要100都市が、他の地域に先行して2030年までにネットゼロを目指している。

 その影響でゼロ・エミッションの小型商用車の需要が急拡大しており、2030年までに市場規模は現在の10倍、台数は130万台に達するそうだ。

 小型EV商用車の「特需」によりソーラートラックが一定の市場シェアを獲得すれば、商用車市場に新しいセグメントが誕生する可能性がある。

 EVIGの需要は高く、正式な型式認証の前から宅配業者や郵便会社から引き合いがあるといい、クリーンモーションは顧客の事業内容を精査して100台以上の注文が見込まれる顧客への納車を優先するという。

「EVIG」はどんなトラック?

ありそうでなかった「ソーラートラック」が欧州で型式認証!! これは日本にも導入して欲しい!
シャシーの軽量化のために素材やボルト・ナットまでこだわったという

 クリーンモーションのホームページなどによるとEVIGのスペックは次の通りだ。

・最高速度 : 60km/h(三輪モーターサイクル・モペッド登録)
・キャビン : 1人乗り
・全長/全幅/全高 : 3140mm/1400mm/1700mm
・荷室容量 : 2.5 立方メートル
・車両重量 : 250 kg
・車両総重量 : 700 kg
・最大積載量 : 350 kg
・ソーラーパネル出力 : 570W
・モーター出力 : 9.7 kW (最高速度45km/hの場合4kW)
・バッテリー容量 : 5kWh/10kWh
・航続距離 : 100/200km (5kWh/10kWhバッテリー)
・電費 : 0~4kWh/100km

 軽量化によるエネルギー効率の向上とソーラーパネルによる電費・ランニングコストの低減、モジュラー設計によるコスト削減、商用車に欠かせなくなっているコネクテッド機能の搭載などを特徴としている。

 350kgの最大積載量は日本の「軽トラ」と同じだ。積載量に対する車両重量は小型EVトラック市場で最も軽いといい、これにより優れたエネルギー効率を実現する。

 一般に、EVが重くなるのは電池の重量が嵩むためで、バッテリーEVは大量のバッテリーを運ぶためにエネルギーを消費している。EVIGではバッテリー容量を小さくする代わりにルーフにソーラーパネルを搭載し軽量化した。また軽量シャシーと、タイヤを減らして3輪としたことも軽量化に貢献している。

 ソーラーパネルの発電分だけで走行するなら、当然ながら電力の消費による費用はかからないが、エネルギー効率の指標として100km当たり4kWhという「電費」を謳っている。これは通常のEVの5分の1だという。

 晴れていればソーラーパネルの電力だけで小型商用車に求められる多くの仕事をこなせるといい、バッテリーは曇天時の予備やレンジエクステンダーのような役割を担っているようだ。

(同じスウェーデンのスカニアが、トレーラの屋根と側面にソーラーパネルを搭載し、ハイブリッドトラックのレンジエクステンダーとして用いる実証実験を行なったことがあるが、発想としては真逆である)

 充電がほとんどいらなくなることで、電気料金、充電インフラ、メンテナンスにかかるコストが大幅に下がり、1年間に2万kmを走行するという想定では、ランニングコストを通常のEVの12分の1まで減らせる。車両価格も従来の3分の1で15,600ユーロ(約266万円)から。

 内燃機関車に比べて部品点数が少ないとされるEVだが、EVIGではモジュラー設計と多目的コンポーネントにより部品数を更に減らし、低コスト化した。シャシーはプラスチックと亜鉛メッキ鋼でできているそうだ。

 クリーンモーションでは郵便・宅配便、インフラ管理とメンテナンス、パレット輸送(欧州では「ユーロパレット」が標準化されている)、温度管理車による宅食などの用途を想定している。

 日本では「2024年問題」などを背景に都市部のラストマイル輸送も危機的な状況にある。コストを抑えた実用的なソーラートラックは、我が国でも歓迎されるかもしれない。

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