「女性専用トラック」なんて要らない! MANがトラック開発に女性ドライバーの意見を反映するプロジェクト

「女性専用トラック」なんて要らない! MANがトラック開発に女性ドライバーの意見を反映するプロジェクト

 ドイツの大手トラックメーカー、MANがトラックの開発に女性ドライバーの声を取り入れる「WoMAN」ワークショップを開催している。ドイツでもトラック運送業は男性社会で、商品開発では伝統的に彼らのニーズが反映されてきたが、担い手不足が深刻化し、運転免許を持つ女性の比率も増加するなか、トラックの「ジェンダーギャップ」を埋めることが急務となっている。

 ワークショップで明らかになったのは、女性のニーズが反映されることは歓迎するが「女性専用トラック」は求めていないということ。日本では「ピンクの車体のトラックを作っては?」という意見が、女性ドライバーに一蹴されたこともあった。実際のニーズを車両開発に反映する取り組みは、我が国でも必要だ。

文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/MAN Truck & Bus

女性ドライバーの意見を反映する「WoMAN」イニシアチブ

「女性専用トラック」なんて要らない! MANがトラック開発に女性ドライバーの意見を反映するプロジェクト
女性ドライバーの意見をトラック開発に反映するための、MANの「WoMAN」ワークショップ

 ドイツの商用車メーカーでフォルクスワーゲングループに属するMANトラック&バスは、2022年から商品開発において「WoMAN」ワークショップを開催している。どうすればトラックメーカーが女性ドライバーのニーズに応えられるかを探ることを目的としたものだ。

 これは、この業界があまりにも長い間、片方に偏っていたためだ。MANが本拠とするドイツも日本と変わらず、トラック運送業は極端な男性社会だった。このため、トラックの開発においては男性のニーズやライフスタイルばかりが考慮されてきた。

 こうした「ジェンダーギャップ」を埋めることがイニシアチブの目的となっている。

 MANトラック&バスで商品開発を担当するフレデリック・ゾーム博士は次のように話している。

 「女性ドライバーは弊社の商品開発において、もう一つの重要な視点をもたらしてくれます。彼女たちの見識を活用することで、近い将来に私たちのトラックはより良く、より快適で、よりユーザーフレンドリーになるでしょう」。

 MANは新しい車両を開発するとき、女性であれ男性であれ、常にドライバーに焦点を当ててきた。「WoMAN」では女性ドライバーの日常を深く知ることでトラック業界における男女の違いを明確にし、より良く理解することを目指している。

 これによりトラックドライバーという職業は、女性にとってもっと魅力的な仕事となるだろう。

 そのために、心理学者のシグルーン・ヴァイゼ博士をトップとするMANの技術部・デザイン部のチームは、日ごろから職業としてトラックを運転している女性ドライバーをワークショップに招き、データの収集・分析を進めている。

 それによると、女性ドライバーは男性ドライバーより平均して7歳若く、身長は11センチ低く、体重は18kg軽いことがわかった。こうしたファクトから、ワークショップでは例えば適切な寝台の幅などを議論した。

 ほかに、車内に洗面台やトイレが必要かどうか、キャブ内でドライヤーやヘアアイロンを使う際に理想的なコンセントの数など、データに基づいて議論を将来のトラック開発に繋げることができる。

 そして、ワークショップを通じて早くにわかった女性ドライバーの一般認識がある。外観からも区別できるような「女性専用トラック」を求めている女性ドライバーは、ほとんどいないということだ。

女性のプロドライバーは安定して増加中

「女性専用トラック」なんて要らない! MANがトラック開発に女性ドライバーの意見を反映するプロジェクト
多くのデータを集めるため、今後はさらに詳しいアンケート調査も予定している

 ドイツでは女性ドライバーの数が増え続けている。

 直近の調査ではトラックを運転できる免許を保有している女性の比率は2%(ポイント)上昇した。このトレンドは政府(ドイツ連邦)当局の統計とも一致しており、2011年から2021にかけての10年間で、プロドライバーになるためのトレーニングを受けた女性の割合は、4%から11%に急増した。

(日本でも国土交通省の「トラガール」推進などで女性ドライバーの数が倍増している)

 ドイツに限らず、日本などほかの地域でもトラックドライバーの担い手不足が深刻な課題となっており、運送業の持続可能性において女性の活躍が欠かせないという、各国共通の事情もある。

 プロジェクトを率いるヴァイゼ博士は次のようにコメントした。

 「商用トラックの運転免許を持っている男性は(ドイツに)100万人いますが、女性は3万人です。免許保有者の数は現状では次元が違うとしか言えません。しかしながら、ますます多くの女性がトラックドライバーという職業を選択していることは明確です。

 また、特にソーシャルメディアでは女性ドライバーの声がかなりのウェイトを占めていることもわかりました」。

 MANは女性トラックドライバーの日常については、詳細なアンケートを通じてさらに詳しく調査することにしている。これは女性の要望を車両開発に取り入れ、改善を進める上でも役立つだろう。

 こうした取り組みについて、女性ドライバーのイネス・ベトヒャー氏は次のように話す。

 「私は、MANトラック&バスほど女性ドライバーのニーズに興味を持ってくれるトラックメーカーを他に知りません」。

 また、彼女の同僚のクリスティナ・シェイプ氏も次のように付け加えた。

 「もし私たちの意見がトラックの開発に反映され、数年以内に実際に目にすることができるなら素晴らしいことです」。

【画像ギャラリー】女性ドライバーの意見を聞くMANの「WoMAN」ワークショップ(3枚)画像ギャラリー

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