女だからって舐めるんじゃねー!! 女性ドライバーによる本音座談会 【前編】

女だからって舐めるんじゃねー!! 女性ドライバーによる本音座談会 【前編】

 トラック+ガールで「トラガール」というネーミングの元、国土交通省は女性トラックドライバーの活用を提言しています。深刻なトラックドライバー不足を解消するには、女性の活躍が不可欠……、そう考えるのは当然の帰結かもしれません。

 しかし営業用の緑ナンバーのトラック運転手では、女性の比率は5%未満。全産業平均(40%以上)を大きく下回っているのが現状です。

 ただ、女性ドライバーが増えないのには、増えない理由があるからで、その根深い理由を知ることから始めないと、女性ドライバーの活用という進言も、画に描いた餅に終わってしまいます。

 女性ドライバーの現状は女性ドライバーに聞くのが一番というわけで、本誌トラックマガジン『フルロード』の「素顔の自叙伝」にご登場いただいた3人の女性ドライバーの方に集まっていただき、座談会を開催しました。

 3人の話がすべての女性ドライバーを代弁するものではないけれど、どうか示唆に富む彼女たちの「本音」に耳を傾けてください。

文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
*2014年9月発売トラックマガジン「フルロード」第14号より

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自立するシングルマザーは強いのだ!

本誌: まず最初に失礼な質問をしちゃいますが、3人とも離婚を経験されて、シングルマザーとしてトラックに乗ってこられたわけですね。再婚された方もいますが、女手ひとつで長年お子さんを育ててこられたことに変わりはない。女性ドライバーにそういった境遇の人が多いのはなぜなんでしょう?

尾山: それは、「別にアンタがいなくても稼げるから」っていう気持ちがどこかにあるからじゃないですか。友達が近くにいるんですけど、旦那が浮気したんですよ。

 みんなからは「そんなの許せるのか!?」って言われたらしいんだけど、「許せなかったらどうなるの? 私が子供ふたり抱えて我慢してやっていけるの? だったら我慢するしかないじゃない」って言うんですよね。専業主婦の人は、「自分では稼げないから」と思って我慢する人が多い。

 私たちは稼ぐ手段があるから、「アンタがいなくてもやっていけるよ、我慢なんかしないよ」となっちゃう。それが、いいことなのか悪いことなのかわからないけれど……。

みゆ: 性格とかもあると思う。そういうふうにやって行ける人は気が強い。女性トラックドライバーはどんなに大人しい顔していたって、そのくらいの気持ちの強さがないと、男と対等な仕事はできないっていうことがある。

尾山: 「気が強い」っていうより「自立している」と言ってほしいな(笑)。稼ぐ手段は普通の専業主婦より多いから、我慢しなくて済む部分も多い。その後には試練が待っているけれど、その時は、別れるか別れないかだったら、「ええい、別れちゃえ!」みたいなところはある。

すべては子供のために

本誌: 実際に3人とも円満に別れたわけじゃなかったですよね。大変な思いをして離婚をして、その修羅場を脱したと思ったら、待っていたのは、小さなお子さんを抱えて、いかに日々の生活費を稼ぐかという現実だったわけですね。働いている最中も気がかりだったのはお子さんのことでしょうね。

尾山: でも、トラックに乗っていると、子供が小さい時のほうが却って楽だよね。小さいうちは隣に乗せていけるし、大きくなると、学校を休ませてまで乗せてやれないから。具合が悪くなったら一人で寝かせておくとかもあった……。

 小学校まではそれでもいいんだけど、中学・高校になると、逆に家にいないと駄目なんだよね。ほっとくと、もう学校から呼び出し呼び出しでね……。今はなんとか社会人になったけれど、中学・高校は悪さばっかり。

ゆで: うちは、3人の子供たちが中学・高校のときに離婚して、私がまた働き始めたのだけど、長女が「うちが面倒見るからいいよ」って言ってくれたので、気持ち的にもずいぶん救われた。でも、尾山ママんとこは一人っ子やもんな。学校から呼び出しがあったとき、仕事はどうしたん?

尾山: ダンプは途中で抜けられるような仕事じゃないから、休まなきゃいけなくなるわけさ。でも、会社が「いいよ」って言ったって、同僚の運転手の中には面白くない奴もいるわけだ。女だからっていうのがあって、「お前、休み過ぎだよな」とか「すぐ帰りたがるよな」とか……。

みゆ: そりゃ、帰りたいよね。

尾山: 帰りたいよ、あたりまえじゃん、そんなの。だけど、運転手の中にはいろいろ言う奴もいるわけだ。だから社会がどうこうとか、会社がどうこうっていう前に、運転手が敵になることもあるんだよね。

 でも、ここで喧嘩しちゃったらアウトなわけじゃん。だから、ヘラヘラうまくかわして、内心「ふざけんじゃねえよ!」と思いながら家に帰る……。

みゆ: 何のために働くかっていったら、生活のために働いているわけだから、自分の生活すべてを仕事には掛けられない。運転手だけど、クルマを下りたら、母親であり主婦なんです。

 トレーラに乗っているといっても、仕事をしている母親という意味では、スーパーでレジ打っているパートのおばさん達と何も変わらない。仕事を終えて帰ったら主婦。仕事も大事だけど、やるべきことがいっぱいあるから、早く帰りたい。

 運転中に今夜のご飯のことも考えながら、車庫に着いたらダッシュだよ。買い物して帰ってご飯つくんなきゃって。それプラス洗濯しなきゃいけないわ、化粧もしなきゃいけないわ(笑)。朝起きて仕事に行って、帰ったらまたご飯が待っている人達とは違うんだからね。無駄な時間は過ごしたくない……。

尾山: それはあるよね。ただそれを言っちゃうと、陰でグチグチ言うからさ。それは一切表には出さずやるしかないんだよね。そんなこと言おうもんなら何を言われるかわからない。

みゆ: 「それだったら、こんな仕事するな」って言われるだけだもんね。

尾山: 同じ給料を貰っているんだから、同じことをやって当たり前……、そりゃそうだけどさ。

みゆ: 頭が堅い人は、女なんか家庭に居るべきだって、未だに言うもんね、特に年配の人間が……。

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ナニワの海コンお姉さんを自称するゆでさん。今では 同じ海コン仲間の男性ドライバーと、時には丁々発止と渡り合い、時には和気あいあいと語り合う立派な海コンドライバーに……。そんなゆでさんにも人知れず嘆かざるを得ない女子の気苦労がありました。